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2000年12月24日の夜に

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車を走らせていると、見覚えのある制服が目に留まる。
まだ新しいプリーツは、大きく舵を取るように揺れ、うしろには母親だろうか、少し飾った人が歩く。正確には制服ではなく標準服と呼ばれていたその服は、セレモニーだけ着ればいいものだった。
確か私が入学する10年くらい前までは女子高で、同じようにその制服を初めて着たのは14年前の4月だ。

その日、入学式を終えて駅に着くと、次の電車までは1時間半以上もあって、お昼を食べていなかった私たちは近くの食堂に入った。それでもまだ時間が余っていたので、母親が好きな駅前の喫茶店に入り、コーヒー1つと、まだブラックコーヒーが飲めなかった私はウィンナーコーヒーを注文した。



うちに着いたのは午後で、まだ日は高かった。
2日後から始まる英語の授業があって、近所の本屋に好きな辞書を探しに行った。その辞書は棚の一番上にある。花びらにとまった蝶を捕まえる時のようにそっと、優しく引き出して、それからケースを外した。品の良いフォントに適当なサイズの活字が並び、インクは墨だけで、シンプルに書かれていた。

買ったばかりの辞書をゆっくりとかごに入れると、なだらかな坂道を30分ほど自転車で上り、友達の家に着いた。



辺りが暗くなっていると気付いた頃、19時を過ぎていた。
病気で入院中の祖父をお見舞いに行くのが日課だったが、この日はすっかり時間を忘れていた。電話の向こうでは、「入学のお祝いをするから早く帰ってきなよ」と言われ、慌てて辞書をかごに入れた。
暗くなった坂道を急いで漕ぐ。
できるだけ早く漕ぐ。
国道に差し掛かろうとした時、横断歩道の信号は点滅を止め赤くなった。
それから今度は車道の信号が黄色く光り、目の前に車が現れ、
幼稚園のサツマイモや、脱走した日、電車を止めてしまった事、崖から落とされた事、小学校の壁の裏、買ってもらったボールがいつの間にか学校の倉庫に入っていて鍵がかかっていた事、三十三間堂、鱈の磯辺揚げ、家族旅行の事、あの喫茶店に、辞書はまだ読んでなかった。




辺りは静まり返り、遠くからサイレンだけが聴こえた。
5:30に鳴るアラームが高まる頃にはひっそりと静まり、
まだ朝早いガラスは向こうが暗い。
写し出された身体はあちらからすっかり見えるらしいので、
この年月を経た頭だけが虚像を造り上げる。
気付くと早々に焦点が飛んで行ったので、
雨で澄んだ空へ洗濯物を上げるといつもの時間。
徐々に対等になってきた空気を押してみれば抜けるような、
もう抜けているかもしれない。
浮かれてる。
これが切ない春なのです。
しばらくして後ろからいかにもあたたかい色、
その中をゆるやかにやってくる音、
遅れて流れるコーヒーの香り。
心地好い29年目の始まり、相変わらず。
出かけるとしましょう。
あさ、村田睦さんの声で始まる土曜のTFM。

午前はゆっくりとしてたけど、緊張でした。
続いて午後はもっとそうなって、いつもの場所にいたなぁ。

14:00なのに早すぎて、
夜が近かったです。

途中、土曜だから出てくる言葉を繰り返してたよね。

いけないわけじゃなかったんだ。