「妊娠中は生ものを控えましょう」



そんな話は聞いていた。聞いていたが、いざ禁じられると無性に食べたくなるのが人間の性である。

「妊娠前にお寿司を爆食しておけばよかった……!」

お姫様クマ子は、まるで世界の終わりのように嘆いた。枕を抱きしめ、遠い目をしながら、お寿司が恋しいと呟く日々。ついには夢にまでお寿司が現れ、朝からテンションがガタ落ちするほどだった。



そんなお姫様を支えるのが勇者サメ氏の使命。
まずは情報収集とばかりに、たまひよの書や妊娠初期に向けられた秘伝の書、パパブックなるものなどの書物を購入し、片っ端から読み漁る。


……が、そこに書かれていたのは想像以上の試練だった。

「食べちゃダメなもの、多すぎないか……?」

ナマモノだけじゃない。カフェイン、アルコール、マグロ、ナチュラルチーズ、生ハム……。
お姫様の好物、ことごとく封印されている。

「じゃあ、私は何を食べればいいの?」

絶望する姫。勇者は剣を振るうように、調理器具を握りしめ決意する。

「ならば俺が、美味しく安全な料理を作ってみせる!」

お魚を食べたいという姫のリクエストに応え、勇者はブリしゃぶを準備。

お刺身で食べられるほど新鮮な切り身。
しかし、それを湯通しせねばならぬという無慈悲な試練……。

「こんなに美味しそうなのに、湯通ししなければならないなんて……」

勇者の手が一瞬止まる。だが、姫のため、心を鬼にして鍋に投入。ジュワッと広がる湯気、ふわっとした香り……。
勇者は片手にポン酢を握りしめながら、固唾をのんで姫の反応を伺う、、、

「美味しい!!」👸👸

お姫様の満面の笑み。それは勇者にとって、どんな勝利のメダルよりも価値があった。

ブリしゃぶのスキルを取得した🐟
こうして料理のスキルを増やしながら、姫を守るための戦いは続くのだった。

次回——勇者の異国出張クエストへと続く✈️