【今回の記事】
「LINE外し」はいじめ? 生徒の認識低く、学校現場も苦慮

【記事の概要】
   国のいじめ防止対策協議会は、会員制交流サイト(SNS)上でのいじめ対策の改善も提言で求めた。インターネット上での誹謗中傷は深刻だが、生徒自身がいじめ行為と認識していないケースも多く、学校現場も指導に苦慮している
   無料通信アプリLINE(ライン)での仲間外しはいじめか-。9月上旬、東京都足立区の都立江北高校。情報科の稲垣俊介主任教諭は3年生を対象に、黒板に映し出された巨大なLINE画面上で、架空の女子バスケットボール部の部員2人が別の部員1人を外して言葉を交わす状況をみせた。「これって、いじめかな」。稲垣主任教諭の問いに生徒たちは各班で議論。それぞれの班の代表が意見を集約し発表したが、約半数が「いじめではない」との結論だった。理由を問われた男子生徒は「外されている生徒が気づいていないのだから、いじめには当たらない」と答えた。いじめ防止対策推進法では、被害者側が「心身の苦痛を感じている」ことがいじめの定義とされているが、稲垣主任教諭は「いじめのスタートになる」と再考を促した。授業後に寄せられた生徒の感想では「LINE外し」をいじめと認識する生徒もいたという。LINE外しの対象者が排除されていることを知る可能性も否定できない
   東京都教育委員会が昨年実施した公立の小中高生らを対象にしたアンケートで、ネット上で「仲間外れにされた」と答えたのは高校生が12%、中学生が6%、小学生が3%だった。
   文部科学省幹部は「当人がLINE外しの対象となっているのを知らなければ、定義上は必ずしもいじめとはいえないが、一方でいじめの温床になる」と話し、情報モラル教育の必要性を強調した。

【感想】
   まず、「学校現場が『LINE(ライン)での仲間外しはいじめか』というテーマに関して、生徒への指導に苦慮している」ということが腑に落ちない。
   記事で紹介されている授業での話し合いでは、「約半数が『いじめではない』との結論だった」とのことであるが、いじめの定義からすると間違いなく正解である。それに対して、授業を行った主任教諭は「いじめのスタートになる」と再考を促したとのことであるが、これでは、この話し合いは、「知られなければ仲間外しをしてもいい」ということを助長しかねないものになってしまう。中には、「LINE外し」をいじめと認識する生徒もいたとのことだが、その事が分かったのも授業後のことであり、授業の中では扱われなかったのである。
   この授業での正解は、「いじめの定義からすればいじめに当たるとは言えないが、LINEから外されている当人が、外されていることをそのうちに知ることになることは明らかなため、いじめと同等の許されない行為」である。子ども達に「再考を促す」という曖昧な対応ではなく、「当人が仲間外しに絶対気付かないということがあり得るか?」と生徒に問い正し、この行為は許されるものではないということを納得させるように、大人が毅然とした態度で臨むべきである。
   文部科学省幹部は「当人がLINE外しの対象となっているのを知らなければ、定義上は必ずしもいじめとはいえないが、一方でいじめの温床になる」と述べている。しかし、先にも述べたように、既にLINEの仲間として登録されてあり、当人がLINE外しの対象となっていることを知るに至るまでには時間の問題であるのだから、「当人がLINE外しの対象となっていることを知らなければ」という仮定は、むしろ「知られなければいい」という誤った認識を子ども達に与えてしまいかねず逆効果であり、議論のテーブルに乗せるべき問題ではないと考える。

   いじめ行為は何があっても許されない行為であることをはっきりと子ども達に伝えていく、それこそが我々大人に課せられた責務なのである。