我が家は積水ハウスのビエナで建てた3階建ての重量鉄骨住宅です。もうじき住み始めてから5年という事で、感無量な感じがします。今回は躯体構造編です。

 

 

【結論】また都内で3階建ての家を建てるなら、やっぱり鉄骨の家にする。でも、相性の良い設計士さんに出会えたらRC造にするかも。

 

 

家を建てるという事で、ハウスメーカー選びをしている時は、木造とか鉄骨とか、あまり意識していませんでした。もちろんそれなりに勉強して木造や鉄骨のメリット、デメリットは理解していましたが、ようは私達の希望する家を造ってもらえれば、なんでも良かったわけです。鉄筋コンクリート造(RC造)については、ほとんど知りませんでした。

 

 

あらゆる面で優秀な構法があれば、それにこしたことはありませんが、そんな都合の良い話はなく、どんな構法でもメリットとデメリットがあります。重量鉄骨の家を建てる事になって一番心配だったのが断熱性、気密性の問題です。知識として鉄骨造は木造やRC造に比べて断熱性や気密性が劣るという認識を持っていました。

 

 

気密性・断熱性→【まあ快適】

5年住んでみて、特に断熱性が弱いとは感じませんが、たぶん最新の高気密・高断熱の木造住宅と比べると劣っているのだと思います。しかし、鉄骨でも以前住んでいた25年前の壁式木造住宅と比較して、はるかに性能が良いです。もちろん建てた年代が違うので、前の家が悪かったという事ではないのですが、今は鉄骨住宅でも快適に過ごしています。たぶん、断熱材の性能が格段に良くなっているのでしょうね。あと、床暖房を入れているために快適になっているという事もあるかもしれません。

 

 

設計時、ほとんどひと繋がりのような家なので全館空調を入れたかったのですが、天井高が低くなるとか、2台必要だとか、色々あって、結局個別空調になりました。まぁ、当然ですが全館空調にもメリットとデメリット(特にメンテナンスと、ダクトのカビの問題)があるので何とも言えませんが、ちょっと残念でした。

 

 

全館空調ではないので、冷暖房を全く入れていなければ真夏は1階は涼しく、3階は暑いという状態になりますし、真冬は3階が暖かく、1階は寒いという状態になります。妻は「暑けりゃ冷房入れればいいし、寒けりゃ暖房入れればいいじゃない」という程度の豪快さを持っているので救われます。今の時期(12月)昼間の太陽で、夕方の帰宅時でも3階はものすごく暖かくなっています。最高気温17℃、最低気温7℃の晴れ時々曇りの日で、朝仕事に出る際に床暖房を停止して、夕方帰った時の3階の温度が27℃、2階が24℃、1階が21℃ちょっとでした。1階と3階は温度差大きいですね。朝はタイマーで床暖房入れてるので、よくわかりませんが、暖房しないと朝は寒いと思います。



我が家の場合、2階〜3階の大きな吹き抜けがあるので、シーリングファンを回すと、20〜30分で2階と3階の温度は同じになります。本当に効くのかな?と思っていましたが、シーリングファンの効果は絶大です。吹き抜けの無い1階は個別に床暖房を入れないと暖かくなりません。これは、たぶん程度の差はあれ木造やRC造でも同じではないでしょうか。外出先からスマホで各部屋の温度を見て空調や床暖房、シーリングファンなどをコントロールできるので、とても便利です。

 

 

夏場は空調をつけないでいると1階は涼しいですが、3階は暑くなります。なので、3階の窓を開けて熱気を抜くという事をしたりします。そんな時は、あぁ、全館空調だったら楽だろうな〜と思ったり。それでも3階のエアコンをうまく使うと吹き抜けやオープン階段を通して2階も涼しくなってきます。3階を涼しくしようとする時、シーリングファンは夏場も効果高いです。あと、夏場は吹き抜けの窓の遮熱スクリーンを下ろしています。それでも夏の光は十分に入ってきます。



3階の天井と1階の床をダクトでつないで、ダクトファンで空気を上げたり下げたりできる仕組みを付けとけば良かったな?

 

 

家の温度の事を優先で考えたら、躯体蓄熱効果のある外断熱のRC造が最強だと思います。しかも、コンクリート打ち込み式の胴縁付き外断熱なら、外断熱の弱点の壁が垂れてくるといような事もありません。冬場は保温効果、夏場は保冷効果があります。木造は鉄骨造より断熱性能は高いと思います。その点は熱伝導率の高い鉄骨造は不利ですね。

 

 

耐震性→【特に安心】

次に、地震の時の安心感ですが、これは絶大な安心感があります。3階建てなので、木造にしても構造計算(許容応力度計算)が必要なので、強さは変わらないと思いますが、やはり重量鉄骨の安心感は大きいです。RC造だともっと安心なのかもしれませんが。ただ、鉄骨はその柔軟性で揺れをいなすので、揺れることは揺れているのだと思いますが、軽量鉄骨ではないので、比較的揺れは小さいと思います。この辺は出来る限り硬く造る木造やRC造との大きな違いかと思います。なので、我が家の外壁はロッキング構造で、大地震が来ても捻れを許容し、元に戻るようになっています。

 

 

確率論的に言って、火事より何より地震が一番怖いので、これは大きなメリットです。地震は避けようと思っても避けられず、一度に大量の住宅が被災しますからね。しかも中くらいの地震はよく来るし、大きい地震もいつか必ず来ますから。

 

 

鉄骨造は台風の時にかなり揺れるという話を聞いたことがありますが、重量鉄骨でそれを感じる事はまず無いと思います。

 

 

防火性・耐火性→【よくわからない】

火事になったことが無いので、わかりません(笑)。一般に鉄骨住宅は防火性能は高くて耐火性能は低いという事です。躯体構造には木材を使っていないので、ぼやから火事になる確率は低いです。万が一壁内に火が入っても燃料が追加されない限り、すぐに消えます。つまり、防火性能は高いので、火災保険も安くなっています。しかし、全焼するほどの大火事になった場合は鉄は200℃〜400℃位までは強度が上がり、それを超えてくると強度が落ち始めるという事ですので、例えばRC造に比べると耐火性能は低いという事になります。だからRC造は火にも熱にも強いので火災保険が一番安いです。ただ、重量鉄骨の住宅の場合、鉄骨がぐにゃりとなるところまでは行かないと思います。工場や倉庫のように可燃物や燃料が大量にあれば別ですが。ただし、ハウスメーカーによっては鉄骨造でも間柱や床の地板などに木材を使っているところもあるようですので、気にかけた方が良いですね。

 

 

木造の場合、柱や梁に十分な燃えしろを計算して太さを決めておくと、表面が炭化しても柱や梁自体が崩れ落ちるにはかなりの時間がかかります。しかし、その前に壁や床が燃え落ちて、家の中に人間が居る事は無理な状態になるでしょう。よく、黒焦げの柱と梁だけ残った火災後の写真を目にする事があります。木は200℃を超えると可燃性のガスが出てきて火種があると発火します。火種が無くても260℃〜400℃程度で自然発火します。躯体の構造体そのものが燃料となるので、壁に火が入ると横だけでは無く、通気層を通って垂直方向にも燃え広がってしまいます。

 

 

ただ、鉄骨造や木造でも(我が家のように準防火地域や防火地域では)屋外は外壁、屋内は石膏ボードなどの被覆をする事によって火や熱から躯体を守るようになっています。積水ハウスのビエナではシェルテックコンクリートの耐火外壁で躯体の鉄骨を守っています。RC造は火にも熱にも強いので良いですが、木造や鉄骨造の場合は外壁にも注意を払いたいですね。また、そのような地域では通気層を通って火炎が上階に広がる時間をかせぐためにファイヤーストップが設けられます。ただ、その分通気は悪くなります。

 

 

ここまで書いてきて「RC造住宅が最強?」って思い始めてしまいました。あはは。

 

 

間取りの自由度→【最高!】

これは鉄骨最強だと思います。重量鉄骨だとRC造より長いスパンが飛ばせます。その分、部屋を広くしたり開口部を大きくしたり、大きな吹き抜けを作ったりできます。もちろんラーメン構造のRC造でも長いスパンを飛ばす事は可能ですが、柱がかなり太くなります。なので、部屋の中に柱の形が出てきたり、部屋が狭くなったりします。重量鉄骨でも柱は少し太めなのですが、積水ハウスのビエナはH鋼を使っており、部屋に柱型が出ません。そういう意味では、私達が希望する間取りを実現できるのはビエナだけだったのかもしれません。

 

 

ビエナはラーメン構造ですが、梁勝ラーメン構造という変わった(?)構造で、通し柱を必要としません。それだけ梁が頑丈という事なのでしょうけど。これが間取りの自由度を格段に高めています。とはいえ、上下階で柱の位置は出来る限り合わせた方が躯体の強度は上がると思います。まぁ、許容応力度計算されているので問題はありませんが。

 

 

さすがにこれが木造3階建てとなると心配です。特に1階に大きなガレージを設けたので、強い柱と梁があるというのは安心材料になります。木造3階建ての場合、1階と2階の柱や壁の量は相応に多くなってくると思うので、希望する1階の大きなガレージや2階の巨大なLDKや大きな吹き抜けは無理だったと思います。また、3階のバスルームとか、3階にドラム式洗濯機を置きたいといった要望は通らなかったと思います。RC造の場合は、間取り自体は可能だったかもしれません。ただし、柱型が室内に出てしまうとか、部屋が少し狭くなるとか制約はあると思いますが。

 

 

防音性→【普通かな】

前に住んでいた木造住宅と比較すると防音性は良いと思います。今の木造住宅は25年前のものよりも良くなっていると思います。ただビエナの防音性が高いのは、鉄骨造だからという事よりも、外壁のシェルテックコンクリートの性能が良いのではないかと思います。あと、昔の家より窓の性能も上がっているのではないでしょうか。

 

 

ただ、家の玄関ホールにあるピアノを弾くと、玄関の外でもよく聞こえます。防音室とか作ってないですしね、これは仕方ないかな。夜は消音せずには弾かないようにしてます。防音性に関しては、RC造の一人勝ちではないでしょうか。家全体が防音室のようなものですから。防音に関しては壁材料の質量(物質としての密度と厚み)と密閉性がものをいいます。ただ、コンクリートと防音扉で密閉した場合には換気が問題になりますので、換気扇には長さのある防音ダクトを使うなどの配慮が必要かも知れませんね。

 

 

SE構法という選択肢→【不安材料がある】

もう一軒家を建てるとしたら、SE構法などの木造金物構法にも興味があります。木造の最大の欠点である断面欠損を最小化して基礎と柱、柱と梁を金物で強固に結合する構法です。また、基礎と柱の間には土台が入らず、引き抜き強度が高くなる金物で直結されます。重量鉄骨ほどではないにしろ、地震に強く、ある程度のロングスパンを飛ばせる(広い部屋を作れる)というのが魅力です。適切な断熱材を適切に施工すれば、かなりの断熱性も担保できると思います。

 

 

ただ、SE構法などの金物構法にもメリットとデメリットがあるので、そこのところは「う〜ん」と考えてしまいます。

 

 

SEとは Safety Engineering  の略で、工学的に安全な構法です。経験と勘の世界から木造建築を工学に引き上げたもので、3階建て以上はもちろん、2階建て以下の建物でも全て構造計算を行います。つまり、何に対して安全かというと、地震に対してです。構造計算する上で、自然木の無垢材は個体差が大きく、強度計算が難しいです。そこで、SE構法では集成材と言われる板を何枚も接着剤で貼り合わせて作った柱や梁を使います。この集成材に利用される板は節や割れを取り除いた物で、木の外側や内側、反り方などで分類されたものを適切な配置で繊維方向を合わせて貼り合わせるので強度が強く、品質が安定しています。

 

 

問題はこの集成材で、まず、集成材が安定した強度を保ち続けられる対応年数がわかりません。住宅での使用実績年数がそれほと多く無いから、経験値がたまっていないのです。基本的にこの集成材の寿命は木が腐らない限り接着剤の寿命という事になります。何年か前には、住宅に使われる集成材が想定より早く劣化して問題になった事がありました。しかもホルムアルデヒドによるシックハウスの問題で、集成材に使われる接着剤が限定されるようになり、むやみに強い接着剤が使えなくなってしまいました。

 

 

また、実験で集成材の柱の燃焼をしたところ、接着力が弱まってバラバラになり、中の方まで速く炭化してしまったものもありました。もちろん使う接着剤の種類によるのでしょうが、これでは燃えしろを計算することすらできません。木の良いところが台無しになってしまいます。

 

 

さらに、SE構法などの金物構法は、柱や梁の接合部分は全て鉄の金物で固定されます。400℃を超える高温に弱い鉄で、しかも鉄骨造とは違い周辺には燃料となる木材がふんだんにあるわけです。鉄が出ている(見えている)部分が少ないからといって、熱伝導率がすごく高いわけですから、火で炙られれば中も熱くなります。鉄の強度が弱くなるとともに、中の方まで熱せられた鉄が、周囲の木材を熱します。200℃を超えると木材から可燃性ガスが発生し、周囲にある炎により発火し、さらに炎が増えてゆく事になるでしょう。しかも、一番重要な柱と梁のジョイント部分で。260℃〜400℃程度になると、火種がなくても耐えてない部分の木が自然発火します。これは外壁や石膏ボードなどの被覆をしっかりしておけば大丈夫だとは思いますが。あるいは、できるかどうかわかりませんが耐火集成材という製品があるので、これを使ってもらうのも一つの方法かもしれません。但し、耐火集成材が通常の集成材と同等の対応年数があるのかどうかはよくわかりません。

 

 

あとは、SE構法は現場での釘の打ち方やドラフトピンの叩き込み方などに細かいルールがあるので、実際に施工する工務店や大工さんの力量、知識などに品質が左右されやすいというのもデメリットかもしれません。SE構法はあくまで躯体構造に関する構法なので、それ以外は関わる設計士さんや工務店に依存する事になります。センスの良い設計士さんと腕の良い工務店さんに出会えるかどうかも大きいです。

 

 

やっぱり最強なのはRC住宅か?→【但し外断熱】

防火性、耐火性、気密性、保温性、耐震性、耐久性、防音性、どれをとってもやはりRC造が最強のように思えます。保温性と書いたのは、RC造は木造と比べて断熱性は劣るものの、木と違いコンクリートは蓄熱体となるので外断熱すれば保温性は高くなるからです。でも、やっぱりデメリットはあります。建物が重いので、強固な地盤(あるいは地盤改良)が必要になる事と、建築コストが高い事です。

 

 

SE構法もそうですが、RC造は扱っているハウスメーカーが限られます。しかもその数少ないハウスメーカーが扱うRC造は、ほとんどがプレキャストです。工場で鉄筋コンクリートのパネルを作って建築現場で組み立てる方式です。工場生産なので、品質は安定します。しかし、個人的な意見ですが、これだとRC造の魅力は半減してしまいます。現場打ちのコンクリートで建物全体を一体化させてこそのRCだと思うのです。それによって気密性や耐震性、耐久性が格段に上がるわけです。また、現場打ちの方が間取りや外見の自由度が大きくなりますし、打ち込み外断熱もできます。ただ、現場の職人さんの腕前に左右されるという意味ではリスクもあります。

 

 

またRC造の場合、外断熱は必須だと思います。理由は2つあって、1つは結露の問題、もう1つはコンクリートを蓄熱体として使うためです。内断熱(充填断熱)だとコンクリートは蓄熱体として利用できません。外側で温度が区切られるから内側に対する蓄熱体としての意味が出てくるのです。つまり、外断熱にして初めて室内の保温効果が期待できるという事になります。

 

 

そう考えるとRC住宅を建てるなら、ハウスメーカーではなく、RC住宅の経験が豊富な設計事務所でという事になると思います。それはそれで不安があり、ハウスメーカーと違い設計が規格化されていませんから品質が一定ではないというリスクはありますのて、信頼できる良い設計士さんと巡り会えたら「それもありかな?」という感じかと思います。