未曾有の地震が襲った3月11日は日本にとって、アメリカの9月11日に匹敵するような歴史的意味を残すであろう。

長く続いた揺れ

2011年3月11日14時46分、牡鹿半島東南東沖140km(北緯38度、統計142.9度)の深さ24kmを震源中央とするM9.0の海溝型地震*が東北関東地方を襲った。震源地は海溝辺縁隆起帯で、アウターライズ地震*に分類される。マグニチュード*は当初M(j)7.8とされたが、3度訂正されて、M(w)9.0となった。これは原爆480メガトンに相当するエネルギーであり、観測史上最大である。

地震の揺れは長く続き、いわき市では190秒にも及んだ。かつてない長さであるが、その原因は震源が3つの地域にわたって、南北400kmの広がりを持っていたためであろう。

気象庁の観測した最大震度は宮城県栗原市で7だったが、東北工業大が仙台市若林区でも7を記録している。また水平震度*も栗原市で2933gal、仙台市泉区で1853galと、阪神大震災の818galをしのいだ。

 東京では震度が5強だったが、九段会館と某スーパーの駐車場以外は倒壊した大きな建物はなかった。新宿や湾岸の高層ビルは長周期地震動*でしなったが(10分以上ゆれが止まらず)、安全性には問題なかった。ただしエレベーターが非常停止して閉じ込められた人が続出した。また、つり天井が少なくとも360か所で崩落した。

山手線ほか在来線、新幹線のすべてが運転を見合わせ、東京では300万人が帰宅難民となって、TDLや都庁舎、羽田空港ビル、築地本願寺などで夜を明かしたが、JRの駅は閉鎖されて利用できなかった。一方ケータイは半数でつながらなかった。

地盤の弱い千葉県浦安市、旭市、茨城県潮来市、埼玉県久喜市、東京湾岸の液状化*現象は顕著であった。

東北電力の女川原発は緊急停止した。13mの津波が押し寄せたが、13.4mの高台にあったので、被害はなかった。中部電力の浜岡原発はかろうじて大丈夫だった。

直後の停電は895万戸、断水は218万戸に及んだ。

地震波は地球を12時間で5周し、その間揺れ続けた。

度重なる余震

余震*は本震後1ヶ月で、震度5以上335回(内M6 70回、M75回)、80日の時点で500回を超えた。過去最高の北海道東沖地震の126回を軽く超えた。マグニチュード(M)が大きかったのは、11日15:06の三陸沖M7.415:15の茨城県沖M7.415:28三陸沖M7.5であり、震度が大きかったのは、12日3:594:52の中越地方の震度6弱であった。さらに15日には余震というより、余波として、静岡県に震度5強の地震があり、富士山の噴火の危険性も考えられた。全国14の火山で地震活動の活発化が観測されている。

 4月7日23時32分には最大の余震が観察された。岩手県沖の井戸沢断層を震源とするM7,4の逆断層型地震が発生した。地震速報は7.4秒後、その510秒後に仙台でゆれ。最大震度は宮城県栗原市と仙台市宮城野区の6。津波警報*が出されたが、幸い来ず。仙台変電所でショートがおこり、3発電所が停止したため、東北全県で400万戸が停電(1日後なお43万戸)。女川原発で1時間電源喪失、使用済み燃料棒プール*水漏れ。東通、六ヶ所村で非常電源に切り替えた。仙台市などで火事が発生し、東北新幹線在来線運転見合わせ。八甲田トンネル内に列車停止。死亡5人負傷283人を数えた。また、北海道電力からの送電線*が遮断された。この余震でいわき市に7kmの断層ができた。また、さらなる余震を警戒して、スーパーやガソリンスタンドには長蛇の列ができた。

 4月11日にはM6.1、最大震度5弱の余震が茨城県福島県を襲い、福島第一原発では冷却水ポンプが50分停止した。

後発性余震が福島県南東部から茨城県北部沖に集中していることが注目される。

 なお、3月9日1145分には本震とほぼ同じ場所を震源とするM7.3の前震があったことはあまり知られていない。

津波の惨劇

 資料A3の震度分布を見ると、東北地方のみならず関東地方にも震度が大きいところが見られるが、資料A4の被害と照合すると、震度と被害は比例しない。つまり今回の被害は地震自体より津波のほうが大きかった。津波の到達距離も貞観地震を抜いたと推定される。

15:21宮古市に、15:56岩沼市、仙台新港、15:57石巻市、仙台空港に最大の津波がおしよせ、滑走路が水没するとともに、航空機数機が破壊され、管制塔の屋上に多数が避難した。津波の速さは宮古市で110km/hと後に判明した。

津波の高さは八戸で7m、陸前高田で15m、大槌町で12.6m大船渡市で10.5m南三陸町で15.9m。女川町で14.8m、気仙沼市で13m以上、仙台市若林区で9.7m、いわき市で9.2mにのぼった。津波の遡上高(駆け上がった高さ)は大船渡市綾里で28.6m、宮古市で38.9mと過去最高級であった。