Resistance to Despair

Resistance to Despair

絶望への抵抗

<注意!!

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

 

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ケンブラックと十六夜咲夜による

雪上での熾烈な格闘試合から数か月後、

八雲紫を経由し、紅魔館の紅美鈴宛に

外来世界から手紙が届いた。

 

差出人は蔡英玲(サイ・エイリン)という

台湾の女性大統領とのことである。

 

手紙を読み終えるなり、美鈴はパチュリーの

図書館に向かった。

 

「珍しいわね。

あなたがここに来るなんて…」

 

「実は、外来世界の東亜情勢について、

あれからどうなっているのか

調べたいと思いまして…」

 

「まあ、情報や文献がゼロではないけど、

向こうの世界がそんなに気になる?」

 

3年前にレミリアたちが東京に出向いた際に

ケンブラックと知り合い、

紅魔館の拠点移設が一時的に計画されたものの、

妖怪出身であり、人間の咲夜よりも

幻想郷に馴染みが深いはずの美鈴が

なぜこだわりを持っているのか、

パチュリーには少々不思議に思えたようである。

 

「紫は念のためにケンさんにも話してみると

言っておりました。

確か今日は仕事が終わったら

紅魔館に来ると咲夜さんから聞いておりますので、

後でディナーが終わってから

皆様にも事情を共有していただければと

思っております」

 

そう話す美鈴の表情は

いつもとどこか違っていた。

 

仕事終わりで紅魔館に来た

ケンブラックを交えての夕食も一通り終え、

咲夜から食後の紅茶が運ばれてきたところで

美鈴は東亜情勢の話を切り出した。

 

当時のケンブラックによる東亜エリアの

人間粛清計画により、

日本の各都市部をはじめ、

中国も人口が集中していた

海側の都市の大部分は壊滅し、

南北の朝鮮は半島ごと消滅した。

しかし、内陸の山間部で難を逃れた住民の一部から

不穏な動きが現れ、

再び怪しげな軍隊を設立させた上で、

美鈴の生まれ故郷である

台湾の侵略支配を狙っているというのである。

 

「それは妙な話だな。
確かに台湾には日本が大震災の時に
ずいぶん支援を受けたし、
個人的にも戦闘の合間に
貴重な休養場所として世話になったこともあって、
破壊は避けた。

それに、もしものことを考え、

オレが幻想郷に移る前に

アメリカのホワイトハウスに出向いて、

当時のトラーヴ大統領に

沖縄の米軍基地をさらに拡張し、

台湾を護ってやるように指示しておいたんだがな…」

 

「その東亜に駐留していた米軍が

ほぼ全滅させられたらしいんですよ。

中国の武漢で新たに製造された

二人の人造人間によって…」

 

「人造人間だと⁉

幻想郷で霊夢が破壊した

あのセルとかいうバケモノで

最後じゃなかったのか?」

 

「ええ、私も製造元であるドクター・ゲロが

この世にいない以上、

人造人間はもう存在しないものと

認識しておりました。

しかし、先程パチュリーさんの図書館で

調べていて、

恐るべき事実が分かったんです。

 

セルをはじめ、大部分の人造人間が

製造された香港郊外の研究所は

以前あなたたちが叩き潰したようですが、

ドクター・ゲロの子息にあたり、

独裁的な共産党との結びつきが強い

キンペーが武漢に資材を集め、

恐ろしく危険な研究を再開したと…」

 

「そんなモンスターが造られては

さすがの米軍といえども歯が立たなかったわけか。

しかし、生き残った者同士で争うとは

外来世界の人間はつくづく愚かなものだな」

 

ケンブラックにとっては不可解な事実を

聞かされているような気分だった。

 

~<美鈴の故郷とプライド>に続く~

今回はケンブラックと咲夜による

幻想郷ならではの夫婦愛がテーマの一つでした。

 

しかしながら、生まれてこの方

独身街道まっしぐらのアラフォーな作者本人が

リアルな夫婦生活を描けるはずは当然無く、

「そんな綺麗事で成り立つわけがなかろう」という

ツッコミは覚悟の上でございます。

 

おまけに決戦の舞台を雪上にしたことで、

ドラゴンボールファンからは

「さては某映画のバトルシーンを持ってきたな」と

思われることでしょう。

 

ただ、今回のシリーズを描き上げている最中に

ドラゴンボール(原作)の鳥山先生が急逝されたのは

大変大きな衝撃でした。

この場を借りてご冥福をお祈り致します。

 

さて、今回は咲夜にサイヤ人風の戦闘服を

着せてみましたが、

原作のユニフォーム(メイド服)も

青と白を基調としているので、

スンナリおさまった気がするし、

髪も銀色なので、

雪景色によく映えそうなイメージですね。

 

これだけ美人で相手に尽くすタイプの

嫁さんとなると、

かつて外来世界で『世界の皇帝』と名乗っていた

さすがのケンブラックも

“超皇帝(スーパーエンペラー)ロゼ”に

変身しない限り、

心を鬼にすることは難しいでしょう。

 

そう、なぜならゴクウブラック(ザマス)と違って

彼も人間だからです。

 

 

ちなみに、咲夜の新必殺技である

“ブルー・バレッツ”ですが、

ブルー(blue)=青、

バレッツ(bullets)=弾丸(複数形)ということで、

B'zの人気曲の一つである

『さまよえる蒼い弾丸』からヒントを得ました。

 

 

コロナ禍のピークだった頃までは

12話を越える長編でも大概3~4カ月くらいで

まとめられていたのですが、

仕事の忙しさや自身が行っているライブ活動が

コロナ禍前に戻りつつある今は

これぐらいのボリュームがベストであると言えます。

 

なので、次回作もなるべく短編で、

例えば台湾出身の妖怪という設定にしてある美鈴が

母国で友好関係にあった人間を守るために

紫の能力を介して外来世界に一時的に戻り、

C国共産党をブッ倒しに行くようなシーンを

描けたらと思っております。

(もっとも現実の台湾有事ほどリアルかつ

深掘りするつもりはありませんので、あしからず)

 

日本国の社会秩序を崩壊させた岸〇とかいう

ドアホ首相やそれを上回るクズっぷりの野党議員、

そして各都道府県知事の相次ぐ悪政により、

周辺諸国からもナメられまくり、

あからさまな不法滞在外国人が

悪ふざけし放題で腹立たしい毎日が続きますが、

これからもどうぞよろしくお願い致します。

 

2024年3月 Ken(鍵)

<注意!!>

当作品は「東方Project」と

「ドラゴンボール」をモチーフとした

二次創作小説です。

原作とは設定が大きく異なります。

 

以上をご理解の上ご覧下さいませ。

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部屋の扉を軽く2回ノックする。

 

「咲夜、入って大丈夫かい?」

「どうぞ」

 

咲夜は部屋着姿でベッドに腰かけていた。

 

「成り行きとはいえ、

昨日は随分痛めつけてしまってすまなかった。

どうもロゼになると

相手を叩きのめす本能が働くのか、

人格がより好戦的になってしまってな」

 

「いいのよ。

むしろ最後は全力で向かってきてくれたから

負けても悔いはないわ。

忙しい中、試合を引き受けてくれてありがとう」

 

「そう言ってくれると助かるぜ。

それにしても、パチュリーやアリスのウデは

すごいな。

傷だらけだった君の身体を

一日でここまで目立たなくできるとは…」

 

「本当はもうほとんど普通に動けるけど、

お嬢様が大事をとって今日まで休ませてくれたのよ」

 

ケンブラックは咲夜のデスクチェアーを借り、

腰を下ろしてから本題を切り出した。

 

「…それで、どうだ。

まだオレや霊夢とともに

闘いの最前線に立っていたい気持ちは

変わらないか?」

 

「いいえ、昨日試合してみて少し考えが変わったわ。

私の本来の役目はあくまで

この紅魔館の従者(メイド)として

お嬢様や妹様の支えになること。

そして、外来世界の東京でお嬢様と同盟を結んだ

今の私の夫であるケンさんを

これからも愛し続けること。

だから、もし今後新たな強敵が現れたとしても

相手と直接対峙することに拘りはしないわ」

 

面と向かって「愛してる」と言われると

ケンブラックは顔が紅くなってしまう。

 

「それなら良かった。

オレ、今度はレミリアの修行相手になろうと

思ってさ…」

 

「ケンさんがお嬢様の?」

 

「ああ。

より正確に表現するのであれば、

彼女の戦闘力をさらに引き上げるきっかけを

促すということさ。

フランもそうだが、本来なら二人とも

オレたち人間よりもはるかに身体能力的には

優れているはずだ。

甘さや過信さえ無くなれば、例えば霊夢にだって

遅れを取るわけがない」

 

「ケンさん、ひょっとして

今度はお嬢様と霊夢で対戦させるつもり?」

 

「まあ、いずれな…。

それに、オレが直接仕向けなくても

レミリアが絶対的自信とプライドを取り戻せば、

そのうち本人が意欲を持つかもしれん」

 

「…なるほどね」

 

「その上で、君と過ごす時間をもう少し増やそう。

オレだって本当は修行して強くなることより、

愛する嫁の手料理をいただいている時のほうが

はるかに幸せだ」

 

自分の嫁以外にはこっ恥ずかしくて

とても口に出せるセリフではなかった。

 

咲夜がそっとケンブラックの手を取る。

 

「これからも、ずっとそばにいてくれる?」

「ああ、もちろんさ」

 

優しく咲夜を抱き寄せながらケンブラックは答えた。

 

「ケンさんの弱点、見つけたわ」

「弱点…?」

 

「嫁の愛情には逆らえないところ」

「…この場では認めるが、絶対に他言禁止な」

 

紅くなったケンブラックの顔が冷めるには

しばらく時間を要した。

 

<完>