【今回の記事】
天皇陛下「お気持ち」表明 「生前退位」を強く示唆

天皇陛下ビデオメッセージ全文

   天皇陛下のお気持ちを示されたお言葉は、「象徴」とはどうあるべきかということを心から誠実に考えられている陛下のお人柄が感じられる言葉であった。
   陛下御自身、「これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなる」と述べられているように、陛下はこれまで身を削る思いで社会的弱者のために心を痛め、直接慰問に出向かれてきた。東日本大震災の慰問の際には、岩手県にもいらして頂き、お一人お一人に“しゃがんでは立ち、しゃがんでは立ち”を繰り返しお言葉をかけていただいた。あれだけでもかなり体力の要ることである。即位された当初は、雲仙普賢岳噴火に際しての慰問に対して、「天皇の品格が下がる」という批判の声も内部からあったそうだが、困っている人や苦しんでいる人がいれば、その人のところに足を運び見舞う、その姿こそが陛下の考える「象徴」としての姿なのである。ご高齢の陛下であるが、体にムチを打ちながらでも、“全身全霊”を持って「象徴」の務めに当たってこられたのである。
   しかし、国民の「象徴」とは、他人の幸せのために自分の健康を損ねてまで尽くすことだけでは無いはずである。自身の健康を自身の力により保持する、そういう姿こそが国民の手本たる「象徴」なはずである。つまり、天皇陛下としての“役割”を果たせるか否かよりも、陛下ご自身の“健康と命”を守る姿こそが「象徴」として何よりも大切であるということである。

   これまでも、「生前退位」が当たり前に行われた時代もあれば、そうでない時代もあったそうである。しかし、いつの世でも変わらないもの、それこそが一人の人間の健康と命の重さなのである。