アメリカの郊外での暮らしに車はあったほうが良い。が、なくても暮らせないことはない。

あまりに田舎だと車がないと暮らせないだろうが、私が住んでいたサクラメントでは、少し遠いところでも、市内の路面電車やバスに自転車を積み込むことができたので、それを乗り継ぐことで、時間はかかったが概ね行きたいところへ行けた。道路も自転車専用レーンがしっかり作られているところが多く、自転車による移動は、時間はかかれど快適であった。

 

むしろ、私のような学生にとっては自転車の生活は便利なことも多かった。というのもキャンパスが広く、教室がある建物はキャンパスのあちこちに散らばっていたので、キャンパス内の自転車の移動は大変便利であった。車中心の人は、けっこう歩く時間を取られていたのではないか。駐車場から教室に辿り着くにも15分くらいかかる人もいたと思う。

 

自転車が最も活躍したのは、カリフォルニア州のエネルギー委員会というところへインターンをしていた時のことである。ここへは2001年の夏から半年ほど働いたのであるが、夏休みの2か月ほどの間はほぼ毎日働いた。職場はサクラメントの中心街にあり、当時住んでいたデービスから片道で25キロほど離れていた。デービスからサクラメントの間は、高速道路で結ばれていて、途中何もない原野のような風景が広がる。最初はバスで通っていたが、通勤中に高速道路を通過している際、ふと窓の外に目をやると側道にどうやら自転車専用道路のようなものがあるらしいことが分かり、自転車で通勤してみることにした。

 

25キロほどの距離であれば自転車でも1時間ちょっとでたどり着ける距離であり、それは、停車の多いバスと同じくらいの所要時間であるはずだった。往復50キロの自転車通勤は途方もないように思えたが、以前、学生寮に住んでいた時、ルーマニア人の留学生が、やはり往復50キロくらいかけてアルバイト先に行っていたことを思い出し、私もやってみることにした。このルーマニア人のエピソードがなければ、自転車通勤など最初から眼中になかったかもしれない。

 

(つづく)