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ちょっとだけ役立つ労務管理・人材育成

人材育成の講師をやっていた社労士が、労務管理や人材育成について、今まで経験したエピソードや、ちょっと見つけた役立ちそうな情報を提供します

29日に消費税の2017年4月に予定していた
消費税10%引き上げを、
2019年10月まで約2年半延期すると
総理が発言したことは
みなさんご存知だと思います。

一般消費者の私どもとしては
家計の影響が少なくなるので
嬉しいニュースではありますが
年金の受給権で悩んでいる方にとっては
大問題の発言になってきます。

というのは、

この10%引き上げを条件に

年金の受給権利である加入期間を
今までの25年から10年にするという
いわゆる
「10年年金」
が、可決されていたのですが、

その条件である増税が延期されたことによって
「10年年金」
も延期になる可能性が高くなったのです。

そもそも10年年金というのは
25年未満の加入期間しかない方の
掛け捨て防止の意味があったので

10年でもらえるようになっても
生活できるレベルの年金額が
もらえる訳ではありません。


老齢基礎年金を例にすると

義務期間となっている20歳~60歳まで
40年間(480月)保険料を払った場合、
もらえる年金額は満額で

年額780,100円(平成28年現在)
月額だと約65,000円


これが受給権が発生する
25年しか払っていない場合は、

780,100円 × 25年/40年

になりますので

年額約487,562円
月額だと約40,630円

になります。


ですので、10年で受給権が発生したとしても
この計算で算出すると

780,100円 × 10年/40年

で、年額約195,025円
月額にすると約16,252円

となり、年金だけでは
とても生活できるレベルではありません。


しかし、
世の中には
加入期間23年などという
ギリギリ受給権がない
高齢者もかなりいます。

実際、私のところに相談する方もいるくらい
身近に存在します。


コンピューター化が進んでいない昔は、
ずさんな管理と指摘された年金の管理を
逆手に取り
厚生年金に加入していない企業が
かなりありました。

そのような会社に勤めていた方は
働いていたのに
加入していない
いわゆる未納状態になっていたのです。

昔は給与明細書自体も
無かったり、手書きだったりと
コンピュータ管理できておらず、
自分自身、
厚生年金保険料を取られているのか分からない
ということが多くあったそうです。

その方が

転職や、
企業側が国から指摘を受け加入するようになり
保険料を支払うようになっても
25年に達する前に
60歳を迎えてしまうケースがあるのです。

ですので
ずっと働いていたにも関わらず
加入期間が25年未満という方が
結構存在しているのです。


加入期間23年間という方にすれば

あと2年間分、保険料を追納すれば
受給権が発生します。

終身でもらえる年金を受給できるのと
できないのとでは大きな違いです。


では、
あと2年間分の保険料を納めるというのは
いくら支払うことになるかというと

平成28年度価格で、月額16,260円。


2年間分になると
390,240円になります。



この2年間分の保険料が
年金額にどう反映されるかというと

冒頭の計算を例に


加入期間25年の場合

780,100円 × 25年/40年

年額約487,562円
月額だと約40,630円


加入期間23年の場合

780,100円 × 23年/40年

年額約448,557円
月額だと約37,380円

となり
2年間の差は

年額で約39,000円
月額で約3,250円になります。


要は
2年間分の保険料、390,240円を支払っても
年金額は年間39,000円増えるのみなので

10年間、年金をもらい続けられなければ
もとを取ることできないのです。

年金の支給開始は65歳。
75歳まで生きて
やっと2年分の保険料が無駄にならなくなるのです。


このような関係性の中で

60歳を過ぎ、
退職し、次の仕事が思うように見つからない方だったら
2年分の保険料を追納するでしょうか?


でも、受給権が発生するとしないでは
大違いなので
加入期間を
25年間と定めている現在なら

追納するのです。



これが10年年金だったら
受給権が発生していることになるので
2年分の保険料を納めないで受給する
という選択が可能になるのです。


そのような方にとっては

この2年半の増税延期は
とてつもなく長い期間になってしまうのです。


増税延期で喜ぶ消費者の陰で
このように
待ち焦がれていたのに
悲しんでいる消費者もいることを
覚えておいてください。