【今回の記事】
内村2連覇 会見で垣間見えた頂点を争った2人の友情 ベルニャエフ「無駄な質問だ!」

   内村が、個人総合の金メダルを取った後、通例のメダリスト会見が行われた。そこで内村に対し、海外メディアからこんな質問が飛んだ。
あなたは審判に好かれているんじゃないですか?
フェアプレーで戦っているアスリートに対して、何という失礼な質問だろう。もし私が内村の立場だったならば、「そんな失礼な質問には答える必要は無い!」と言い捨てたかもしれない。しかし、その質問に対し、内村は冷静に答えた。
「まったくそんなことは思ってない。みなさん公平にジャッジをしてもらっている」
決して怒ることなく、自分の気持ちをコントロールして冷静に答えた内村選手。この自己コントロール能力こそが、あの修羅場のような状況の中でも淡々と自分らしい演技を貫き通せた要因だろう。
   しかし、私の代わりにその質問に対して怒りをぶつけてくれた人間がいた。誰であろうその人こそ、内側に僅差で逆転されたベルニャエフ選手だった。彼は記者に対してこう言い放った。
「審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ」
   さらに、やはり惜しくも銅メダルに終わったウィットロック選手も続いた。
「(内村は)大変素晴らしい。彼は皆のお手本です。今日の最後の鉄棒は言葉がない。クレイジーとしかいえない。」
すると、さらにベルニャエフ選手が内村のことを賞賛した。
「航平さんを一生懸命追っているが簡単じゃない。この伝説の人間と一緒に競い合えていることが嬉しい。世界で1番クールな人間だよ。」
   さらに、ベルニャエフは米Yahoo Sportsの取材でも、こう語っている。

「僕は内村を尊敬している。彼は体操の王様なんだ。マイケル・フェルプスやウサイン・ボルトのようにね」


   ベルニャエフ選手は、得点が発表された瞬間、明らかに不満そうな表情を示した。しかし彼は、「競技者にとって審判の判定は絶対である」という信念を持っていた。そして何より、内村への尊敬の念を持っていたのである。「この人に負けたのであれば仕方がない。」そのような潔さをベルニャエフに抱かせる内村は、まさに体操界のレジェンドであり、“王様”なのである。
「あなたは審判に好かれているんじゃないですか?」と言った海外メディアの質問は、「体操の王様」に対しては少々失礼だったようである。