こんにちは。
今回は、以外と難しい有給休暇のお話をしようと思います。
パートアルバイトにも有給休暇があることは知られていると思います。
ただ、あるのはわかっているけれど、働ける時にシフトに入って働くパートアルバイトにどうやって有給休暇をとらせていいのかわからない、といった話をよく聞きます。さらに、雇用契約書が交わされていなかったり、契約内容と実態が違うこともあります。こうなってくると人事労務担当者は頭を抱えることになります。
それでは、代表的な頭を抱える問題について考えてみましょう。
有給休暇は何日もらえるのか問題
通常、入社して6か月継続勤務し、出勤率が8割以上であると、有給休暇が10日付与されます。週30時間未満及び週4日以下で働く場合、比例付与という仕組みがあり、通常の付与日数より少ない日数で有給休暇が付与されます。
では、シフト制で働くパートアルバイトは、いったい週何日働いていると考えるのでしょうか?
Aさん 雇用契約書には週何日勤務とは記載なし
シフト制で、出勤できるときに出勤し、週毎に出勤日数が違う
⇒対象期間の総出勤日数をカウントし、比例付与の表に当てはめて付与日数を決定できます。
※就業規則に有給休暇の比例付与に関する定めがあっても、パートアルバイトのAさんがどれに該当するのか判定方法が決められていない場合は悩んでしまいます。ですので、パートアルバイトの付与日数の算出方法を規定に記載することをお勧めします。
※※雇用契約書に週何日勤務であるか記載して契約しても、実態が違っている場合(出勤できない状態または多く出勤している状態)は、雇用契約書の巻き直しの検討をお勧めします。有期契約の場合、少々面倒ではありますが、こまめに労働条件を見直し実態にあった契約となるようにすることで、疑問や不信感を持ったまま働くことを防ぐことができると思います。面談を行う必要がありますが、有給休暇の取り方の確認や、職場について思うことをヒアリングして定着率をアップすることにつなげる取り組みにしていけると思います。
※※※雇用契約書に週4日1日6時間と記載していても、実態は週2日1日5時間程度の出勤にとどまっているような場合、雇用契約書通りであれば有給休暇を7日付与することになりますが、実態に合わせると3日付与となります。しかしながら雇用契約書に縛られているため、実態を伴わない契約は、面談の上巻きなおすことを習慣としていればよいかと思います。
シフト制の中に組み込むもの
では、次にAさんは有給休暇の権利をどうやって行使するでしょう。
これまで出勤できる日を教えてもらって、上長がその日にシフトを入れていました。シフトの入った日が労働義務のある日ということになります。有給休暇は、労働義務のある日の義務を免除するものです。それを踏まえると、いつ取ればいいのか迷宮にはまっていくと思います。この場合、面談を活用していつ取りたいか聞いてみることをお勧めします。会社には時季変更権もあります。繁忙期に休まれると困るのが正直なところだと思います。そこも説明してみるのです。比較的閑散期に有給休暇のシフトを入れ込んでしまうのがおすすめです。
もしくは、Aさんの都合で、出勤が少なくなってしまう月に有給休暇用のシフトを入れて、給与が極端に減らないような配慮をすることも可能です。できるだけ働きやすい状態を作り上げることで離職を減らし、教育にかかるコスト削減を狙うことができます。
※そもそも予定のシフトを欠勤することが多い場合は、出勤率の算定をしっかりすると8割未満の出勤率となりえます。(そもそもの分母となる日数が少ないので)そうすると、次の付与タイミングでは有給休暇は発生しない場合もありえます。勤怠管理については、手間ではありますが、しっかりと取り組むことで一定の緊張感も生まれて、規律が生まれてくると思います。
有給休暇は何時間分支払えばいいのか問題
たとえば、シフトを入れていたけれど、体調不良により欠勤となった場合に有給休暇を利用できることを定めている場合、当初の予定勤務時間が有給時間となります。では、シフトに有給休暇を組み込む場合、何時間にするでしょう。たとえば、平日は4時間、土日は8時間勤務を固定で出勤しているような場合は、何曜日のシフトに有給休暇を組み込むかで時間を決めるか、過去3か月を平均して1日当たりの有給時間を決めることをお勧めします。また、曜日によって時給が異なる場合は、その有給休暇の日の時給単価で支払うか、過去3か月の平均賃金から単価を出して支払うことが考えられます。
いずれにしても、事業所として統一する内容であり、従業員からの質問に、会社のルールとして回答できるようにしておきたいものです。
パートアルバイト用の就業規則がない問題
10人以上の事業所には就業規則の作成と、労働基準監督署への届出義務があります。では、御社の就業規則には、社員の区分は定められているでしょうか?今まさに悩んでいるパートアルバイトについての記載がない又は、極端に少ない(必要な定めがない)のではないでしょうか?
事業所に複数の従業員区分(例えば、正社員、短時間正社員、契約社員、パート、嘱託社員)がある場合、当然就業規則に従業員区分を定める必要があります。そして、それぞれ社員区分ごとにどのルールを適用すればよいのか判別可能である必要があります。
よく見かけるのが、冒頭にこの就業規則は正社員について規定するもので、パートアルバイトについて適用しない、と記載があり、別規定は作っていないというものです。
パートアルバイトの有給休暇について新たに運用ルールを決めたのならば、就業規則にその運用ルールを追加していきましょう。都度、運用が違うと混乱しますし、何より休暇についてルールを決めた場合は就業規則に記載することになっています。従業員区分だけでなく、比例付与の算定方法、付与時間について規定に盛り込みましょう。就業規則を見れば悩む必要のない状態にして、就業規則を従業員に周知し、共通ルールを意識できる環境にしていきましょう。
まとめ
実は、就業規則はとても重要なものです。従業員の権利についてだけ定めているのではなく、服務規程には守るべきルールについての記載があるのが通常です。会社は、人手不足の今、従業員の定着を図るためにはルールが明快で安心して働ける環境作りに努めることが必要です。現在、社員面談はあるけれど、パートアルバイト面談はしていない場合は、是非取り入れることをお勧めします。
有給休暇は労働者の権利ですが、そもそも労働義務のある日に使えるものであるという大原則があります。従業員が労働義務について意識できるように、就業規則をもっと活用してみてはいかがでしょうか。ご紹介してきた内容で困ったならば、ルールを決める良い機会です。運用方法を検討してみてください。