http://www.dailyshincho.jp/article/2015/12251510/?all=1

【記事の概要】
   心理学博士の榎本博明氏は、大学で学生を相手にしていて、最近特に自分勝手な自己主張をする学生が増えたと感じている。たとえばどんな学生か。

「授業中、あまりに態度が悪い学生がいるので『静かにするように』と注意したが、『うるさいなあ』といった感じで開き直り、だらけた態度のままなので、説教口調で注意した。それに対して反抗的な態度を取った学生は、休み時間になると教務課に駆け込み、『先生からきついことを言われて傷ついた、あんな先生の授業には出たくないから先生を替えてほしい』と訴え出た」。また、「授業中に寝ている学生を起こしても、またすぐに寝る。そこで、教壇を下りて注意しに行くと、こう言う。僕は夜中じゅうバイトしてて、ほとんど寝てないんです。寝させてくださいここは授業中の教室だし、寝たいのなら教室から出て行って寝なさいと言うと、『友だちと一緒にいたいんです』 と言い張り、さらには『授業料を払ってるんだから、ここにいる権利があります。他の先生はだれも注意なんかしません』と主張し、あくまでも食い下がる。こちらも譲歩するわけにはいかないので、何とか説得して出て行ってもらった」さらに、「毎回40分以上遅刻して教室に入ってくる学生に注意すると、これでも頑張って起きて10時に家を出てきてるんです。家から1時間半もかかるんですよ。家が遠いんですと、当然その言い分が通るだろうといった調子で自分の窮状をアピールする」榎本氏は言う。義務を果たさなくても叱られない。いつも親がほめるべき点を探してほめてくれ、良い気分にしてもらえる。そんな子育ての結果、どのような人間がつくられていくのかということについて、ちょっと真剣に考えてみる必要があるだろう」

【感想】     この記事にあるような大学生は、全国的な傾向にあるのだろうか?発達心理学者の繁多進氏は、「愛着」が最も影響を及ぼすのは、“社会性”、言葉を変えれば“人間関係能力”であると指摘している。この人間関係能力のある人ならば、大学の授業中に自分に非があって先生から注意された時、“先生と生徒”という社会的な関係を認識し、「すみません」と謝って行動を改めるだろう。とすれば、上記の記事に紹介された彼等もやはり愛着不全の状態にあると言えるのかもしれない。当然といえば当然である。精神科医の岡田氏が指摘する通り、戦後の価値観の多様化と核家族化から生まれた“自己愛”(自分のことを第一に考える考え方)の人間が、大人になって育てた子ども達が、自己愛の象徴とも言える非行や校内暴力を既に始めていたのである。“自己愛の人間が自己愛の子どもを作る”そんな負の連鎖が今もなお続いているのであるから。

   問題の根源は、乳児期に適切な養育をしなかった家庭にある。そこで形作られた不安定な愛着が、わがままな子どもをつくり、(榎本氏の言葉を借りれば)「義務を果たさなくても叱られない」、つまり、義務を果たさない自己愛的な姿に問題を感じない親からそういう育て方をされた子どもは、益々、“自己愛化”していくのも当然といえば当然なのかも知れない。親が蒔いた種は、「第二の遺伝子」となって、成熟しきれない今の若者たちを育てているのだ。