前回は、自閉症スペクトラム(ASD)の素晴らしい個性について述べた。
   今回はADHD(注意欠陥多動性障害)の個性について述べてみたい。

   私は、昨日ひょんなことからADHDの男児I君(小学1年生)と接する機会を持った。会う前は、多動性、衝動性が顕著な子どもさんだと聞いていた。
   その子と初めて対面した時、ビックリした事があった。初めて会う私に対して、自分の名前、学年、生年月日をスラスラと自己紹介したのだ。小学1年生がである。
   次に宿題をやっている様子を横から見守っていた。すると算数の「5ー◯」のプリント問題を始めた。私が1問ごとに「当たり!」「OK」とか言っていたら、I君はドンドン調子を上げて解き進めていった。すると、裏の国語が終わるまで一度も休むことなく終えてしまった。素晴らしい集中力だった。
   それが終わったらおやつタイム。その子は、お茶の入ったコップを「どうぞ」と礼儀正しく私に差し出してくれた。お菓子も自分のおせんべいを半分にして私にくれた。なんて優しい子どもだろうと感心してしまった。
   その後は、公園に行って水鉄砲遊びをした。公園には他にも小さい子どもたちがお母さんたちと遊びに来ていた。間違って誰かに水がかからないか心配だったが、そんな心配は無用だった。一番濡れたのは、I君との“銃撃戦”で敗れたこの私だった(笑)。
   水鉄砲の水がなくなると、I君は公園の水飲み場に行って水の補給をする。そこには二人の女子高生(もちろん初対面)がいて沢山の水風船に水を入れていた。私はI君に「お姉さん達に『すみません、水を入れてもいいですか?』と言って水を入れておいで」と言って一人で水飲み場にやった。するとI君は、教えられた通りに丁寧にお姉さん達に聞いて水を補給していた。聞かれたお姉さん達もニコニコして「どうぞ」と優しく譲ってくれた。ちなみに、トイレの場所が分からなかった時もやはり私が聞き方を教えたら「すみません、トイレはどこですか?」と自分でお姉さん達に聞くことができた。繰り返すが小学1年生がである。素晴らしいコミュニケーション能力と勇気を持った1年生である。
   また、I君と銃撃戦ごっこをしていると、なぜか私の鉄砲だけ水が早く無くなるのだ。不思議に思った私は、I君が水を補給する様子を観察した。すると、私がやっている普通の水の入れ方ではなく、もっとたくさん入るオリジナルの方法を教え出していたのである。頭の回転のいい子だなぁとまたもや感心させられた。
   水鉄砲遊びの途中で、I君が急に「あれ?はっけん!」と声を上げた。「どうしたの?」と聞くと、「土に水をかけたらコーヒー色になった!」と教えてくれた。実に知的好奇心が旺盛である。「このコーヒー水を家に持って帰って実験しよう!」と言い出した。この知的探求力にも感心してしまった。

   実は、I君と会う前に私はADHDのよさを調べていたら、次のサイトを発見していた。
http://susumu-akashi.com/2016/04/adhd-advantages/#7(「ADHDの人にしかない素敵な7つの長所―個性を才能に変えるには?」)

   私はI君と接して、このサイトの記事に書かれていることについて、いくつもI君から実際に見せてもらった。I君は私の立派な“先生”である。

   前回のブログでも述べたが、感覚過敏の自閉症スペクトラム(ASD)の子が安心できるようにするための周囲の人のあたたかい微笑みと優しい話しかけ方が大切である、と述べた。しかし、上記のサイト記事の7つ目に「困難や失敗体験を繰り返したせいで、感受性が強くなり、人の言葉や感情に敏感になる」書いていた通り、ADHDの子も、やはり同じように“感覚が過敏”なのである。だからこそ、子どもが安心できる周囲の人の“あたたかい微笑み”と“優しい話しかけ方”が大切である。(感覚過敏の子は、“厳しい表情”と“厳しい話し方”に反発するのである。)その環境さえ揃えば、ADHDの子も持っている個性を存分に発揮できるのである