~風の歌を聴けより
「お元気ですか?
毎週楽しみにこの番組を聴いています。早いもので、この秋で入院生活ももう3年目ということになります。
私は17歳で、この3年間本も読めず、テレビも見ることもできず、散歩もできずに…過ごしてきました。
私がこの3年間でベッドの上で学んだことは、どんなに惨めなことからでも人は何かを学べるし、だからこそ少し
ずつでも生き続ける事ができるのだということです。
~
時々もし駄目だったらと思うととても怖い。叫びだしたくなるくらい怖いんです。
~
嫌な話はもうやめます。
そしてお姉さんが一日に何百回となく私に言い聞かせてくれるように、良いことだけを考えるよう努力してみます。
それから夜はきちんと寝るようにします。嫌なことは大抵真夜中に思いつくからです。
病院の窓からは港が見えます。毎朝私はベッドから起き上がって港まで歩き、海の香りを胸いっぱいに吸い
込めたら…と想像します。
もし、たった一度でもいいからそうすることができたとしたら、
世の中が何故こんな風に成り立っているのかわかるかもしれない。そんな気がします。
そしてほんの少しでもそれが理解できたとしたら、
ベッドの上で一生を終えたとしても耐えることができるかもしれない。
2
さよなら。お元気で。」
名前は書いてない。僕がこの手紙を受け取ったのは昨日の3時過ぎだった。
~
あと10年も経って、この番組や僕のかけたレコードや、そして僕のことをまだ覚えていてくれたら、
僕のいま言ったことも思い出してくれ。
彼女のリクエストをかける。
曲は、シガーロスで、「Varuo」
「惜しまずに与えるものは、常に与えられるものである。」