前回、母親の役割は“子どもを守る安全基地”、父親の役割は“母子分離の補助”、“遊び”、“躾”であると紹介しました。(もちろん、これも専門家の受け売りです。)
   しかし、世の中には、“子育ては母親の仕事”という考え方が未だに多く見られるような気がします。
   “母親による子どもの教育”が始まったのは、戦後の高度経済成長により、都市部に移り住む家族が増え、夫はもっぱら働くために仕事に出たために母親が子どもの教育を見ることになったのが始まりです。経済成長のためにしかたがなかったのです。
   しかし今は、日本は立派な先進国になりました。時代は変わり、母親と父親がそれぞれの役割を果たせる時がやってきたのです。
   繰り返しになりますが、本能的に、母親の役割は「子どもの受容」であり、「躾」は父親の役割なのです。母親に子どもの躾を任せると、どうしても子どもを受容、つまり甘やかしてしまうのです。事実、母親の一人親家庭で育った子どもの非行率は、父親のそれに比べて何倍も高いのです。父親は、その点を自覚するとともに、子どもが母親の指導下にたる時間帯のことを考えて、間違っても、子どもの前で母親の悪口を言うようなことがあってはなりません子どもが母親の言うことを聞かなくなり、結果的に子育てに苦労することになります。

   昔は「子は鎹(かすがい)」と言って、子どものために離婚を我慢する夫婦が多かったのですが、今は、自己愛(自分のことを第一に考える考え方)の人間が増え、離婚に踏み切る家庭が急増しています。しかしそれは、精神科医の岡田氏の言葉を借りれば、「脱愛着」の時代に突入し始めている状態なのです。できれば、愛着が子どもの一生の人格形成に影響することを考え、今の「二人親家庭」を維持し、互いにそれぞれにしかできない役割を果たしてもらいたいものです。