オリンピックが始まった。 
   早速期待されるのは体操競技である。特にその中でも中心的な役割を果たす内村航平選手には期待が集まっている。

   先日NHKの特別番組で、内村選手の特集をしていた。
   その中で、内村はある対策を練っていた。それは1年も前からオリンピックで演じる演目の内容を決めていたというのである。さらに内村は、その決めた演目で本番通りの開始時刻に、本番通りの種目間の間合い時間通りに練習する「一本通し」という練習を何度も繰り返してきた。実に納得のいく練習方法である。
   それより何より、内村には並外れた着地の安定感があった。これも何年か前のNHKの特集番組で見たことであるが、他の選手は踏み切った時点で、「このくらいで踏み切れば着地がうまくいくだろう」という見込みの感覚で演技をしている。しかし内村は、踏み切った後に回転している最中に周りの状況を目で見ながら微調整を加えた上で着地をしていたのである。

   話は変わるが、自閉症スペクトラム(ASD)の人たちに安心感を抱かせるための「環境の構造化」という4つの情報の伝え方がある。
①内容をはっきりとする
②やり方をいつもと同じようにする 
③スモールステップで提示する
④視覚化をする

   これらの中で、内村選手に当てはまるものがいくつかある。1つは①の「内容をはっきりする」ということである。内村選手は1年も前からオリンピックでの演目内容を決めていた。その方が安心するからだ。次に②の「やり方をいつもと同じようにする」ということである。これは「一本通し」という練習に代表されるように、いつも本番と同じ練習をすることで安心が得られるのである。そして④の「視覚化をする」である。ASDの人たちの特性として「視覚優位」という特性がある。内村選手は、極めてその能力が高い。何しろ高速で回転している最中に周りの状況見て微調整をしていたのである。 
   
   ASDの人間が、リオデジャネイロオリンピックでも、「環境の構造化」という安心できる練習方法で、その素晴らしい個性を発揮し堂々と活躍してくれるだろう。