I must confess...―「セクシーじゃないものに投資なんかしたくない!」
(踊り過ぎて、腰が痛い。今ならまだ漏れなく風邪も引きっぱなしだから、咳・鼻水・くしゃみ・咽頭痛アリ。それに加えて、腰まで立たないなんてサイコーよね。なんて、皮肉を言ってる場合じゃないんだった。それでも、勤務は続いて行く。たまには、息抜きでもしなきゃ、やってらんない。ってことで、ハイ。お給料日が過ぎて今日―本当は5日が、クラブと私の[お約束の日]―、突然気が大きくなって衝動買いしたGODIVAのチョコを食べ過ぎちゃった言い訳、完了。ちゃんとフロアで腰を振って、「燃料消費」して来たわよ、私は。それでも太っちゃうのは、免れない? この際、もう考えない! 考えたら負け考えたら負け考えたら…)今朝になって勤務が明けて帰って来たら、家に置きっ放しの私用の携帯電話のほうに、有り余る数の着信とヴォイス・メール、留守電メッセージが残ってた。「(また例の厄介なこと?)」私は疑心暗鬼気味に神経を尖らせて、汚いものでも触るみたいに恐る恐る携帯をチェックしようとしたけど、すぐに気が付いた。「トラヴィスは、私の私用回線のほうの番号は知らないんだった!」。カレに限らず、すべてのお客は、私のプライベートでの電話番号を知らない。というか、その存在にすら気付いていない。私は巧みに[クラブ・ガールのスタジェ]としての役割を演じて、それが私のすべてであるみたいに振舞う。訊かれれば―あるいは、[お気に入り]がいたら、自分から―連絡先は教えるけど、それは「私」の主用回線じゃない。飽くまで、[クラブ・ガール]としての…って、ああ、もう。話が堂々巡ってワケの分かんないことになってる。とりあえず、これが緊急の連絡だったら、もうすっかり困ったことになり切ったあとだろうから、焦ることはないんだろうけど。私は、眠いのを堪え切れずに欠伸をしつつ、可愛らしい白い携帯を手に取った。これがもし、ドラマとか小説なら、ここで何か劇的な展開―例えば、父親が病床に伏したって連絡やお店の経営破綻、彼氏からの突然の別れ話とか―を書きたいところなんだけど、まあ、これは現実なんだし、仕方ないか。彼氏は私を今のところは愛してくれてるし、お店の経営は充分過ぎるほどに順調、父親は元気で留守がいい、ってね。すんなりと確認出来た「嵐のような着信(別称:連絡一過)」の主は、私の昼間のお仕事のほうのお客様。「お客様」って言い切ると語弊があるけど…まあ、普通に大切なお知り合いの方。国際物流に関するお仕事をされていらして、最近では、多国籍文化交流の発展を実現させるための民間団体を発足したとか何とか云々かんぬん。難しい。それで、用件は、その方の主宰する団体が執り行うイベントがあって、そのなかで、各国の代表者が会して演奏するグローバル・ミュージックのようなコンサートがあるから、そのあとのパーティにも出席するつもりで一緒にどうか、ってことだった。冗談! このテの代表者に声を掛けられたからって、本当に「ご一緒」するつもりで行ったら、絶対に馬鹿を見る羽目になる。この業界に入って、ようやく8ヶ月。まだまだ未熟だし、知らないこともたくさんあるけど、それでもこういう盛大な集まりの主宰者と呼ばれる人がどれだけ忙しいか、それが分からないほどには無知じゃない。壁の花になるのは御免、居場所を失うのはもっとイヤ! それに私は、この職業に携わるものにしては珍しく、こういった場所に対応出来るような様相の服をまったくと言っていいほど持っていない。それは、原因として需要ってものがないからなんだけど、それにしたって、ブランドやステイタスってものに興味を失い過ぎてるのかも。お給料はぜんぶ、クラブで着るための[コスチューム]に早変わりしちゃう。下品で高貴さの欠片もない、今の歳にしか着られないから将来性も望めなくて、少し洗濯を間違うともうダメになるくらいヤワな、ダメなこと尽くし。…でも、たまらなくセクシーなやつ!そんなワケだから、コール・バックして断ろうと思ったのに…。ああ、私って、なんて意志が弱くて流されやすいの!強く押されると拒めない、思わず「ハイ」って言っちゃった。もうっ、私の母ちゃん出ベソ。どうして、いつもいつもこうなっちゃうのよ。向こうはサクッとした軽い気持ちで誘って来た、に500グローバリゼイション。なのに、お愛想でいい顔しちゃう私には、罰金-1,000,000ローカル。コンサートとパーティは、再来週の日曜日。とりあえず、それまでに、壁の花になっても恥ずかしくないような、立派なドレスの調達の仕方だけは考えておかなくちゃ。検索にでも掛けてみようかな、「パーティ・ドレス 購入 壁の花 憂鬱で死にそう」とかで。