Resistance to Despair

Resistance to Despair

絶望への抵抗

<注意!!

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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ケンブラックが再び説明に入る。

 

「まず、オレが武漢に行き、研究所付近の

警備兵をひととおり片づけてから施設内に潜入する。

そこで人造人間どもの動作に関する情報を探り、

必要なアイテムもしくは資料だけ持ち出してから、

タイミングを見計らって敷地ごと破壊する。

おそらくそれより前にボス格の2体が

この島付近に攻め込んで来るだろうが、

美鈴と悟飯で蹴散らしてもらう。

必要であれば事前に準備運動がてらに

組み手でもしておくといいだろう。

 

もっとも、今回のオレの見立てでは、

美鈴ほどの実力者が手こずるような相手には

思えんがな」

 

英玲と品好にはこのままガレージに留まるか、

あるいは半導体工場付近に移動し、

戦場から離れた場所で状況を見守り、

万一の時にのみ救護に駆け付けることを提案した。

 

「じゃあ、行ってくる」

「お気を付けて」

 

 

 

ケンブラックが武漢に向かって

飛び立って行った2時間後、

ガレージの軍事用無線に緊急連絡が入った。

 

「人造人間と思われる男二人が新北市沿岸部の

ラヴァーズブリッジに現れた模様です!

付近の住民にはすでに内陸の山間部へ

避難してもらっています」

 

「了解、直ちに急行します!」と悟飯が応えた。

 

「先ほどケンブラックさんが立ててくれた計画通り、

僕と美鈴さんで闘ってきます。

大統領と品好さんは避難先の

住民の援護をお願いします」

 

「分かったわ。

でも、二人とも危なくなったら絶対に逃げるのよ。

いいわね」

 

こうして一同はそれぞれガレージを後にした。

 

 

移動中、美鈴はあることが気になった。

 

「妙ですね。

どんどん現場には近づいているはずなのに、

敵の気配がまるで感じられない…」

 

「美鈴さん。

おそらくですが、奴らの生命力とパワーは

機械によってコントロールされています。

よって、我々のような純粋な人間や妖怪と違って

いわゆる精気というものはないんです」

 

そういうことかと美鈴は納得した。

気配を感じ取れないのであれば、

相手の動きを直接目で追うしかない。

 

それは気配を感じ取りながら

闘うことに慣れた身にとっては

かなり久しぶりのケースだった。

 

現場に到着した時にはラヴァーズブリッジも

周辺の車も港湾部の船も全て破壊されていた。

 

 

「そうか、ここの住民が国外へ逃げられないように

あらゆる経路と移動手段を潰しにかかったな。

クソッ…!」

 

怒りの握り拳を作る悟飯の姿を見た美鈴が

続いて視界にとらえたのは、

軍服を着て銃を持っている太り気味の男と

スーツ姿の中高年風の男だった。

 

 

 
「あの二人が人造人間?」と
美鈴が悟飯に確認する。
 
「そうです。
軍服姿で銃を持っているのはジョンオン、
スーツ姿の男はキンペーと呼ばれています」
 
やはり静止状態では戦闘力を推し量ることは
美鈴でも不可能だった。
 
「よく来たな、孫悟飯。
貴様らの息の根を止め、台湾と半導体工場を支配し、
この世界を我が物にする日が
とうとうやってきたのだ」
 
キンペーが口を開いた。
 
「許さんぞ。
お前たちがやっていることは、
台湾の健全な繁栄を踏みにじる
私利私欲な侵略戦争だ!」
 
「フン、貴様らが大人しく人民統一に従っていれば
我々もここまで手荒なことをせずに済んだのだ」
 
70年前と変わらぬ中国共産党の略奪思考に
美鈴の感情には呆れと憤りが混じっていた。
 
「相変わらずあなた方は自国より美しい資源や
優れた文明、そこで豊かに暮らす人々の平和
強引に奪い取ることしかできない
人間の中でも最低な民族のようですね。
そして、科学さえも凶器に変え、
おぞましい人造人間を生み出した…!」
 
「何者かは分かりませんが、
ずいぶんでかい口を叩きますね、あの女」と
ジョンオンがキンぺーに耳打ちするように呟く。
 
「ムッ…人間のデータを大きく超えた
エネルギー…!
まさか貴様、あの時北京や上海を火の海にして、
“黒龍”と呼ばれた妖怪か何かか⁉」
 
体内に内蔵されているパワーレーダーから
驚異的な数値を察知したキンぺーは動揺した。
 
「…まあ、その生まれ変わりのようなものとでも
言っておきましょうか」
 
~<開発基地壊滅>へ続く~

<注意!!

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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「さて、それぞれの行動計画の前に、

一応確認しておこうか。

今回なぜ敵がわざわざ人造人間を擁立させてまで

この台湾に攻め込んできているのか、

理由と目的は分かっているな? 美鈴…」

 

「…え?

私は中国共産党一派が台湾の人々を滅ぼし、

土地を支配しようとしているとしか…」

 

「それは、その前の段階である目的を

成し遂げてからのことだ。

単純に台湾人を全滅させたければ、

とっくに核兵器やミサイルを数十発と

撃ち込んでいたはず。

だが、敵にとってはどうしても無傷な状態で

先に手に入れたいものがある」

 

「割り込んですみませんが、

それは半導体工場のことですか?」と

悟飯が間に入る。

 

「ああ、その通りだ。

さすが事情をよく理解できているな」と

ケンブラックが悟飯を褒めた上で、

美鈴に続きを説明する。

 

 

「半導体は我々が住む幻想郷では

北東の都付近に普及が限られているが、

この外来世界にとってはPCや通信機器、

軍事衛星用部品に至るまで、

現代の経済生産や国際競争力の鍵となっている

最重要アイテムだ。

そして、その半導体の最先端モデルについては

9割近くが台湾国内の工場で生産されているらしい」

 

「…となると、敵の狙いはそのハイテク満載の

工場を乗っ取った上で、

人工知能と殺傷能力を併せ持ったロボットを造り、

部下として育成し、

台湾全土を含め、この世界の

あらゆる資源を独占支配することが

最終目標であると…」

 

「…そういうことだ。

この話、事前に大統領から聞いてなかったのか?」

 

「ごめんなさい、ケンさん。

幻想郷というのがどういう世界なのかは

分かりかねますが、

そこまで前もってお調べになっていたとは

存じてなかったものですから…」と

英玲が詫びた。

 

「なに、詫びには及ばんさ。

オレがまだ日本で暮らしていた時に、

中華人民が昔からいかに卑劣で醜い民族だったかを

たまたま見抜いただけだ」

 

「そういえば、生前の父も僕が学生時代の頃に

同じようなことを言っていました。

『奴らはいずれ必ず台湾海峡に侵入し、

太平洋への進出を狙いに来る』と…。

ただ、台湾防衛の意志を受け継いだはずの

僕らの力不足により、

人々の恐怖と絶望の影が間近に迫ってきていて、

このままだと正直言ってジリ貧です」

 

悟飯は俯き加減に話した。

 

「お前さんの父親の名前、何ていうんだ?」

「孫…悟空です。

3年前、重度の新型コロナウイルスによって、

亡くなりました」

 

「孫悟空…聞き覚えのある名前だな。

そうか、確か数年前に台北で行われた

格闘技世界大会の優勝者だったかな?」

 

「あ…はい、よくご存じで。

ただその後、香港方面へ試合遠征中に

突然倒れたと聞きました」

 

「…どこか不自然だな。

いや、こんな時に不毛なことを疑っても

意味はないが、

死因がコロナウイルスというのが

どうも引っ掛かる」

 

新型コロナウイルスは中国・武漢市の

病原菌研究所で誤って排出されたのがきっかけとされ、

やがて世界中に感染拡大したが、

台湾では迅速な予防と対策が功を奏し、

感染被害は最小限にとどめられたという。

 

「自分も国の防衛で頭がいっぱいで、

あまり深く追及する余裕もありませんでしたが、

例えば共産党に加担する左翼一派が

意図的に飛行機や現地の滞在施設に

ウイルスを持ち込んだ可能性も

ゼロではないと思っています。

いくら父がどんなに強くても、

さすがに病気には勝てませんから…」

 

「なるほど、真相は不明なままか…。

しかし、厳しく冷たいようで悪いが、

そろそろ作戦会議の本題に戻らないとな」

 

そう言ってからケンブラックは

1枚の書面を取り出した。

 

品好がガレージ内の複合機で書面をスキャンし、

プロジェクター画面に映し出す。

 

「オレはこういう作業が不器用で、

図のクオリティは今一つだが、

念のため、会議用データとして

保存しておいてほしい。

その辺はあんた方のほうが得意分野だろう?」

 

「ええ、分かりました。

とても助かります。

手書きの図も見やすいですよ」と

英玲が褒めた。

 

~<それぞれの始動>へ続く~

<注意!!

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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「ケンさん、少し話が長くなるかもしれませんが、

聞いてもらえますか?」

 

 「ああ、この前の試合で

あんたが咲夜と合体した時に、

出生や紅魔館に来た経緯は

紫からも少しは聞いている」

 

「それなら相談しやすくて助かります。

実は、近日中に紫の例のスキマ空間で

台湾海峡へ連れて行ってもらって、

英玲さんや母国の人たちを助けたいと

思っておりまして、

できれば東アジアで育った人間であるケンさんにも

ぜひ同行をお願いできないものかと…」

 

「…確かに、この中ではオレが一番

幻想郷の在住履歴が浅いけどな」

 

ケンブラックは少々考え込んだ。

 

咲夜との結婚を機に幻想郷への移住を決断した際、
外来世界の人間とは決別したはずの自分が

今更戻る意味はあるのか。

しかも、相手はセルよりはるかに

パワーが劣ると思われる人造人間。

ただ、美鈴がかつて幼少時代の咲夜を

武術面で鍛えた師匠でもあることを

知っているせいか、

他人事と片付ける気にはなれなかった。

 

「さすがに気付かなかった。

咲夜よりも何十年も長く

この幻想郷で過ごしてきたはずのあんたが

そこまで生まれ故郷に誇りを持っていたとは…。

よし、オレも一緒に行こう。

ただ、今回は表立った闘いはせずに、

現地の情勢や中国の工場周辺を調べることに

できるだけ専念する。

あくまでも悪の根源を断ち切るのはあんたの役目。

それでいいな?」

 

「分かりました。

ありがとうございます。

後ほど紫にも伝えておきます

 

美鈴は少しだけ笑顔を見せながら答えた。

 

ケンブラックが今度は咲夜に話しかける。

 

「…というわけで、

また一つ週末の予定が増えてしまった。
美しい自然への観光目的なら

君も一緒に連れていきたいところだが、
今回はあの時の東京よりも、

おそらくもっと汚れた世界だ。

毎度心配かけてすまないが、待っていてくれるか?」

 

「ええ、大丈夫よ。

とにかく、二人とも無事に帰ってきてね」

 

咲夜は優しい微笑みを浮かべながら答えた。

 

 

 

一週間後、美鈴とケンブラックは

紫のスキマ空間能力を借り、

台湾海峡に浮かぶ島に降り立った。

 

 

「どこだ、この島は…?」

 

「台湾領地の一つである馬祖島です。

ほら、向こうに中国本土が見えるでしょう」

 

「…ああ。しかし、いくらオレが

5年前に向こうの沿岸都市の人間どもを

大方粛清したとはいえ、

もし、この島でその大統領一味と

待ち合わせしているというのであれば、

近すぎて危険だと思うが…」

 

「それなら大丈夫です。

英玲さんも生き残った軍の人たちも、

敵がどういうルートで侵入してくるかは

あらゆるケースを想定して

把握できているはずですから」

 

美鈴はケンブラックに

自身が知っている限りのことを説明し、

スキマ空間を閉じて飛び立った紫を見送った後、

3つの人間の気配を感じた方向へと向かった。

 

 

 

数分後、先方が連絡拠点としているガレージで
ケンブラックが
美鈴から紹介を受けた人間は、

大統領の蔡英玲とその娘である品好(ビンユー)、

そして、防衛部隊の若きリーダーである

孫悟飯であった。

 

品好は過去にケンブラックと直接面識があり、

英玲と悟飯も当時のケンブラックが

破壊と殺戮ありきの極悪人ではないことを

理解していた。

 

「お久しぶりです、ケンさん。

美鈴さんがどんな援軍を連れてきて下さるのかと

思っていたら、あなただったとは

正直少し驚きました」と品好が話しかけてきた。

 

「ああ、確かに久しぶりだな。

あの時偶然出会った台湾の者と

こうして再会するのは

普通ならなかなか有りえんことだ。

過酷な状況らしいが、今まで無事でよかった」

 

うっすらと笑みを浮かべながら話す

ケンブラックの表情を見て、

美鈴は咲夜が選んだ夫がこの人で本当によかったと

改めて思った。

 

品好に続いて、英怜がケンブラックに話しかける。

 

「この度はよく来てくれました。

あなたがケンさんですね。

当時のことは娘から詳しく聞かせてもらいました。

今回美鈴さんと一緒に

我が国の防衛にご協力いただけること、

とても頼もしく思っております。

よろしくお願いします」

 

「こちらこそ。

…だが、オレはもうこちらの世界の住人ではない。

よって、今後お堅い言葉は使いっこ無しだ。

いいよな? 大統領さん」

 

ケンブラックらしく、

静かながら威勢の良い返しだった。

 

~<敵の狙い>に続く~