
貧乏学生だった頃(今でもビンボーだが)エアロフロートを使ってオーストリアに一ヶ月ほど滞在した事がありました。IIID
http://www.iiid.net/ が主催するデザインのサマーセミナー Vision Plus 1 に参加しました。ウイーンに一泊し、列車で長い時間をかけてオーストリアを横断し、ようやく到着したのはフォーラルベルク地方のドンブリンという街。イタリア、スイス、西ドイツと接するオーストリアの西端に位置する田舎街で、産業と言えばテキスタイルがあるくらいの小さな村です。
僕たちのチームのディレクターのDavid Sless
Professor David Sless
はオーストラリア人だったのでコミュニケーションの為の共通の言語は英語でした。ドンブリンの駅周辺をリサーチすることから始まりました。どんな年齢層の人たちが利用するのか?障害を持った人にとっての不具合はないか?この街の魅力をどう他の地方や国境を越えて来る外国人に伝えたらいいのか?利用者が駅構内を移動する時どうすれば?利用者がスムースにシームレスに知りたい情報を得るには何が必要なのか?
朝から昼過ぎまでのセミナーの時間はチームでリサーチを行ったり、議論したり、サイン計画やプレゼンの為の資料の製作、ムービーが同時進行で進んで行きました。
日によっては教授たちや、オーガナイザー、役所の人、村の人たちと近くの森を散策し、夕方に一緒に食事をしたりして、少しずつこの村の「くらし」を理解...というよりは感じて、体の中にしみ込ませて行きました。移動は鉄道。ドンブリン駅の周辺の地図も頭の中に少しずつ出来て行きました。
朝早くから食事の仕度をしてくれたペンションの親子、ひまわりを買いに行くといつも笑顔で迎えてくれたそばかすがカワイイ花屋の女の子、ソーセージがうまいクイックな店の親父とその常連達、僕が撮って来た写真を焼いてくれた写真屋さん(当時はデジカメが出始めで、持ってませんでした)、広場でジャグリングをやる若者やよそから来たフォルクローレのペルー人、週末になるとビオラやバイオリン・チェロを演奏する農夫たちなどなど。街の人たちはみな笑顔が素敵で暖かかった。
夕方になると、メンバーの一人のドイツ人クラウスがおんぼろフォルクスワーゲンに乗って来たことをいいことにメンバーみんなで国境をまたいで、西ドイツへロックのギグを観に行ったり、畑のど真ん中にあるClubへ踊りに出かけたり、David Sless も誘ってスイスの温泉に行ったりしました。
夜になるとペンションに戻ってみんなでテレビのニュースを見たり、たわいのないおしゃべりを楽しみました。
一週間くらい経ってからはメンバーの気心も知れて来たのと、経済的なことも考えて、郊外のペンションの一軒家を借りてルームシェアリングをはじめました。男性は一階に、女性は二階に。クラウスが買い出し係。毎朝駅付近で開かれる朝市で新鮮な野菜やハム、そして焼きたてのパンを買って来てくれたので、僕たちはレストランへ出かけるのはやめ、その日の当番を決めて、朝、昼、晩と食事を作るようになりました。僕が当番の時「すしを作ってくれ」とリクエストされましたがさすがに食材が(笑)。でもスーパーにいくと醤油やわさび、お米など、高かったけど売っていました。
午後は自由、みたいな日もあったので、僕はスケッチブックを片手に一人でうろうろしてメモをとったり、ドイツ語圏内のこの村で人々に道を訪ねたりする時に使っていました。しかし迷子になることも多々あり、国道をたまたま通りかかったスポーツカーにのった美人のイタリア女性に救助されたこともありました。

彼女が地方新聞の記者だったので僕たちのアクティビティは地元の新聞に取り上げられ、ちょっとしたスター気分にもなりました。
プレゼンの日が近づき分業がはじまり急ピッチで準備が進んで行きました。
僕の仕事はみんなから集って来る素材やテキストをムービーにまとめること。それからプレゼン村で暮らす人たちも含めての一般公開なのでわかりやすく親しみやすいシナリオを用意する、という事が決まり、Slessさんの命令でイラストもたくさん描きました(実はこれが一番楽しかった 笑)




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Photo:
最終日にはおばあちゃん、子供連れ、... 村の人々を集めてプレゼンテーション。

帰り道、再び列車でウィーンに戻り二日間のエアロフロートの飛行気待ち。本当はオペラや演劇も見たかったのですが、なにしろお金も底をついていたのでもっぱらセントステファン大聖堂の辺りをうろうろして時間をつぶしました。お店は早くに閉まってしまいますが、夜のウィーンの灯りは消える事なく、カップルや老夫婦がウィンドウショッピングを楽しんでいました。たまにはカフェでビールを飲みたかったので朝昼晩と通った怪しげなアジア系のホットドッグ売りのおばちゃんとはかなり仲良くなりました。
そんな二日間もかなり楽しかったのですが、そんな事をぼやいて Vision Plus の chair manであるPeter Simlinger

に電話したら最終日の夜にご夫婦でプラーターの観覧車に連れて行ってくれました。木造の古めかしい観覧車でした。歴史の説明をしてくれました。
学ぶ事の楽しさを教えてくれた夏の一ヶ月でした。