【今回の記事】
錦織圭「初4強」涙の意味を日本テニス協会・八田広報委員長が解説

   錦織対モンフィス(仏)の準々決勝。見ていて、胸が締め付けられるようなものすごい試合だった。まさに熱戦だった。黒人特有の高い身体能力の前に錦織は完全に追い詰められていた。もう終わりだと思った。しかしそこから脅威の粘りを見せ、まさかの大逆転の勝利を収めた。体操個人総合の内村選手の奇跡の大逆転の試合と同じ感覚を味わった。

   第1セットは錦織が先取。第2セットは200km/h以上のサーブを誇るモンフィスが取った。残る第3セットを取った方が勝利となる。
   第3セットはどちらも自分のサービスゲームをキープし、一歩も譲らない戦いになった。そしてついに試合はタイブレーク(延長戦みたいなもの)へ。タイブレークは、先に7ポイント先取した方の勝利となり、サーブも一球ごとに交代となる。
   このタイブレークに入り、モンフィスは、驚異的な身体能力を発揮し4ポイントを連取し、錦織の0ー4となった。この時私は正直「負けた」と思った。しかしこの後、錦織もポイントを取り、なんとか3ー5まで差を縮めた。しかしこの後にモンフィスが放ったのは、錦織がラケットに当てることもこともできないほどの物凄いスピードのサービスエースだった。このエースによってスコアは3ー6となりモンフィスはマッチポイントを握った。モンフィスの圧倒的なエースを見せつけられた錦織は、相手にはあと1ポイントさえも許すことができないうえに、自分はあと4本ポイントも取らなければ負けなのだ。再度、錦織は崖っぷちに立たされた。
   しかし、ここから錦織の怒とうの反撃が始まった。時に錦織の放つボールは、モンフィスのラケットを弾き飛ばし、彼をコートに転がしてしまうほど、危機迫るものであった。そして最後は錦織の5ポイント連取で決着はついた。
   試合後、錦織は感極まって泣いた。それほど壮絶な試合だったのである。

   普通の人間ならば、タイブレークで0ー4となった時点で、緊張の糸が切れてしまうところである。しかし錦織はあきらめなかった。強靭な精神力と高い技術力で奇跡的な逆転劇を演じた。
   もしかしたら通常のツアー戦であったならば、負けていたかもしれない。日本テニス協会・八田修孝広報委員長によれば、錦織には「日の丸」を背負い、国の威信をかけて戦うということに特別の思いがあったのだと言う。記事によると、ゲーム後に彼が見せた涙は、その特別な思いの表れでもあったのではないかと述べられている。今日の奇跡の大逆転は、普段は味わうことのないオリンピックと言う特別な緊張感が彼を後押しした結果と言えるかもしれない。

   体操の内村選手やテニスの錦織選手の強靭な精神力を持った選手たちと同じ日本人であることを誇りに思う。