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去年の夏のある日、俺はある無人駅のホームに佇んでた。
その駅は山の間を縫うような所にあり、下の道からホームまで行くのに高い階段をのぼらなけれならなかった。
市街に向かう一時間に一本の電車が到着しようとしていた。
そのとき、大きな荷物を抱えたおばあちゃんが階段を昇ろうとしていた。
明らかに間に合いそうにない。
俺は無意識のうちに階段を下り、おばちゃんの荷物を持ち、手を引いて階段を上がった。
ギリギリ間にあった。おばあちゃんは感謝しきりで、電車の中で俺に色々と話しかけてきた。
別れ際、おばちゃんは俺にお礼として千円札を俺にくれた。
無論、受け取れるわけがなく、俺は断ろうとした。
そんなつもりで助けたわけでわないと言う俺に対し、何もかも見透かしたように
「いい事をすれば、必ずいい事が帰ってくる。
お兄ちゃんみたいな人には必ずすごくいい事があるから‥
これくらいしかできないけど受けとって、これでジュースでも買って。」と言われた。
涙がとまらなかった。
おそらく、気づいていたんだろう‥俺が死のうとしていたことを‥
何をしても報われないと思っていたが、少しだけ救われた気がした。
帰りにコンビニに寄った。
あのお金でジュースでも買おうと思い、レジに商品を置いた。
そのとき、おばあちゃんにかけてもらった言葉を思い出した。
俺は店員さんに「やっぱ、いいです」と買うのを断り、
レジの横に置いてあった小銭で一杯の募金箱に、少しクシャクシャになったあの千円札をねじ込んだ。
あの日の出来事は生涯忘れることはないだろう











