私はおととしまで会社員をしていました。


その仕事では、お金に困ったお客様の相談に乗ることがありました。


ある25歳の男性のお客様は、仕事が続かず、お金に困ってうちに相談に来ました。


そのお客様の半生が波瀾万丈だったんです。


書ける範囲で書くと、


生まれてこの方父親の顔を知らない。会ったこともない。


施設にいた時期もあり、母子家庭でお金もなかった。


そのお客様は、全身タトゥーだらけでした。

目立つ所にタトゥーがあったので、人目を引ける=気にかけてもらえるという無意識の欲求があったのかもしれません。


いざ働いてもトラブル続きで長続きせず、女の子にも振られていた。


世間一般的に見れば、彼はダメな奴と言われるでしょう。


でも、それって彼だけの責任なんでしょうか?


・父親に一度も会ったことがない(名前しか知らない)

・母親は非正規でお金がない。

・施設育ち


これらが彼の人格形成にとって、多大な影響を及ぼしたのは言うまでもありません。


そんな愛情不足かつ教育不足の彼が社会に出たとたん、すべて自己責任と見なされる。


お金がないのも、結婚できないのも自分のせいと言われてしまう。


そんなの虚しくないですか?


「親のせいにすんな」「自分次第なんだよ」と言ったところで、人格形成期の刷り込みは簡単には覆せない。


だってスマホでいう初期設定と同じだから。


でもスマホみたいに簡単に心の設定(刷り込み)は変わらない。(簡単に変わるよという人は商売で言ってるので、結果が出なけりゃその人のせいだからハイ終わり)

そんなに簡単に人は変わらないし、変わるには痛みを伴うし、最後の最後は自分で壁を越えるしかない。


人生の初期がハードモードだった人は、これまでの自分のパターンをぶっ壊さないと、ずっと苦しい状況が続くのだ。


そのお客様と接していて「この子にも別の人生(=世界線)があったのかもしれない」と思うと、切なくなってきたのを覚えている。


そして、今の日本の病理でもあるけど、全部自分のせいだろと言って有無を言わせぬ『自己責任論』が人を苦しめている。


だって、親ガチャで環境も教育もお金も何もかもスタート地点が違うんだ。


パワハラ上司の彼女(35、6歳)は、今まで一度も働いたことがないらしいです。

実家が裕福(たしか開業医)で、労働しなくても好きにお金を使って、自由に生活しているそうです。


普段はパワハラ上司が住む港区のタワマンに住んで、昼間はのんびりして、パワハラ上司が深夜に帰ってくるなり色々愚痴って、パワハラ上司に何時間も話を聞いてもらうらしいです。


世の中には労働すらしない人もいる。

一方で、くだんのお客様のようにハードモードな人もいる。


ちなみにインフルエンサーが言う不遇な境遇から成功ってのは、話半分で聞いた方がいいかも。


私はある有名なYouTubeチャンネルに携わっていましたが、「親は会社員だったけど、俺は開業医になった」と公言してる方がいました。でも実際は会社員というかパイロットで、年収は5000万はあったらしいです。もちろん表には出してないです。

ブランディングがすべてなので、夢を与える虚構の世界です。


なので、人生がハードモードであっても、それは本人だけのせいじゃない。親にも責任があるけど、親もまたその親から同じような扱いを受けていた可能性は高い。悪循環は続いて、負の遺産は子供に引き継ぐのだ。負の連鎖を断ち切るのは、容易ではない。