サザエさん・最終回 作:南 浩史
ピンポ~ン!
「こんにちは、宅急便です!」
ある土曜の昼下がり、磯野家に荷物が届いた。
サザエが包みを開けると青い玉手箱であった。
「中は何だろう?お菓子かなぁ!ねえさん開けてみようよ!」
土曜の昼下がりだというのに珍しく家にいるカツオであった。
「ダメッ!父さんが帰ってからよっ。」
「チェッ!つまんないの」
サザエにお預けをくらったカツオは空き地に野球をしに行った。
その日の夜。
波平が帰宅し一家全員がそろった。
「何!そんなモンわしは知らんぞ」
「あら父さんじゃなかったの?骨董品でも買ったのかと思ったわ」
「じゃぁやっぱりお菓子かなぁ」カツオは相変わらずである。
茶の間に集まった磯野家そしてフグ田家、
二世帯全員の見守る中、波平が玉手箱の蓋に手を掛けた。
「えいっ!」
一気に蓋を開けると中に説明書きがあった。
「なになに、”閉めきった部屋の中央に置きコップ一杯の水を入れてください”だと?」
「おい、かあさん水だ!」
フネが水を持ってきた。
全員の見守る中、波平が玉手箱に水を入れた。
瞬間的に白い煙が部屋中に広がった。
「うわっ!ゲホゲホ!」
誰もがパニックに陥った。
「姿勢を低くするんだ!煙を吸うんじゃない!」マスオが叫んだ。
先週会社で火災訓練があったのである。
しかし白煙は部屋の隅々まで充満しており姿勢を低くしたところで無駄であった。
「うわぁい!ゴキブリの気持がよく解かるよぅ!」カツオは相変わらずである。
それぞれの意識は次第に遠退いていった.....
いつしか白煙は消え朝になっていた。
「う、う~ん.....」最初に気が付いたのはカツオであった。
目の前の光景に唖然とした。
ワカメ、タラちゃんの姿が見当たらない。
おまけに二つの白骨死体がある。
大きさからして子供の物ではない、成人の物である。
「えっ?!」
カツオは更に我目を疑った。目の前に横たわる自分の姿を見て。
「うわーん!僕死んじゃったんだ!」
カツオは横たわる自分自身を抱きしめた。
その時抱きしめられたカツオが目を覚ました。
「あれ、パパないてるですか?」
「えっ?パパ?」
カツオは戸惑った。
今自分が抱き上げている自分が自分自身をパパと呼ぶのである。
しかもタラちゃん口調で。
カツオは急に思いたったように洗面所に走った。
鏡の中に映ったのはマスオの姿だった、
というか、数歳年をとりマスオ似の大人に成長したカツオだったのである。
「ということは、さっき僕のことをパパと呼んだのは大きくなったタラちゃんだな。」
さすがカツオである、勉強はできなくとも他の事なら頭の回転が速い。
「取りあえずみんなを起こそう!」
カツオは茶の間に戻った。
それぞれ年をとり
カツオ似に成長したタラちゃん、
サザエ似に成長したワカメ、
波平似に老いたマスオ、
そして、フネ似に老いたサザエがそこにいた。
カツオは皆に事情を説明した。
「それじゃぁ.....」
皆の視線が寄り添う二体の白骨に向けられた。
その通りである、この二体の白骨死体こそ寿命を超えるほど年を取り過ぎ白骨化した波平とフネの姿であった。
「え~ん、おじいちゃんおばあちゃんしんじゃったですー!」
「取りあえず御骨でも拾おうよ。」カツオは相変わらずである。
「う、うん。そうだねカツオ君。」動転しているマスオは声が裏返っていた。
長い間、歳を取るのも忘れのんきに暮らしてきた磯野家が現実に目覚める時が来たのである。
「しかし現実に目覚めるにしちゃぁ歳の取りかたが中途半端だなぁ。」
カツオが疑問に思ったその瞬間である。
ピンポ~ン!
「こんにちは、宅急便です!」
次の玉手箱が届いたのである。
<<おわり>>
