【今回の記事】
発達障害(ADHD)だった最強のスイマー、マイケル・フェルプスと、彼を見守った母親

   今や水泳界のスーパースターとなり、オリンピック競泳史上初の4連覇を達成したマイケルフェルプス。しかし、実はフェルプスは9歳のときにAD HD(注意欠陥多動性障害)と診断されていた。先天性の発達障害であるから、もちろん今も彼はAD HDの人間なのである。

   記事によると、幼稚園のマイケルは、じっと座っていられない、静かにできない、集中できない子どもだったという。ある日、一人の教師が母親にこう言ったという。「あなたの息子はなにかに集中することができるようになることはないでしょう。」
   しかしそれでも、フェルプスの母親は、息子の可能性を信じ「マイケルは、いつもじっとしていられなくて、疑問に思ったことの、答えを求めていた、とてもエネルギッシュな少年でした。」と、幼少期のマイケルを振り返っている。
   
   発達障害の子供にとって最も警戒しなければならないのは、他者から悪口を言われたり意地悪をされたりすることによって、友達に危害を加えたり不登校になったりする二次障害に陥ることである。さらに、親自身が子供の発達障害を「困った子だ」と負の認識で捉えていると、その症状は決定的に悪化することになる。
   記事の内容からすると、おそらくフェルプスは、AD HDの中でも、多動的症状が顕著な子供であったと思われる。教師は、この多動的症状を「何かに集中できるようにはならない」と否定的に捉えたが、母親は「エネルギッシュ」と肯定的に評価した。
   この事はとても重要なことである。どんな障害でも、その障害特有の特徴があり、周囲の人間がその特徴をマイナスと捉えるかプラスと捉えるかによって子供の成長に大きく影響を及ぼす。特に、親がどちらの意識を持つかという事は、子供に決定的な影響を与える。それほど、子供にとって親とは世の中でナンバーワン、オンリーワンの人なのである。学校の教師が自分のことをどのように言おうとも、自分の親が自分のことを信じてくれている、それだけで子供にとっては百の味方なのである。
   フェルプスの母親が我が子の特徴を肯定的に捉え、信じ、応援したことで、フェルプスの気持ちは安定し、“多動エネルギー”は水泳に注がれ、見事にその才能が開花した。むしろ、多動であったことがフェルプスの水泳エネルギーを生み出したとも言える。それが障害という“個性”のもつ長所なのである。
   いずれにせよ、発達障害の人にとっては、この気持ちの安定が何より大切なのである。それが保証された時、フェルプスのように自分の特長を伸ばしていけるのだ。まさに、母親が信じ花開かせたフェルプスの可能性であった。