その声はあまりに熱く
あまりに悲しいもので
振り向かずとも感情が伝わった。
声は村長のものだった。
村長は扉を開けて
「どうか、中にお入り下さい」と
今までの慣れ親しんだ口調とは
別の言葉にも驚いたが、
言葉よりも、その立ち振る舞いが
まるで武士のようで、
一瞬で周りの景色が
森から城内に変わってしまった
ような錯覚をおこした。
中に入ると
部屋の様子や雰囲気よりも
まっ先に目を奪われたのは
赤子だった。
部屋はすべて畳がひかれ、
6畳続いてから低く1段上がって
また6畳あり、
そこに小さな布団の中で
生後半年ほどの赤子が寝ていた。
赤子の両脇には、
男と女がこちらを向いて座っていて、
その凛とした姿に
私は両手両膝をついて
深く頭を下げた。
それは自然な行動であり、
彼らに会えば
誰もが迷わずそうするだろう。
特に男の方は、
見た目の若さと
かけ離れた気構えを
その目からすぐに読み取れたし、
ある特定の者が持つ
統率力のような非凡な能力を
まるで氣のように放っていて、
それに包まれる感覚もあった。
女の方は
まるでの陽に照らされた
シクラメンの花びらのように
淡い紅紫色の煙りで覆われている
と錯覚をおこすほど
不思議な光をまとっていた。