とにかく読んでみて!と薦めたくなる、桜庭一樹氏の直木賞受賞作品。ラストまで読んでから冒頭の章を読み返すと、結婚式のあたりでかなり泣ける。
しかし、その勢いで再度全編読み直すと、今度は非常に怖い話にも思えてくる。ヒロインの父親が「幼女淫行、近親相姦」の性癖を持つ危険な男でないとは言い切れないからだ。
例えば、先生1人、生徒1人の分校で小学校の6年間を過ごしたら、その経験は人生の根底に染みこむだろう。町の中学に進み、複数の教師と生徒がいる環境に身を置いて初めて、「あの先生は本当は私を嫌いだったんだ」などと気付くかもしれないが、1対1で向き合うことしか知らずにいたら、それが唯一の正義になってしまう。
性愛の世界は、更に難しい。女は、一度その世界へ身を投じてしまうと元に戻れないし、案外、降りることができない。そして周りが見えなくなる。唯一の絶対者から、これが愛だと教えられたら、信じて受け止めてしまうだろう。
純愛か、犯罪か。そんな危険を孕みながらも、禁断ゆえに濃密な二人の関係に陶然としてしまう。幾重にも危険で、だからこそ抗えない魔力に満ちた小説である。
しかし、その勢いで再度全編読み直すと、今度は非常に怖い話にも思えてくる。ヒロインの父親が「幼女淫行、近親相姦」の性癖を持つ危険な男でないとは言い切れないからだ。
例えば、先生1人、生徒1人の分校で小学校の6年間を過ごしたら、その経験は人生の根底に染みこむだろう。町の中学に進み、複数の教師と生徒がいる環境に身を置いて初めて、「あの先生は本当は私を嫌いだったんだ」などと気付くかもしれないが、1対1で向き合うことしか知らずにいたら、それが唯一の正義になってしまう。
性愛の世界は、更に難しい。女は、一度その世界へ身を投じてしまうと元に戻れないし、案外、降りることができない。そして周りが見えなくなる。唯一の絶対者から、これが愛だと教えられたら、信じて受け止めてしまうだろう。
純愛か、犯罪か。そんな危険を孕みながらも、禁断ゆえに濃密な二人の関係に陶然としてしまう。幾重にも危険で、だからこそ抗えない魔力に満ちた小説である。