【今回の記事】
銅だ!福原愛号泣…石川、伊藤と卓球団体2大会連続

福原の涙、止まらず…観客席もらい泣き

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        試合後、チームの勝利に号泣する福原

   卓球女子団体、日本チームはシンガポールチームを下し二大会連続のメダルを手にした。

   私は以前のブログで、「福原は『不安型』愛着スタイルの持ち主ではないか」と述べていた。そのため、この3位決定戦においても、知らず知らずのうちに福原の表情や言動に注目していた。
   第一試合は福原が出場したが、フルゲームの末惜しくも負けた。第二試合はエース石川が貫禄を見せて勝利を収めた。
   第3試合は、ダブルスで、福原と伊藤が出場した。ゲームは当初一進一退で進んだが、伊藤のミスが目立ち始めた。しかしその度に福原が、「大丈夫、大丈夫」というように、年が一回り下の伊藤を温かく励ましていた。勝利を収めた瞬間は、伊藤はその若さ故か、喜びのあまり歩き回りながら観客に喜びを訴えていたが、福原は勝利が決まった瞬間、すぐに伊藤に向かって喜びを共にしようとしていた。チーム意識が高いところはさすがお姉さんだなと感心した。
   ここまで日本チームの2ー1のリード。あと一試合とれば日本チームの銅メダルが決定する。次の試合はシングルス、日本チームは15歳の伊藤が出場した。相手は、シンガポールのエース。伊藤がポイントを取る度に、会場からたくさんの拍手が起こったが、会場の人間の中でいつも最後まで拍手を贈っていたのは他でもない福原であった。ゲームとゲームの間には、心を込めて一生懸命、伊藤にアドバイスを送っていた。その姿からは伊藤に対する温かな愛情さえ感じた。
   そして、伊藤の勝利が決定した瞬間、福原は溢れる涙がこぼれないよう両手で顔を覆いながら号泣した。張りつめていた緊張の糸が緩んだのか、ただただ泣いていた。

   福原は試合後のインタビューに次のように答えている。
「本当に良かった。足を引っ張ってばかりで、みんなに感謝しています。一昨日(準決勝)も負けてしまって、何度も思い出して後悔していた。絶対に死ぬ気で勝ちに行きました。(伊藤の第4ゲームは)日本のみなさんと同じで祈るしかできなかったので、全神経を美誠に注いでいました。良い試合もあったけど、悔しい試合もいっぱいあった。本当に苦しいオリンピックでした。」
   福原は「自分のせいで準決勝で負けてしまった」「自分が負けたせいでメダルを逃したらどうしよう」と不安だったのだ。そしてそれまでも苦しみの連続だったのである。「不安型」愛着スタイルを持っている福原ならではの苦しみだったのだろう。
   もしかしたら、石川との“わだかまり”もその中に含まれていたのかもしれない。しかし試合を、福原と石川は2人でがっしりと抱き合っていた。そして号泣する福原生石川が優しくなだめる姿も印象的だった。2人の間に「雨」は降ったかもしれないが、そのおかげで「地」は完全に固まったのである。

   福原は泣いたが、そこで泣いていたのはかつての「泣き虫愛ちゃん」ではなかった。自分が負けてチームに迷惑をかけた分、年が一回りも下の伊藤に一生懸命に深い愛情を注ぎ、チームワークが崩れないよう必死に努力し、その結果としてのチームの勝利を喜び泣いている姿は、まるで「チームという家族の母親」だった。その“母”の涙はあまりにも美しかった。だからこそ、観客の誰もがもらい泣きをしたのである。

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