昨年9月の米リーマン・ブラザーズの経営破たんにより、米国のサブプライムローンが焦げ付き、これが発端となって100年に一度といわれる世界的な不況となりました。
国内の有力産業である自動車メーカー、電気メーカーもその煽りを食い、昨年末から大幅な生産減を余儀なくされています。今年半ばになって底からやや持ち直してきたかと思われるものの、今春はこれらの大手メーカーを中心に操業の一時停止が相次ぎました。


これに対しては、政府が休業時の所得補償をする「雇用調整助成金」の給付条件を緩めたため、それまで月に数千人だった助成金の申請件数が、今年3月から4月にかけてなんと200万人以上に激増したのです。この雇用調整助成金の給付条件の緩和が、人員削減を防ぎ、休業による調整に踏みとどまったというケースも多いようです。


6月の完全失業率が5・4%まで上昇して過去最悪の5・5%に迫る中、実際の雇用情勢は数字よりもはるかに深刻だということは明らかです。解雇せずに一時休業などで雇用を維持する企業に国が給付する雇用調整助成金で、「隠れ失業者」の顕在化を食い止めているだけです。
助成金がなければ、解雇されていた可能性があり、失業率が過去最悪となった平成14、15年に
比べて、現在は適用条件の緩和により多くの失業が食い止められており、実態はすでに史上最悪を超えているものと思われます。


隠れ失業者の問題は、今後の雇用政策にも大きな影響を及ぼします。助成金は、事業主が雇用保険三事業率として全額負担している保険料が原資となっていますが、実質的には国の税金も投入されており、今後救済し続けていくと国民にかかる負担も大きくなるのです。
また、過度の公的支援は、経済の構造改革や効率化を阻害する要因にもなり、衰退事業・産業を延
命させることは本末転倒で、雇用の受け皿となる成長産業への転換を促さないと、成長シナリオは描けないでしょう。


雇用をどう守り、創出していくのか。30日の総選挙では、各党の示したマニフェストの真価が問われることになり、雇用対策も国民の政権選択の一つとなっていると思います。次期政権がどのような政策を取り、実行していくのか。大きな期待がかかっています。