【今回の記事】
大谷 黒田から魂受け取った「ほぼ全球種見せてくれた」

【記事の概要】
日本シリーズ第3戦 日本ハム4―3広島(2016年10月25日 札幌D)
   日本ハムの大谷翔平投手(22)が25日、第3戦に「3番・DH」で出場し、3―3で迎えた延長10回2死二塁から右前にサヨナラ打を放った。今季限りでの現役引退を表明し、初対決となった広島・黒田博樹投手(41)から2本の二塁打を放ち、最後は3時間51分の死闘に決着をつけた。日本ハムは本拠地の札幌ドームに移っての試合でシリーズ初勝利を挙げ、対戦成績を1勝2敗とした。
   今季限りでの引退を表明している黒田と初対決した。「ほぼ全球種を打席で見ることができた。間合いやボールの軌道が勉強になった」。初回1死一塁は初球のツーシームを叩き、左翼線二塁打。4回は内角のカットボールを強振し、右中間へ2打席連続の二塁打を放った。6回1死走者なしで迎えた3度目の対決。フォークで左飛に打ち取られ、黒田はここで両足の張りを訴え、マウンドを降りた。「それまで全くそういうそぶりを一切見せなかったのは凄い」。大谷にとって憧れの存在だ。かつて大リーグ移籍前のダルビッシュ(現レンジャーズ)が前田(現ドジャース)の打席で全球種を投げ、マウンドからエースの投球術を伝えたことは有名だ。大谷はカットボール、ツーシームは投げないが「今後必要な球種。(自分のイメージに)軌道があるのとないのでは違う」と感謝した日米通算203勝を誇るレジェンドの投球を目に焼き付けた
日本ハム・栗山監督(大谷と黒田の対戦について)素晴らしかった。感じるものがあった。その(負傷降板の)前から、どこかおかしい感じに見えた。でも、(大谷)翔平まで我慢したように見えた何かメッセージを送ってくれたと思う。もう一回、クロと対戦したい。

【感想】
   全国の子ども達には、黒田選手から見習ってほしいことが2つある。
   一つは、痛みに負けない黒田の耐性、自己コントロール力である。「この頃の子ども達は打たれ弱い」という評価をよく耳にする。少子化の流れに乗って、過保護な養育がかなり進んで来たためではないかと感じている。しかし、黒田選手と対戦していた大谷にもそのことを悟られないほどの自己コントロール力や我慢する態度は正に今の子ども達のお手本である。
   二つ目は、大リーグからの多額契約のオファーを断って、自分を育ててくれた古巣の広島に戻ってきてくれた「情」である。「脱愛着(人と人との愛の絆が切れている状態)化」が進む昨今の日本社会の中にあって、この「広島愛」はファンの感動を呼んだ。そして、そんな黒田選手に惹かれたくさんの観客が球場に足を運ぶようになった。黒田の「広島愛」がファンに乗り移ったかのようなファンとファンとが繋がりあった熱い声援。広島の真の強さはここにあるのではないかと感じさせられるほどである。いや、広島ファンだけに留まらず、今の日本社会に「人と人との心の繋がり」をその言動を通して明確に示してくれた。

   最後に、一野球ファンとして、次世代を担う大谷に自分の全球を見せ、魂を伝えてくれた黒田選手に心から感謝したい栗山監督が言うように、昨日私もゲームを見ていて、もしかしたら、大谷まで我慢してくれたのかも知れないと思っていた。大谷は「それまで全くそういうそぶりを一切見せなかったのは凄い」と述べている。きっと、球種以上に、打者に向かう強い姿勢、まさに黒田選手の魂を感じたのだろうと思う。過去にダルビッシュが前田に伝えてくれたように、前田が大谷に次世代を託した、心が熱くなる対戦だった。
   黒田選手、本当にありがとう!あなたが伝えてくれた魂は、間違いなく次世代を担う選手達の心に響き、これからの日本プロ野球界の、そして日本社会成長の糧となるでしょう。今まで本当にお疲れ様でした。