(この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容や趣旨はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)


   愛着のもう一つの特徴は、愛着の形成はいつでもスムーズに出来るというものではないということです。実は、愛着形成がしやすい時期があるのだそうです。最近の研究では、子どもが母親をはっきりと見分け、更に母親という“安全基地”を頼り始めて人見知りも始まる生後6か月頃から一歳半くらいまでということが分かっているそうです。この時期(「臨界期」)を過ぎると、愛着形成がスムーズにいかなくなります。岡田氏は次のように言います。「子どもが将来、母という病に苦しまない(愛着障害を引きずらない)ためにも、少なくともその時期だけでも、子どもに没頭して関わることが、とても大切なのだ。」(岡田2014)もちろん、その時期だけクリアすれば、あとは全く心配ない、という訳ではありませんが、「臨界期」の時期に、母親が近くにいなかったり、養育者が交代したりすると、愛着が傷を受けやすいのです。ちなみに、大ベストセラーとなった「子どもの心のコーチング」(PHP文庫)の著者である菅原裕子さんも、娘さんが一歳半になるまで、一緒にいる時は子どもの欲求に合わせていつでも何度でも母乳を与え、夜は必ず添い寝をし、子どもが眠りに落ちるまでのふれあいを楽しんだそうです。(菅原2007)