危険物に関する法令
1. 危険物取扱者は、消防法に基づく危険物を取扱うための国家資格である。
2. 火災の危険性が大きい物品を「危険物」といい、その貯蔵や取扱いなどについては消防法で規制されている。危険物には「単体」や「化合物」だけではなく、「混合物」も含まれている。
3. 消防法の定める危険物は固体と液体のみで、気体は含まれない。
4. 消防法上の危険物には気体は含まれず、プロパンガスやアセチレンガスなどの可燃性ガスは「高圧ガス」や「労働安全衛生法」で規制され、引火・爆発の危険性(爆発限界濃度内での酸素・着火源との混合)と毒性(許容濃度)に注意が必要です。消防法上の危険物は、ガソリンや灯油のような液体の可燃物が中心で、固体と液体のみが対象で、ガスは消防法の「危険物」には該当しませんが、別の法律(高圧ガス保安法、労働安全衛生法など)で厳しく管理されます。
5. 免状によって取り扱うことのできる危険物は異なる。危険物は、特性ごとに第1類から第6類に分類されており、乙種の場合、免状を取得した類のみ取り扱うことができる。第4類危険物はすべて引火性で、状態は常温で液体です。(乙4)
6. 危険物の種類:取り扱いに必要な免状:乙1~乙6。
第1類 酸化性固体 不燃;
第2類 可燃性固体 可燃;
第3類 自然発火性物質、禁水性物質 (液体または固体) 可燃、一部不燃;
第4類 引火性液体 可燃;
第5類 自己反応性物質 可燃;
第6類 酸化性固体 不燃;
第1類 酸化性固体|危険物取扱者
物質自体は不燃性。他の物質を強く酸化させる性質をもつ。
また、可燃物と混合したとき、衝撃、熱、摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼を起こさせる。
<物品名> 過塩素酸カリウム、過酸化カリウム、それとも塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム等
第2類 可燃性固体|危険物取扱者
火炎によって着火しやすい。
比較的低温(40℃未満)で引火しやすく、かつ燃焼が速く消火することが困難である。
<物品名> 三硫化リン、五硫化リン 赤リン、硫黄
第3類 自然発火性物質および禁水性物質|危険物取扱者
空気にさらされることにより自然発火するおそれがある。
または水と接触して発火、もしくは可燃性ガスを発生する。
<物品名> カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム
第4類 引火性液体|危険物取扱者
引火性があり、蒸気を発生させ引火や爆発のおそれがある。
<物品名> 二硫化炭素、ガソリン、灯油等
第5類 自己反応性物質|危険物取扱者比較的低温度で加熱分解等の自己反応を起こし、爆発や多量の熱を発生させる。または爆発的に反応が進行する。
<物品名> 硝酸メチル、硝酸エチル、ニトログリセリンなど。
第6類 酸化性液体|危険物取扱者
物質自体は不燃性。
他の物質を強く酸化させる性質を持つ。
他の可燃物と混在すると燃焼の促進を助けるものもある。
<物品名> 過酸化水素、発煙硝酸、硝酸など。
7. 第4類で登場する危険物すべてに共通する特徴:
引火性の液体である、流動性が高い、発火点は650℃以下、液体の比重は1より小さい物品が多い。
8. 第4類危険物の7つの分類と物品名と指定数量:
(1) 特殊引火物:50L
・引火点 -20℃以下
・発火点 100℃以下
・沸点 40℃以下
<物品名>
ジエチルエーテル → 引火点が最も低い。
二硫化炭素 → 発火点が最も低い。
アセトアルデヒド → 沸点が最も低い。
(2) 第1石油類:非水溶性 200L;水溶性 400L
・引火点 21℃未満
<物品名>
ガソリン、ベンゼン、トルエン
アセトン、ピリジン
※4文字であって最後が「ン」になります。
※自動車用ガソリンはオレンジ色に着色されている。
※ガソリンの引火点は、-40℃以下
(3) アルコール類:400L
・引火点 11℃から23℃
<物品名>
メチルアルコール(別名:メタノール)
エチルアルコール(別名:エタノール)
n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール
※語尾に「アルコール」が入ります。
※無色透明の液体
※芳香がある。
※蒸気は空気より重い。
※水溶性である。
(4) 第2石油類:非水溶性 1000L;水溶性 2000L
・引火点 21℃以上70℃未満
<物品名>
灯油、クロロベンゼン、軽油
酢酸、アクリル酸
※灯油は無色または淡黄色
酢酸は強い腐食性がある。水溶性。
(5) 第3石油類 非水溶性 2000L;水溶性 4000L
・引火点 70℃以上200℃未満
<物品名>
重油、クレオソート油、ニトロベンゼン
エチレングリコール、グリセリン
※重油は水よりやや軽い。
(6) 第4石油類:6000L
・引火点 200℃以上250℃未満
<物品名>
潤滑油(ギヤー油、マシン油など)、可塑剤、切削油
※霧状、布に染み込んだものなどは引火しやすい。
(7) 動植物油類:10000L
・引火点 250℃未満
<物品名>
オリーブ油、ヤシ油、アマニ油
霧状、布に染み込んだものなどは引火しやすい。
9. 第4類危険物で液の比重が1より大きいもの:
特殊引火物 二硫化炭素 1.3
第2石油類 クロロベンゼン 1.1
酢酸 1.05
アクリル酸 1.05
第3石油類 ニトロベンゼン 1.2
グリセリン 1.3
アニリン 1.01
第4石油類 リン酸トリクレジル 1.17
10. 危険物取扱者乙種4類のうち、物品による特徴のポイント:
(1) 非水溶性のものが多い。種類の少ない水溶性のものは以下である。
特殊引火物 アセトアルデヒド、酸化プロピレン
第1石油類 アセトン、ピリジン
アルコール類 全部
第2石油類 酢酸、アクリル酸、プロピオン酸
第3石油類 エチレングリコール、グリセリン
(2) 静電気が発生・蓄積されやすい。
(3) 蒸気の比重はすべて1より大きい。空気とわずかに混合しても引火するものが多い。
(4) 発火点 100 ℃以上(二硫化炭素は 90 ℃)。
(5) 蒸気の比重が小さいものほど引火点が低い場合が多い。沸点の低いものほど引火点は低い。
11. 第4類における石油類の前提条件:各石油類は1気圧における状態が標準となる。引火点の低い(℃が小さい)ほど、危険度が高くなる。特殊引火物、アルコール類、動植物油類と、"数字"以外もある。
12. 法令上、免状の手続きについて、免状の交付は試験を行った都道府県知事に申請する(危険物取扱者試験の合格者)。免状の書き換えは氏名/本籍地を変更した時に行う、または写真が10年の経過する前に行う(免状を交付した/居住地の/勤務地の知事のいずれか)。免状の再交付は免状を交付した知事(汚損、亡失、減失、破損等した時)より行う、または免状を書き換えた都道府県知事に申請する。(甲種、乙種、丙種)
13. 危険物取扱者丙種の取り扱える危険物:第4類危険物の一部(ガソリン、灯油、軽油)など。
14. 危険物取扱者甲種、乙種(免状に指定された類のみ)の立ち合いがあれば、資格のない人でも取り扱うことが可能です。だだし、丙種は立ち会うことができない。
15. 危険物取扱者の免状は本籍地でも有効で、全国どこでも有効です。
16. 法令上、危険物の保安講習について、
(1) 受講業務のある有資格者が受講しないと免状の返納命令の対象になる。
(2) 保安講習は全国どこても受講が可能である。(受講する都道府県は決まっていない)
(3) 危険物保安監督者は受講業務がある。
(4) 保安講習の受講義務は有資格者全員に受講義務があるわけではない。製造所等において危険物の取込作業に従事している有資格者(危険物取扱者の資格を有しており)は受講義務がある。
(5) 資格を有していても危険物の取扱作業に従事していない人や、資格を有していない危険物保安統括管理者や危険物施設保安員は受講義務もない。
17. 保安講習は1度受講して終わりでなく、定期的に受講する必要がある。
18. 保安講習の受講期間には、次の2種類がある:
従事し始めた日から1年以内;(過去2年以内に免状の交付または講習を受けておらず、
新たに作業に従事することに従事し始めた日からなった危険物取扱者)
交付または講習を受けた日から最初の4月1日から3年以内(過去2年以内に免状の交付または講習を受けた人)。
※2回目以降なら交付または講習を受けた日から最初の4月1日から3年以内で、2年を超えてペーパー危険物取扱者だった人だけ受講期間が違う。過去2年以内に免状の交付や保安講習を受講した人とそうでない人で受講期間は異なる。
19. 受講義務のある人が受講しなければ、免状の返納命令の対象になる。
20. 法令上、製造所等を設置または変更する手続きとして、
(1) 設置や位置などの変更には市町村長等の許可が必要である。
(2) 工事後、完成検査申請し、完成検査に合格すると使用開始できる。
(3) 液体の危険物タンクを有する場合、工事開始と工事完了の間に完成検査前検査を受ける必要がある。また、これに合格すると完成検査前検査済証が交付される。
(4) 設置などの工事は市町村長等の許可を受けた後に行う。
(5) 完成検査に合格すると完成検査済証が交付される。
21.危険物施設保安員の選任が必要なのは、次の3つの施設に限られる:
指定数量に関係なく選任が必要な施設 移送取扱所
指定数量の100倍以上で選任が必要な施設 製造所、一般取扱所
22. 危険物に関する法令上の規制は、次の三つに分けられる。
指定数量以上の危険物の貯蔵又は取扱い
法10条により、「指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つかってはならない。」と定められ、さらに製造所等の位置、構造、設備及び貯蔵・取扱いの技術上の基準が細かく規定されている。
指定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱い
指定数量未満の危険物は、各市町村の火災予防条例により、技術上の基準が定められている。
危険物の運搬に関する規制
危険物の運搬については、その数量に関係なく、消防法、政令、規則及び告示(消防法等)において技術上の基準が定められている。
23. 製造所等は全部で12種類ある。製造所(1種類、①)、貯蔵所(7種類、②~⑧)、屋内貯蔵所(1種類、③)、タンク貯蔵所(5種類、④~⑦)、屋外貯蔵所(1種類、⑧)、取扱所(4種類、⑨~⑫)
24. 危険物保安統括管理者とは危険物の保安業務を統括し管理する人のことで工場長などがある。
25. 危険物保安監督者を選任、解任した時は市町村長等に届ける必要がある。
26. すべての危険物取扱施設に危険物保安監督者の選任が必要でなく、危険物の引火点によって、必要な施設と必要でない施設がある。(すべての製造所等に必要なわけではない)
27. 甲種または乙種危険物取扱者の資格を持ち、製造所等で危険物の取扱作業に6か月以上従事した人の中から危険物保安監督者を選任し、市町村長等に届け出る必要がある。丙種危険物取扱者の人は危険物保安監督者に選任されない。
28. 危険物保安監督者の役割:主な役割は次の5つである。
(1) 危険物の取扱作業を行う際、作業者に必要な指示を行う。
(2) 火災などの災害が発生した際、作業者に指揮して直ちに消防機関等へ連絡する。
(3) 危険物施設保安員に必要な指示を与える。
(4) 火災等災害防止のため、隣接する製造所等の関係者と連絡を保つ。
(5) 危険物の取扱作業の保安に関して必要な監督業務。
29. 危険物保安監督者の選任が必要な施設:一覧(略)
※一般取扱所は、ボイラー等消費·容器詰替のものである(下記の意味)
配合室の特徴:危険物の配合室の床面積は6㎡以上10㎡以下と決められている。
30. 危険物保安員の具体的な役割:危険物施設保安員は、製造所等で危険物保安監督者の補佐を行う。資格、届出の必要はない。主な役割は次の5つである。
(1) 製造所等の定期及び臨時点検を行い、その記録を保管する。
(2) 設備の異常を発見した場合、危険物保安監督者と関係者に連絡し適切な措置を取る。
(3) 火災などの災害が発生した際、危険物保安監督者と協力し応急処置を取る。
(4) 製造所等の装置が適正な機能を保持されるように保安管理を行う。
(5) 危険物施設の保安に関して必要な業務を対応する。