「皆さん!順番に並んでください!荷物は最少限に抑えて、入り口付近のコンバッツ・シーマ-に荷物の中を見せてください!」
「誰か、怪我をされた方や重傷患者さんはいませんか!?ただ今、回復薬と抗生物質で応急処置を行っております!」
ジュエリーシティの中央大広間施設内では、約2000人以上の民間人であるノーマル・シーマ-達に溢れ反っていた。敵の爆破工作による爆発に巻き込まれ重傷を負っている者や、今何が起きているのか戸惑う者、不安で泣き出す者、戦士達に反抗し出す者達など、施設内は大きな騒ぎに見舞われていた。いや、ジュエリーシティだけでなく、各都市の中央大広間施設でも同じ様な現状が起きていた。
「メテオル指揮官、収容人数が限界です!これ以上民間人をこの施設に入れることは困難です!」
クラニスオンの部隊の一つ……ステリア・ワン部隊の戦士が臨時指令室に駆け込み、一人の指揮官に現状報告を伝えた。その報告を聞いた指揮官のメテオルは、騒がず冷静に振り向きながら戦士に伝えた。
「いいかい、ルビル?我々の任務は民間人をここへ避難させ、治療と保護を行う事だ。我々がここで泣き言を言ってしまったら、彼等を不安にさせ、申し訳が立たなくなってしまう」
そう言うとメテオルは、戦士ルビルの肩を優しく叩き、穏やかな笑顔を見せた。
「だからこそ我々は、決して不安や恐怖、絶望に屈してはならない。最終作戦の完了まで、あともう少しだ。我々なら任務を全うできる!そう信じるんだ!」
「はッはい!了解しました!」
次々と積み重なる不安の感情で自身の心の中が濁っていたが、メテオル指揮官の温かく心強い言葉で不安が残らず消え去り、気を高めたルビルは真っ直ぐに敬礼をした。だがその時、メテオルの背後の空間から突如、三つの黒いエネルギーの穴が出現した。
「なッなんだ!?この穴は?」
ルビルは驚きのあまり声を荒らげた。だが、メテオルはこのエネルギーの穴を、17年前の戦場での戦いで見覚えがあった。
「まッまさかこれは、亜空間移動門《ワープゲート》か!?ルビル!すぐにたい」
メテオルは、ルビルに退避命令を言い出そうとした次の瞬間、ワープゲートと呼ばれたエネルギーの穴から無数のエナジー弾や銃弾が飛び出し、二人の体を激しく撃ち貫いた。メテオルとルビルは叫び声を発する間も無く、冷たい金属の床に倒れた。そして、三つのワープゲートからそれぞれ三つの影が現れた。現れたのは、三人のアポカリプス軍団の兵士達だった。侵入者の兵士達のリーダー格の男は、銃火器を手にしながら床に転がっている二人のコンバッツ・シーマーの死体を見下ろしながら呟いた。
「あ~あ、死んでしまったか……。実に呆気ないな」
男のレンズ状の左目が冷たく赤く光った。そこへもう一人の侵入者、両腕が巨大な剣状の武器になっている男が、リーダー格の男に不満そうな態度で近寄ってきた。
「おい、シャドウ。アンタが一斉射撃の命令を下したおかげで、俺の出番がなかったじゃないか。俺の能力は近接戦闘でしか発揮できないんだからよ~」
「まぁそう言うなよシルバード。奴等を殺るチャンスは沢山あるんだからな、少しは我慢しろ」
リーダー格の男……シャドウは不満顔のシルバードを宥めた。
「ところでノイズバンス、他の中央施設に侵入した同士達との連絡は取れたか?」
シャドウは、左側のワープゲートから出てきた黒いマスクをした蒼い兵士……ノイズバンスに尋ねた。
「既二敵殲滅作戦開始。我々モ行動をすルべきダ」
ノイズが入り混じったノイズバンスの独特な声が、シャドウの耳に入った。
「そうかそうか、それじゃあ、俺達も始めようか?無価値な機械人形共を全滅させる作戦をよぉ!」
シャドウは有り余った殺意を銃火器に込め、全てのシーマ-種族を抹殺するために前進し始めた。
「アポカリプス軍団、奴等を根絶やしにせよッ!!」

-同時刻、インフォータス作戦司令本部-
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
司令本部では、緊急事態を告げるサイレン音がけたたましく鳴り響いていた。
『ジュエリーシティ及び、WB《ウィービィー》シティやサンシティにも、アポカリプス軍団兵士の生体反応多数検知!』
『現在、ムーンシティにて、マーズ指揮官率いるステリア・ツーが軍団と交戦中!ですが、敵兵士の数が多く増援を求めています!』
『総司令官!メテオル指揮官とマキュリィ指揮官との応答がありません!』
オペレーター達が、司令本部からジュエリーシティで交戦中のトライアンフに、通信ユニットを通して現在の戦況を報告していた。
「まさか、各都市が敵の襲撃にあっているだと……!」
トライアンフが苦難に直面していたその時、破壊された民家の物陰から彼に向けてエナジーブラスターを構えている最後の敵兵士を目で捉えたトライアンフは、すぐさま自身のエナジーライフルを構えて、敵兵士を射撃した。敵を撃破した後、トライアンフはすぐさまオペレーターに状況を尋ねた。
「オペレーター、奴等はもしや、ワープゲートで侵入してきたのか!?」
『はい、敵は初め、WBシティにある武装管理施設の内部に潜入し、施設の管理下にあった武装制御装置を破壊しました。そして、壁外及び壁内の全ての重機機関砲を無力化させ、都市内部からワープゲートを使用したようです!』
敵軍が画策した強襲に、まんまと侵入を許してしまった悔しさを感じたトライアンフだったが、すぐ冷静に対処し、司令本部に次の指令を伝えた。
「直ちに各都市で交戦中のクラニスオンに至急連絡を取り、中央大広間施設に避難している民間人の防衛と軍団の撃退、そして脱出用宇宙船への搭乗の指示を出してくれ!」
『了解!……トライアンフ総司令官、ご武運を!』
オペレーターとの通信を切り、トライアンフは周りの戦士達に声が聞こえるよう大声で伝えた。
「クラニスオンのコンバッツ・シーマー達よ!諸君らのおかげで、ここの区域の敵兵士達をあらかた殲滅する事ができた。これより、エスケイプ・ストラテジーの第二段階を開始する!中央大広間施設に戻り、民間人を宇宙船発射施設まで避難誘導させる。万が一、敵が施設を襲撃した際は、民間人の搭乗が完了するまで我々が敵の侵攻を食い止める!戦士達よ、これが最後の戦いだ!星の命と共にあれッ!」
「星の命と共にあれッ!!!」
コンバッツ・シーマ-達は訓練所で教わった掛け声を共に叫び上げ、闘志を奮い立たせた。そしてトライアンフ達は、急いで中央施設に戻っていった。

-トライアンフ達が移動した少し前、ジュエリーシティでは-
ここは先程まで、約2000人以上のノーマル・シーマ-達に溢れ反っていた、ジュエリーシティ中央大広間施設。
そこには先に施設に戻ってきた少数の人影があった。民間人を避難誘導するために訪れた、ネプチューン第17番指揮官が率いるステリア・エイト部隊だった。
「……クリア。施設の周りに、敵の生体反応はありません」
ネプチューン指揮官の隣には、左手に生体反応探知機を持っている、前回の奪還作戦から生還してきた赤き戦士……アドムの姿があった。
「よし、作戦通りに進むぞ。全員直ちに民間人を避難誘導させよ!」
「了解ッ!!」
ステリア・エイトの10人の戦士達は、銃火器を構えながら先に施設の中に走って行った。ネプチューンは施設に向かって歩きながら、心配そうにアドムに尋ねた。
「アドム、体調は良いのか?奪還作戦から、あまり休んでいないだろう?」
「大丈夫です!私はこう見えても、あまり疲れにくい体質なので!」
アドムは指揮官に心配させまいと、元気よくアピールした。
「ハハハッ!そうかそうか!だが、あまり無理はするな。お前が大丈夫でも、お前の体が壊れてしまったら元も子もないからな」
ネプチューンからの鋭い指摘を受けたアドムは、少し苦笑いをこぼした。
「ご心配、ありがとうございます。ですが、こんな状況になってしまった以上、我々はこの作戦を遂行するための覚悟を持ち続けてきました。今は前に向かって進みましょう」
アドムの真っ直ぐな意志を感じ取ったネプチューンは、無言で強く頷いた…その時。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!」
「来るなーーー!!!」
「たっ助けてくれえぇぇぇー!!!」
施設の奥から激しい銃撃音と、先程入っていった戦士達の断末魔が響いてきたのだった。その断末魔をはっきりと聞いたネプチューンとアドムの二人は、素早く武器を取り出して、急いで施設の中に走っていった。
戦闘態勢を維持したまま長い通路を通り抜け、やがて大広間の手前までにたどり着いた。だが、大広間は主電源を破壊されたのか大型ライトが点いてなく、辺りは漆黒の闇に包まれていた。二人はエナジーライフルを構えて、ライフルに取り付けたライトの光で辺りを見渡しながら、慎重に大広間に足を踏み入れた。
「おかしいですね……。戦士達はおろか、民間人の姿が見当たりません……」
静かに歩きながらアドムはふと疑問を呟いた時、コツンと、アドムの足に何かが当たった。アドムはすぐにライトで足元のそれを照らした。
「!!?」
アドムは言葉を失った。彼が見た物とは……血塗れになったシーマ-の頭部だった。
「アドム……!」
ネプチューンは小声でアドムに周りを見るよう合図をした。アドムは恐る恐る自分達の周りをライトで照らした。周りには、おそらく2000体以上のシーマ-達の死体が転がっていた。その中には先程の仲間の戦士達の無惨な姿もあった。どの死体もバラバラに切断され、どの顔も悲痛な表情を作っていた。アドムは叫び声を必死に堪え、意識を集中させ自分自身を落ち着かせた。
「誰が……何故こんな事を……」
アドムは少しずつ込み上げてくる怒りに震える声で呟いた。その様子を見たネプチューンは小声で囁いた。
「アドム……私も同じ気持ちだ。だが、戦場では決して弱い心を見せるな。奴等はその隙を突いて、必ず我々を殺しに来る」
ネプチューンはゆっくりと腕を上げ、大広間中央付近の暗闇に向かって人差し指を指した。
「気が付かないか?あそこに強い殺気を放つ者がいる事を……」
それを聞いたアドムは急いで生体反応探知機を中央付近にかざした。ネプチューンの言う通り、探知機は中央に向かって強い生体反応を感知していた。すると突然、反応がこちらに向かって動き始めたのだ。
「アドム、私の後ろに下がれ。こいつは危険だ……!」
ネプチューンは、特殊な金属で作られた剣を鞘から抜き出し、両手で持ちながら前に構えた。
「お前はここから退避しろ。奴は私が食い止める……!」
アドムはネプチューンの勇ましい闘志を見て、心の中で強く思った。
(そうだ、私もクラニスオンの一員だ。こんな所で弱気になってどうする!?私だって戦えるんだ!)
アドムはネプチューンの隣に並び、右手には剣を、左手にはエナジーライフルを構え、自分自身の持つ闘志を体現した。
「指揮官、私も共に戦います!決して気を迷いません!」
アドムの言葉に、ネプチューンはマスクの下で静かに安堵な笑みをこぼした。二人のコンバッツ・シーマー戦士は、こちらに向かって来る敵に対し臨戦態勢を執った。そして遂に、暗闇の中から大勢の民間人と仲間達を皆殺しにした、憎きアポカリプス軍団の兵士が姿を現した。すると突然、施設の非常用電源が再稼働し、大広間の大型ライトが点灯した。急な光が目に入り込み、二人は咄嗟に片手で光を遮った。それと同時に、聞き覚えのない声が大広間に響き渡った。
「おやおや、まだ血を流していない者た血《達》がいますね」
アドムとネプチューンは、反射的にその声の主に目を向けた。二人は敵の姿を見た瞬間、自分の目を疑った。その者の体には、何千人のシーマ-を切り裂いた証拠と言える血痕が、べったりと付着していた。鎌状の右手には大量の血液が滴り落ちており、左手には武器を握ったまま切断された仲間の戦士の片腕を掴んでいた。
その血塗れの兵士は、深々とお辞儀をしながら自己紹介をし始めた。
「おっと、自己紹介がまだでしたね。私の名はブラックド。アポカリプスの幹部の一人を務めています」
丁寧な口調で自分の名を名乗ったブラックドだが、その体から発している禍々しいオーラをアドムとネプチューンは既に感じ取っていた。
「いやはや私は、とにかく血を見るのが好きでして、相手を斬って斬って切り刻むことで、大量の血液が噴き出しますよね?私はあの光景を見るのが一番大好きなのですよ」
そう言いながらブラックドは、右手から滴り落ちる血液を綺麗に舐め取った。
異常な様子を醸し出している相手に、ネプチューンとアドムはジリジリと間合いを見計らいながら、ブラックドの周りを遠くから左右に立ち並んだ。そしてネプチューンは、改めてアポカリプスの幹部に尋ねた。
「貴様、何故コンバッツ・シーマ-だけでなく、民間人であるノーマル・シーマ-達も皆殺しにしたのだ?」
自分の右側に立っているシーマ-の質問に、ブラックドは呆気なく答えた。
「えぇ、我々の今作戦は、全てのシーマ-さんた血《達》の全滅です。私が担当する事になったのがここ、ジュエリーシティ中央大広間施設。他にも私の仲間た血《達》が、各都市の中央施設に向かっている頃でしょう」
ブラックドは辺りに散乱している死体を見渡しながら、話しを続けた。
「まぁ今回の作戦も、私好みの作戦ですがね。私はこの体に他者の大量の血液を浴びることが、何よりも快感を感じるのでしてね」
仲間の戦士達や民間人の命を平然と奪った者の素っ気ない返答に、怒りに震えたネプチューンは静かに剣を鞘に戻した直後、急にブラックドに向かって走り出した。
「しっ指揮官、何をッ!?止まってください!」
敵の左側に立っているアドムの声も届かず、ネプチューンは敵の懐に狙いを定めた瞬間再び剣を抜き出し、ブラックドの上半身と下半身を真っ二つに切断した。
ブラックドの左手から仲間の戦士の腕が落ち、それと同時に上半身も少しずつずり落ち始めた。
「……殺ったか?」
ネプチューンはすぐさまブラックドの方に振り向いた。だが、ネプチューンは驚きの表情を作った。そこに立っていたのはブラックド本人ではなく、彼の体の形状を保っていた血粒の塊だった。やがて血粒人形は、音を立てながら崩れ落ちた。
(ばっ馬鹿な!確かに奴をこの目で捉えていた!切断した手応えもあった!では何故?まさか最初から私達と喋っていたのは、偽物だと言うのか?!)
倒したハズの敵が偽物だったと驚愕するネプチューンだったが、ふと自分の背後から凄まじい殺気を感じ、咄嗟に剣を構え直して背後の敵に向かって降り下ろした。
だが、ネプチューンの剣は、背後にいたブラックドの脳天には届かなかった。
「どうでしたか?私の能力のアパリッション《魔物の幻影》、血粒模型《ブラッドモデル》のご感想は?」
ブラックドは鎌状の右手で相手の剣を受け止めた後、左手から大量に溢れ出した血粒を瞬時に凝固させ、暗赤色な剣の形に構成した。その剣を目の前にいるコンバッツ・シーマ-の右腕に突き刺し、彼の右腕を切り落とした。苦痛の表情を浮かべたネプチューンは、すかさず左足でブラックドを蹴り飛ばし、アドムの元へ素早く移動した。ブラックドは切り落としたネプチューンの右腕を地面から拾い上げ、傷口から滴り落ちてきた血液を美味しそうに啜り始めた。
「指揮官!腕が……!」
アドムは、すぐにネプチューンの側に駆け寄り、彼の右腕の状態に驚きながらも止血作業を始めた。
「アドム……すまない。無謀にも敵の言葉に感化されてしまった……」
ネプチューンは痛みに耐えながらも、アドムに頭を下げた。そんな彼に、アドムは止血作業を進めながら彼に言い返した。
「本当ですよ!下手したら今度は指揮官が殺られてしまうかと思いましたよ!……ですが、指揮官のおかげで奴の攻撃法がわかりました」
「なっ、何だと……!?」
止血作業が終わったアドムは急に立ち上がり、ブラックドの方へ歩みだした。
「ネプチューン指揮官、腕の止血作業は終わりました。先程救難信号を発信したので、他の部隊が数分後に、こちらに向かってくるでしょう。その間、私が奴を食い止めます!」
ネプチューンはアドムの言葉に驚き、彼を制止しようとすかさず左腕を伸ばすが、右腕の傷が痛みだし、その場にしゃがみこんでしまった。
「やっやめろアドム!敵の能力をわかっているようだが、奴は危険だ!お前一人が太刀打ちできる相手ではない!」
だがアドムは、ネプチューンの方に顔を振り向くと、静かに笑顔を見せた。この危険な状況下にも関わらず、アドムの表情は柔らかく、その笑顔を見たネプチューンは不思議な安心感に包まれるかのようだった。
「大丈夫ですよ指揮官。必ず戻ってきますから」
アドムはそう告げると、両手に持つ武器を強く握り締め、視線をブラックドの方へ向けた。その目は大切な指揮官であるネプチューンを傷付けたことと、大勢のシーマ-達を虐殺した憎き敵に対する厳格な眼差しだった。
「貴様を倒す前に私も自己紹介をしておこう。私はクラニスオン、ステリア・エイトの部隊長、アドム!」
そう言うとアドムは左手に構えたエナジーライフルの引き金を引き、銃口からレーザー光線が発射された。
しかし、ブラックドはレーザー光線を軽々とかわし、今度はアドムを斬り殺そうと彼に向かって真っ直ぐに突進して来た。
アドムはすぐにライフルを背中に背負い、右手に持った剣のグリップを両手で強く握り締めた。迫り来る敵に対し、アドムの姿勢や態度は冷静そのものだった。
「銃をやめて、今度は剣で立血《ち》向かいますか?よいでしょう、あなたの血を1滴残らず奪うのに変わりありませんがねッ!」
ブラックドは勢いよくジャンプし、鎌状の右手と左手に持つ血粒の剣による二刀流で、アドムに向かって急降下してきた。
「さぁ!!あなたの頭部から一刀両断して、そこから降り注ぐ血の雨が私の血から《力》の糧になるでしょう!」
「あッアドムッ!!」
ネプチューンの叫びが辺りに響き渡った。だが、ブラックドの剣がアドムの頭頂部に届く寸前、不思議な現象が起きた。突如、アドムの体から炎が噴き出したのだ。
炎はブラックドの血粒の剣を一瞬にして蒸発させ、奴の体を焼き焦がそうとした。ブラックドは防御策として大量の血粒による防御壁を作り出したことで軽い火傷だけで済み、すぐ後ろに後退した。
「なッ何ですか、今のは!?」
ブラックドは突然の出来事に戸惑いを隠せなかった。ネプチューンも、まるで奇跡を見ているかのような表情でアドムを見つめていた。
「アドム、その姿は……まさか!?」
ネプチューンはアドムの姿を見て、確信をした。
アドムも元々は民間人であるノーマル・シーマ-の一人だったが、激化するアポカリプス軍団との戦争をきっかけで、戦闘能力に特化したコンバッツ・シーマ-の改造を受けていた。それと同時に、アドムは特殊能力を体得する事ができたのだ。
アドムは燃え盛る自分の体を見て呟いた。
「この能力を発動させるのは今回が初めてだったが、どうやら成功したみたいだな。ステリアビリティ《星の能力》、炎鎧《エンガイ》を!」
その名の通り炎の鎧を身に纏ったアドムは、同じく炎に包まれた剣を振りかざし、戦意に満ちた眼差しでブラックドにこう告げた。
「ブラックド……いや、アポカリプス軍団の幹部よ。我々誇り高き、シーマ-の最後の切り札を見せてやろう!!」