7月23日の中国高速鉄道の脱線事故は、6月30日に北京・上海間を最高時速300キロ、最短4時間48分で結ぶ高速鉄道が開業して間もないばかりだっただけに、衝撃的な出来事でした。
中国は、ここ数年の間に、猛スピードで高速鉄道網の建設を進めてきました。
経済成長が著しい中国が、国威をかけて進めてきたはずの高速鉄道網でしたが、この事故をきっかけに運行管理や安全管理の面でのぜい弱性が一気に露呈した感じです。
今日は、この中国の列車事故について、安全管理の世界では有名な“ハインリッヒの法則”との関係から触れてみたいと思います。
ハインリッヒの法則については、1月30日に東京ドームでコースター転落事故が起こったときにも、「安全管理と”ハインリッヒの法則” 」というタイトルで一度書きました。
こちらの方も読んでいただければと思います。
『ハインリッヒの法則』というのは、安全に関する法則として、アメリカの安全技師であるハインリッヒが発表した『1:29:300』という法則のことをいいます。
これは、『1の重大災害の下には、29の軽症事故があり、その下には300の無傷事故がある』という意味で、労働災害の事例を分析した結果から導き出されたものです。
この数字はともかくとして、この統計解析が与えた教訓は、数字の割合ではなく、不安全な状況に対する対処姿勢にあるといえます。
すなわち、重軽症の30件の解析だけが大切なのではなく、全事故の原因となった330件をなくすること、事故への潜在的危険(不安全状況)をなくすることが重要であるということを示唆しています。
ここで、今回の中国の高速鉄道事故で見てみたいと思います。
多数の犠牲者を出した今回の高速鉄道事故ですが、何故このような事故が発生してしまったのか?
防ぐことが出来なかったのか?
日本の新幹線は、1964年の開業から50年近くたちますが、これまで乗車中の乗客の死亡事故はまだ1件も発生していません。
それはすごいと思うと同時に、たとえ万が一であっても、重大事故は絶対に起こってはならないとも思うわけです。
何故なら、高速で走っている列車がひとたび事故を起こしたら、どのような状態になるか想像できるからです。
例え、どんな大きな地震が発生したとしても、それは理由にはなりません。
それなりの安全対策をして走行するのが、運営会社としての義務でもあり、責務でもあります。
その点では、3月11日のマグニチュードM9の東日本大震災の超巨大地震においてさえ、時速300キロの営業運転をする東北新幹線の”はやぶさ”は、怪我人はもちろん、大きな損傷もなく停止したことは絶賛に値すると思います。
それに対し、今回の中国の事故については、何故あのような大事故にまでなってしまったのか?
不思議です。いくらでも疑問が湧いてきます。
その原因の究明が急がれるところを、今度は追突し転落した事故から1日半後には、事故があった区間で列車の運転が再開されました。
事故原因が特定されないまま、事故原因の調査も進まないうちに、重機で切断するなどして撤去作業が優先されるなど、日本では、到底考えられないことだと思います。
これが、中国の体質なんでしょうか?それとも鉄道省だけの問題なんでしょうか?
というところで、次回に続きます。
参考過去ブログ: 安全管理と”ハインリッヒの法則”