有給休暇の取得義務化に向けて政府が動き出したことからわかるように有給休暇取得を促進する流れが加速しています。
しかし、多くの中小企業では「有給休暇はあってないようなもの」、規定することで「権利
意識が芽生えてしまうのが恐い」などの理由できちんとルール化していないのが現状です。
その為、実際に従業員から有給休暇を申請されて対応に困ったり、無理な申請をされて
トラブルになるケースが増えています。
今後やってくる「有給休暇は取得して当り前」の時代に備えて、会社が後手に回らないよう あらかじめルール化し、いつでも対応できるような体制を整えることが必要です。
【これだけは定めておきたい有給休暇のルール】
①申請時のルールを定める
有給休暇取得についてのルールがないと従業員が当日急に有給休暇を使うといって休んだり、旅行に行くからと何日も連続で取得したりと会社としては対応に困ってしまいます。
そのため、あらかじめ取得までの手順をルール化しておく必要があります。
(規定例)
・有給休暇の取得を希望する者は取得希望日の前までに所定の申請書を提出するものとする。
・原則として当日の取得申請は認めない。
ただし、病欠など会社がやむを得ないと判断した場合は取得を認めることがある。
②有給休暇の管理方法を決める。
有給休暇は原則として入社日から6ヶ月経過し、8割以上出勤した従業員に付与するものです。
そのため、従業員ごとに付与する日が異なるので個々に管理することになります。
一方で従業員が多くなると管理が大変なので会社が基準となる日を設定し、
その日に全員一斉に付与するという方法も認められています。
しかし、一斉付与の場合、設定した日において6ヶ月を経過していない従業員にも
前倒しで付与する必要があるというデメリットもあります。
会社にとってどちらが良いか選択し、決めておく必要があります。
③いつ付与した有給休暇から消化するか決める。
有給休暇にも時効があり、2年経過すると消滅します。
しかし、有給休暇は毎年付与されるのでいつ付与したものを消化しているのかを決めていないと時効の判断が難しくなります。
そのため、「先に付与したものから消化する」という定めをしておくことをおすすめします。
(規定例)
・有給休暇の有効期間は2年間とする。ただし、この場合は新しく付与されたものから優 先的に消化していくものとする。
④退職時の有給休暇の処理についてルール化する
有給休暇のトラブルで一番多いのが退職時の処理についてです。
従業員が退職する際、有給が〇○日残っているので全部消化して辞めたいといった要望が
よくあります。
しかし、会社としては引き継ぎの期間が必要なので休まれたら困るという理由から付与するしないでトラブルになることが多いです。
どちらの主張も正しいこともあり、トラブルになってからでは対処が難しいのが現状です。
そのため、あらかじめ退職時のルールを定めておくことをおすすめします。
(規定例)
・従業員が退職を希望する場合は、1ヶ月以上前に申出するものとする。
・従業員が退職する場合は、退職前2週間は引継ぎを行うものとする。
・前2項に違反し退職した場合は、退職金を減額する場合がある。
⑤半日単位、時間単位の有給休暇についてルール化する
有給休暇は原則として1日単位で付与するものですが、会社がルール化しておけば
あらかじめ半日単位や時間単位で付与することも可能です。
ただし、時間単位で付与する場合は、労使協定で「対象従業員の範囲」、
「時間単位で付与する上限(5日を限度)」、 「1日の時間数」 、「何時間単位で付与するか」、「何時間で1日とカウントするか」を定める必要があります。
あらかじめルール化していないと対応に困るので半日単位や時間単位の付与を認めるかどうかも含めて定めておく必要があります。