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〖 SPIDERLAND 〗 my favorite songs and albums

音楽は自由だ。主観で聴く。他人の価値観は参考でしかない。自分で探す。メディアには騙されない。売れる為に会社の言いなりで作った様な音楽より、リアルで生々しい音楽がスキだ。いい音楽は自分を癒し、時に悩ませる。共鳴し心を震わせる。真実を選ぶのはアンタ自身だ。


UK/DANGER MONEY

1979年リリースのセカンドアルバム。
JOHN WETTON           BASS/VOCAL
EDDIE JOBSON          KEYBOARD/E.VIOLIN
TERRY BOZZIO           DRUMS

ジャケット・アートワークはHIPGNOSIS

もともと4人編成でスタートしたUKだったが、
このセカンドからはトリオ編成となる。

ファーストではドラムがTERRY BOZZIOではなくBILL BRUFFORD、
加えてギターにALAN HORLDSWORTHの4人で
1stアルバム(邦題「憂国の四士」)をリリースした。
邦題のセンスの無さは置いとくとして、この4人で出すアルバムに当時のプログレファンが期待しない訳がない。プログレ最後のスーパーグループとしてもてはやされた。クリムゾンの「RED」以降の展開を期待したファンも多かったろう。
客観的にみて1stは悪くない出来だったし
ある程度のハードルはクリアした作品だと言える。
だが、オレにとってのUKはこの2ndアルバムの「DANGER MONEY」こそが、これぞUK!と言える名盤なのだ。

この2ndアルバムはシンプルなトリオ編成となった事でより整合感が増し、曲の表現力、訴求力が向上している。
役割分担がはっきりした事で1stよりもロック的なダイナミズムを体現する結果となった。
インプロビゼーションとか変拍子とかエゴのぶつかり合いが生み出す「せめぎあい」みたいな音楽が大好きなのだが、1stではまだ曲のインパクトが弱い。せっかくALAN HORLDSWORTHがいてもTEMPESTで聴かせたような「彼ならでは」の必然性があまり感じられない。EDDIE JOBSONのプレイも1stではまだ引っ込み気味だ。そもそもこの2人、役割が被ってないか?

2ndからのTERRY BOZZIOの加入はこのバンドを一変させた。
DANGER MONEY 収録の"ONLY THING SHE NEEDS"という曲が4人編成時代のライブでも披露されており、その音源でのバージョンを聴くと一目(一聴)瞭然だ。
「同じ曲でもドラマーが違うだけでこうも変わるのか?」というぐらい曲が進化した。DANGER MONEY収録のバージョンの方が断然カッコいい。鋭いフレーズをビシバシ畳み掛けるTERRY BOZZIOのドラミングには唖然とさせられる。
BILL BRUFFORDも良いドラマーだし、その以前のライブバージョンも決して悪くはない。クリムゾン時代の"太陽と旋律"みたいな感じで「味」あるんだよね。JAZZROCKな感じ。

TERRY BOZZIOは「芸術は爆発だ!」と言わんばかりのパワーに満ち溢れている。それでいながらフレーズが細かく、変拍子など難なく駆使するもリズムは正確無比。タイトかつパーカッシブな響きに彼独特の手数の多さも相まって独特の響きがある。
ジョンウエットンがクリムゾン時代に”STARLESS”で聴かせたあのロマンチシズムもアルバム最後の"CARRING NO CROSS"で全開となっている。バックを彩るまるでオーケストラのような表現力豊かなドラミングはTERRY BOZZIOならではのもので、EDDIE JOBSONの弾く鍵盤やE.VIOLINの退廃的なフレーズを見事に盛り上げる。

もともとROXY MUSICが好きでEDDIE JOBSONのプレイには信頼があった。
ROXYのアルバム"COUNTRY LIFE"や"SIREN"でのVIOLIN(特に"SIREN"の中の1曲"SHE SELLS"でのバイオリンの響きといったら・・・マジ惚れるよ!)プレイが素晴らしく、注目していた。中世のデカダンな退廃的な響きをコンパクトなフレーズにまとめて散りばめる。
このUKでもリーダーのジョンウエットンはEDDIE JOBSONを売り出そうと前面に押し出していたそうだ。

ジョンウエットンといえば"ASIA"だ。おれは"ASIA"は好きになれなかった。よく、このUKの2ndアルバムであるDANGER MONEYが"ASIA"の音楽性の発端であり原点だ、みたいな記事をみかけたりしたが俺はやっぱり"ASIA"は好きになれなかった。同じジョンウエットンが書いた曲のはずなのだが、やっぱりオレにとってのジョンウエットンはUKで終わっていた。

2017年1月31日、ジョン・ウエットンが亡くなった。享年67歳。もう長く闘病生活をしいられていたらしい。安らかにお眠りください。

たとえオレが"ASIA"を好きになれなかったとしても、彼の偉大な功績になんら変わりはないだろう。俺にしてみても、FAMILY~クリムゾン~ロキシー~UKと彼の変遷と軌跡を振り返った時に「全部フェイバリットとして聴いてきてんじゃん!!」とその密度の濃さに驚くよ。

彼の残した軌跡の中でも、いっそう一際輝く星のような作品、
それがオレにとってのDANGER MONEYだ。
合掌。

R.I.P.