「あー…う、うん!あっあっはぁ~良し!行くぞ!」
アンジェは、先程から馬上で何度も緊張を解そうと声を出し、乱れた髪を手櫛で撫でつけていた。
メヒとの約束の時間には、まだ2刻も時がある。
どうにも落ち着かず、気持ちが浮き足立ち早めに家を出たアンジェは、急いた気持ちで手綱を握り、馬が参ってしまうほど早駆けさせた…その結果、思ったよりずっと早くメヒの家に着いてしまったのだ。
「すまなかったな!ここで休んでいろ!」
アンジェは言うなり、馬から飛び降りた。そして、馬の背に吊るしてあった、メヒへの贈り物をはにかんだ顔で手に取った。
さすがに早すぎちまったかなと、小声で呟きながら門に手を掛けようとしたその時…
「ごめん下さ…うお~!?メ、メヒちゃん!」
中からメヒが音もさせず門を開いたため、アンジェはそのまま中へ吸い込まれそうになった。メヒが1歩下がらなければ、二人はぶつかるところであった。
メヒはいつもと変わらぬ服装で、アンジェが来るのを門の所でずっと待っていた。アンジェを見つめ返すその眸は、少し淋しげに曇っているようにみえた。
「メヒちゃん、今日はよろしくな!はいこれ!今、町で一番評判の服らしい!ちゃんと色んな奴に話を聞いてから、買ったんだぜ。メヒちゃん可愛いから、絶対似合うと思うよ!」
メヒは、自慢げに差し出されたアンジェの両手の中にある包に、どうしても手を出す事が出来なかった。
「アンジェさん…あの…私…やっぱりこれで…」
「メヒちゃん!頼むからさ、貰ってくれよ!俺、女姉妹もいないしさ、貰ってくれないと困っちまうんだ。そんな高いもんじゃねぇし、今日付き合って貰う礼だと思って受け取ってよ!ほら」
アンジェはメヒの手を取り、その豆だらけの小さな手に、包を押し付けるように手渡した。
「俺、ここで待ってるからさ!着替えてきなよ!」
「…えぇ。ありがとう、アンジェさん…」
メヒは、精一杯自然に見えるよう笑顔を作った。そんな作り笑いのできる自分に…嫌悪感が走る。アンジェさんは、良く気が付く、本当に優しくていい人…それなのに私は、何やってるのよ…
塞ぎ込んだ気持ちのまま部屋に戻り、ゆっくりと包を開いた。中には金色に輝くチョゴリに、深紅のチマが入っていた。
「…綺麗…こんなの、私には似合わないわ。だって私は…」
戦うために鍛え上げられた、傷だらけの両手を見つめながら、思わず独りごちたメヒだったが、自分のために真剣に悩み、選んでくれたであろうアンジェの気持ちを、蔑ろにできるほど強くもなかった。
服を着替え、簡単に髪を結い上げる。曇った鏡に冴えない自分を映し、メヒは沈んだ心を隠すように、唇に紅を差した…
どうしよう。一緒に馬に乗るつもりなのかな?この格好だもの、まさか跨いで乗るわけにはいかないし。でも、やっぱりそんな事…うん、決めたわ。
メヒはいつもの袋を持ち、厩へと歩いて行った。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「あの…アンジェさん、お待たせしました」
門の外でそわそわしながら待っていたアンジェが、声の方を振り返ると…
「うわっ?思った通りすげぇ似合う。本当に可愛いよ!あれっ?メヒちゃん、その馬で行くの?俺は、こいつで一緒に行くつもりだったんだぜ。うちにいる馬で、一番体力があって速い奴連れてきたんだけど…やっぱり二人で乗るのは嫌か?」
言いながら肩を落とすアンジェに、メヒは馬上から大きく首を振った。
「違うの!アンジェさんが…嫌とかじゃなくって…初めてだから恥ずかしいし、それに私…そんな手合いの人間じゃないし…」
「…いいよ、無理しなくたってさ。あっ!でもダメだ!今日は一緒に行動しろって、親父に言われてたんだ。ごめんな、嫌だろうけど、こいつに乗り換えてくれるか?」
「どういうこと…ですか?」
アンジェの物言いが気になったメヒは、素直に従い、伸ばされたアンジェの手を取って、鐙から足を下ろした。
「じゃあ、良いかい?そこに足を掛けて…こいつに座ってくれるか?…ちょっと待って、俺も後ろに乗るからさ」
アンジェはメヒを支えて馬に乗せてやると、自分も颯爽と馬の背に飛び乗った。落ち着かないメヒを腕の中に囲い、両手で手綱を絞った。
「あっそうだ…これ」
と、懐から出した簪で、メヒの後ろ髪に色を飾った。
「えっ…アンジェさん、これも私に?本当にありがとう」
簪に触れながら後ろを振り向くと、頬を掠めそうな程近くにアンジェの眸があり、メヒは慌てて俯いた。
「うっ、うん、凄く似合うよ!さっ、行こうか。今日はあっちの道から行くしかないんだよ。ちょっと遠回りだけど仕方ねぇな」
「どうして?そっちからじゃ倍はかかるわ?」
ハッとアンジェが声を掛けると、二人を乗せた馬は軽快に走り出した。
「親父に言われたんだ、祭りの日はあの通り沿いは、危険だから絶対に近寄るなと」
その道は、ヨナの家へと続く道…メヒは嫌な予感がして、アンジェを問い質した。
「あの…アンジェさん、何が危険なの?知っているなら教えて?」
アンジェは、少し躊躇いがちに口を開いた。
「…俺もこの間親父に理由聞いたんだけど、何も教えてくれなくてさ。でも俺、一昨日こっそり立ち聞きしちまったんだよ、親父達の話を。今日、親父達武臣が一斉に文臣達の家を襲うらしいんだ。この国の為、金の亡者でしかねぇ文臣達をこれ以上野放しには出来ねぇって…聞いた時はさすがの俺も、震えちまったよ。祭りの日の今日を決行日にしたのも、狙いらしいぜ。文臣が、上役の家へ金を持って集まるらしいんだ。その宴会にきた奴らも、一網打尽にするためにな」
メヒは、自分でも気付かぬうちに、アンジェの腕をギュッと掴んでいた。喉の奥から絞り出した言葉は、微かに震えている。
「文臣…それってまさか…ヨナのお父様の家も…?」
「いや、ヨンの家は親父達が守りに行くと言ってたぜ。ヨンの父上だけなんだそうだ…赤月隊や親父達の武具や禄のために、自分の財を投げ打ってまで力になってくれているのは。だけど、武臣の中にも不穏分子がいるらしくてな。金だけが目当ての汚い奴らさ。そんな奴らがヨンの家を襲うかもしれねぇから、あぶり出してとっ捕まえてやるって!一石二鳥だって言っ…あっ!おいメヒちゃん、馬鹿野郎!何て事してんだっ!危ねぇじゃねぇか!大丈夫か?」
メヒはアンジェの腕を振り切り、かなりの速度で走る馬から飛び降りた!大声で叫ぶアンジェの声など、既にその耳には届いてはいなかった。
受身は取ったものの…右の手首を強く打ち付けてしまい、見る間に青く腫れてくる。転がりながら出来た擦り傷からは、血を滲ませていた。
身体の痛みも、埃塗れの自分の姿さえもどうでもいい…メヒは、形振り構わずチマの長い裾を抱え、もと来た道へと走り出して行った!
やだ…ヨナ!無事でいて…ヨナにまで何かあったら私…すぐ助けに行くから待ってて!ヨナ…
…後には、呆気に取られたアンジェと、主をなくした簪がひとつ、ぽつりと転がり落ちていた…
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
皆様こんばんは
台風は大丈夫でしたか?
今NEWS ZERO観てるんですが…
言葉が出ないです。
このところの自然災害は
想定外のものばかり…
台風はこの後も北東へ
進むようです。
今後の進路にあたる皆様
ご注意くださいませ┏○))
今夜は、久しぶりにチマりました
お誕生日のお友達へ贈ります~
…でも、誕生日っぽくなくて
お誕生日おめでとうございます

幸せいっぱいの毎日になりますように
戦メインではないので
今回、先にネタバレです(笑)
シンイ本の2巻のこの部分…
見えるかな?
良師とキ・チョルが話しチョル
場面(笑)
ず~~~っと前から気になってまして

チェ・ヨンのお父さんの時代にも、武臣の乱あったの!?と。
でも…探したけれど見つからないのヨン…
じゃあ…今かな?今じゃね?ってな事でぶっこみました
はるの二次の世界なので、その辺の時代背景はゆる~~くお読みいただければと思います
この後、うちの娘VS名前を言ってはいけないあの物
…の話書こうかと思いましたが…長くなっちゃったんで今日はこの辺で┏○))
明日も暑いかなぁ…
水分補給忘れずに!
あっ!ちゃんとアルコール
飲んでないですぜ( ー`дー´)キリッ
では明日もフィティン
はる

にほんブログ村

はるです。信義ーシンイーのチェ・ヨンとウンスに惹かれ、二次小説を書いております




