2020年12月20日「はりぼて」鑑賞

富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、報道によって人間の狡猾さと滑稽さを浮き彫りにする様子を描いたドキュメンタリー

市議14人をドミノ辞職に追い込んだ「政務活動費を巡る調査報道」の富山のローカル局チューリップテレビが、その3年間にわたって取材を重ね、テレビ番組放送後の議会のさらなる腐敗と議員達の開き直りともいえる姿を追う

チューリップテレビが富山県議会議員の不正を追及するドキュメンタリーなんですが、半年間で辞職議員14名、引退1名、不正金を返金しても尚生酒々と居座る議員10名…これ新手のギャグですか

政務活動費の不正受給オンパレードで、嘘つき議員だらけで、あいつもこいつも出てくる出てくる

領収書の金額偽造、市政報告会という得たいの知れない会合費用、カラ出張

野々村竜太郎かよ

保守王国富山県

富山県は自民党員率が10年連続全国一なんですね

まずは市議の議員報酬を引き上げるという条例の問題から始まるんだけど、嘘ばっかりの自民党会派で市議会のドンの逮捕

蓋を開けてみれば政務活動費を慢性的に使い込んでいた議員達

土下座して謝るパフォーマンス後に出直し選挙すりゃ許して簡単に当選させちゃう我々有権者…なんだこれ

不正を暴いた記者達の真撃な取材と堂々とした報道には感銘を受けました

五百旗頭キャスターや砂沢記者の忖度もせず、圧力に屈することもなく、証拠をもとに斬り込む鋭い追及はジャーナリストの鑑だなと思います

こんなの氷山の一角で、同様の不正は何処でも起きているのに、それに触れることなく馴れ合いの取材しかしないメディアばかりで、チューリップテレビみたいな報道機関は他に無いのかしら

ところがこの作品の最後、ラスト3分あたりで五百旗頭キャスターはチューリップテレビ局を退社、砂沢記者は報道部門から外され社長室兼メディア戦略室に異動するというのが流れたんですが、衝撃的でした

自らの会社の内部事情までさらけ出した、その衝撃の映像からはテレビ業界への抵抗を強く感じましたし、結局は我々も組織に忖度する「はりぼて」に過ぎないという無力感すら伝わってきました

そんな中で映画「はりぼて」はチューリップテレビ局の制作として発表されていることから、裏で動いて相当苦労した人が当時報道局長だった服部プロデューサーだったのではないかなと思うのです

不正を追及して辞職へ追い込むだけでなく、製作側であるチューリップテレビもまた「はりぼて」なんですよという視点でも描かれていて、勧善懲悪的な作品ではないところにも好感が持てました

「なぜ君は総理大臣になれないのか」に続いて「はりぼて」のようなドキュメンタリー映画を観たんですが、それまで諦めもあって政治に興味が無くなってたんですが、目が覚めました

ヘタな映画よりエンタメ感満載です

要必見

2020年8月16日公開

映画「はりぼて」

監督/五百旗頭幸男、砂沢智史

プロデューサー/服部寿人

上映時間/100分