内田武志氏著『日本星座方言資料』(アチッミューゼアム、1949年)には、様々な和名が掲載されている。そのなかで、分布がはっきりしなく、あまり知られていない和名がある。

まずは、ミツヨノケン・・・
 内田武志氏によると、大井川河口の静岡県榛原郡吉田村(現 吉田町)に、次のように伝えられている。
「菱形に並んだ四箇の星をミツヨノケンと呼び、それは秋季八、九、十、十一月頃に現れる。そのうち下端の一星はやゝ大きく光輝が強い。この四星は、おりおん座三星が中天にある頃東方に現はれ、三つ星が西方に隠れる頃、上天に位置を占める。またその時分、東空には暁の明星が昇つてくることもある。それでこの地方の漁師は、以前夜の海上で時計がなくとも、スバル、三ツ星、ミツヨノケン、夜明ケノ明神とを見て、時を違へることもなく夜の明けるまで家業をなした」(『日本星座方言資料』P144~145)
しし座の菱形を構成する四星について、内田氏は「α、η、γ、ζ」か「βと附近の三星」のどちらかであろうと記しているが、現段階では、同定は困難で、今後の調査の課題である。
また、ミツヨノケンについて、「三四の劍で、菱形を古式の劍…」という可能性を記している(『日本星座方言資料』P144~145) が、「三四の劍」は、光世の剣であろうか。

次ぎに、クダボシ
 内田武志氏によると、鹿児島縣川邊郡枕崎町(現 枕崎市)に、次のように伝えられている。
「クダボシと稱する菱形に並んだ四箇の星は、九月の暁天に昇る」(『日本星座方言資料』P145)
 内田氏はミツヨノケンの菱形と同様であろうと推測したが、クダの意味は不明であった。私は、クダは、管巻で、おそらく管だけでなく、糸車全体を意味したもので、デネボラ(β)を含まず、レグルス(α)、η、δ、θの四星を意味したのではなかろうか…とも思ったが・・・

これらも悩むところだが、今後の調査の課題として、私は無理でも後世の調査研究を待ちたいと願い、掲載することにしたい。もちろん、完成するまでに新たなことがわかれば、校正中でも追記したい。