【今回の記事】
「人として大切なこと」

   特別支援学校の子供たちを馬鹿にしたこの男性は、神奈川県相模原市の障害者施設殺傷事件を起こした植松容疑者のように社会から孤立しているかわいそうな人である。自分より立場が弱そう子供たちを馬鹿にして空虚な自分の心を満たそうとしているのである。

   実は、私が通常学級を担任していた頃、学校の近くにある障害者施設があった。そこで、その障害者施設の利用者の方々と子供たちとの交流会を企画することになった。私は子供たちに「〇〇施設の人たちを知っていますか?」と聞いた。するとある子供が、「あ〜、あのばか者達かぁ」とつぶやいた。私はその時は「人のことを『バカ』と呼んではいけませんよ」と穏やかに注意をした。大人であれば、人権問題に関わる発言であるが、障害者のことを何も知らない子供たちにとっては、純粋にそのように感じていたのであろう。知らない子供たちを怒る事はできないし、その障害者に対する認識を交流会を通して変えていきたいと言う目論見があった。
   施設の方を学校に招待しての交流会は大成功に終わった。交流会が終わり帰ろうとする施設の方々を子供たちが見送った。するとなんと言う偶然であろうか、あの「あ〜、あのばか者達かぁ」とつぶやいていた子供が、「あの人たちみんないい人たちだね」と笑顔で話したのである。
   つまり、障害者の方々の良さと言うのは実際に接してみないと分からないということである。そのためにインクルーシブ教育(障害の有無によらず、誰もが地域の学校で学べる教育)が強く叫ばれているのだろう。

    私事で恐縮であるが、私が自閉症スペクトラムは社会に自慢すべきすばらしい個性なのだと悟ったのは、川崎医科大学精神科学教室主任教授の青木省三氏の著書「ぼくらの中の発達障害」(ちくまプリマー新書2012)https://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4480688927/ref=mp_s_a_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&qid=1470267891&sr=8-1&pi=AC_SX236_SY340_QL65&keywords=%E5%83%95%E3%82%89%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3を読んだ時からだった。この本は、自閉症スペクトラムの人達に生きる勇気を与える名著である。ぜひ機会があったら読んでいただきたい。