

【パラリンピック・馬術】不屈の精神 夢舞台つかむ 浅川さん(静岡)
(2012/8/23 07:54)胸から下まひ 競技歴40年集大成
29日にロンドンで開幕するパラリンピックの馬術競技に、唯一の日本代表として静岡市葵区の浅川信正さん(57)が出場する。交通事故の後遺症で胸から下がまひしながら、馬術に復帰した浅川さん。体への過剰な負担から入退院を繰り返したが、不屈の精神で夢の舞台にたどりついた。「これがラストランのつもり。馬術歴40年の集大成に」と意気込んでいる。
浅川さんは2005年、オートバイを運転中に事故に遭い、15歳から続けていた馬術競技の一線をいったんは退いた。復帰のきっかけは08年に香港で行われたパラリンピック馬術競技。現地観戦し、「自分にもできる」と再び心に火が付いた。
浅川さんは、足ではなく、舌を打ち鳴らす「舌鼓」で馬に指示を出す。手綱と特注のくらにバーを付け、左手で体を支え、右手で器用に馬を操る。
だが、足や背中の筋肉が働かず、スタッフの助けがなければ、馬に乗ることもままならない。馬上では体が激しく揺さぶられる。背骨への負担が大きく、筋肉が落ちた臀部(でんぶ)とくらがすれて炎症が生じる。10年の世界選手権後には臀部のけがが悪化して2週間入院。11年7月末までに3回の手術を重ねた。
代表内定後に新たに購入した「ロザード」(12歳、雌)と臨む本番。ロンドンオリンピックでの日本代表の活躍にも刺激を受けている。「世界中が注目している特別な大会。最大の努力をして入賞したい」との思いを日々強くしている。
パラリンピック後は、所有する静岡市内の乗馬クラブで指導に専念する考えだ。「手続きの面も含め、パラリンピックに出るためのアドバイスができたら」とも思い描く。
馬術競技で浅川さんが出場する種目は9月1、3両日に行われる。