9月もあっという間に過ぎ去り、明日からはもう10月です。
秋もすっかり深まってきました。
ちょっと間をおいてしまいましたが、今回も先日書いたJR北海道の貨物列車脱線事故 に関連した内容になります。
今回の脱線事故では、脱線した車両が貨物列車であったこともあり、幸い人的被害はなかったわけですが、これが乗客を乗せた高速列車で起こったらどのようになっていたでしょうか。
今回の脱線事故では、事故そのものの被害はそれほど大きかったとは言えないとしても、その後の調査や対応でJR北海道の信頼はすっかり失われてしまったと思います。
函館市に近い七飯町のJR函館線(函館本線)で19日に起きた貨物列車の脱線事故現場で、レール幅の補修が放置されていたことをきっかけに、レールの異常の再点検を行った結果、安全管理への杜撰な体制が改めて浮き彫りになりました。
これは、一歩間違えば大事故にもつながる可能性をも秘められているということです。
以前、このブログでも安全管理についてはいくつか書いてきました。
2年前の1月26日に起こった東京ドームでのコースター転落事故が発生したとき、“安全管理と“ハインリッヒの法則”
“というタイトルで「ハインリッヒの法則」について紹介しました。
その後も“杜撰な安全管理! 中国高速鉄道事故で露呈
”、“夜行ツアーバス事故 杜撰な安全管理
”などでも安全管理の重要性について触れてきました。
そして今年も、7月24日にスペイン北西部で起きた高速鉄道での列車脱線事故で78名の方が亡くなっています。
ところで、安全に関する法則として、アメリカ人安全技師“ハインリッヒ”が発表した『1:29:300』という法則があります。
一般的に『ハインリッヒの法則』と言われているものです。
これは、『1の重大災害の下には、29の軽症事故があり、その下には300の無傷事故がある』という意味で、労働災害の事例を分析した結果から導き出されたものです。
これをもとに『1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景に、29件の軽傷事故と300件のヒヤリハットがある』という警告として、安全活動の中では多くの現場で採り上げられている言葉です。
この数字はともかくとして、この統計解析が与えた教訓は、数字の割合ではなく、不安全な状況に対する対処姿勢にあるといえます。
すなわち、重軽症の30件の解析だけが大切なのではなく、全事故の原因となった330件をなくすること、事故への潜在的危険(不安全状況)をなくすることが重要であるということを示唆しています。
ここでまた今回の脱線事故を振り返ってみると、レールの異常箇所が267件にも達していたなど、JR北海道のあまりにもお粗末な保守管理が横行していた実態が浮かび上がっています。
これに対し、「引き継ぎがなかった」「教えられたが、覚えていない」など、多くの人命を預かる鉄道会社の保線担当者の声としては、信じがたい言葉です。
かっての国鉄時代にあっては、こんなことは考えられなかったと思います。
点検で異常を把握しておきながら、それを放置していたというのは本当に理解しがたく、いつ何が起きてもおかしくない状況です。
今回の調査で異常が確認された267箇所の内、異常が多かったのは函館線が65箇所、宗谷線が51箇所、留萌線が43箇所、江差線が35箇所などです。
函館線は函館から旭川までと距離が非常に長いこともありますが、延長距離の短い留萌線と江差線は理解しがたいところです。もちろん特急列車が数多く走る函館本線で、これほどの異常個所が確認されたとは由々しき事態です。
江差線については、2年半後の新函館までの新幹線開業を前に、江差線の一部・津軽海峡線から離れていく部分は来年5月で廃止される予定になっています。
これも関係しているのでしょうか。
それにしても、JR北海道の保守管理担当者の士気の低下には呆れざるを得ません。
高水準の安全確保が求められる北海道新幹線の新青森―新函館間の開業は2015年度でもうすぐです。
JR北海道の現状では心もとなく、それまでには不安が払しょくされているのでしょうか。
安全確保が出来ているのでしょうか。
1987年に国鉄が分割・民営化された時点でJR北海道は他社に比べ不利な条件に置かされてきました。
厳しい経営環境のもとで運営しているのは重々理解しているところです。
ただ、次々と新たな問題を引き起こし、最近の度重なるトラブルについては、取り返しのつかないところまで追いつめられてしまうのではと危惧しています。
長くなったので今日はここまで。
参考過去記事:
安全管理と“ハインリッヒの法則”
杜撰な安全管理! 中国高速鉄道事故で露呈
夜行ツアーバス事故 杜撰な安全管理