情報の即時伝達が流通の改善に繋がるという考えから、従来のスリップ発注から電子発注へ向けての動きとして「出版VAN構想」が91年に連絡会発足とある。そうか、VANは91年からの動きだったのか。もっと前かと思っていたが、それでも15年近くはたつのか。

「VAN構想の主目的は出版社、取次会社、書店間の流通情報の改善にあって、これが直接客の注文に使用されるわけではない。しかし将来的には、客が店頭で注文すると、たちどころに在庫の有無や重版の予定、どのくらい待てば入手できるのかが分かるようになる。近刊予定の本の発行日や定価も知ることができ、予約注文も可能になる。そしてVANのシステムと物流とがうまく連動するようになれば、宅配便ルートなどというバイパスを用いないでも、注文してから数日のうちに書店の店頭で入手することが可能になるはずである。」

ちょっと長いが全文引用してみた。誰しもが思いついたであろうネットワーク構想ではある。お客様のお探しの本がいまどこにあるかさえ分かれば、書店店頭のストレスはどれほど改善されるであろうか。なければないと言ってもらえば、次をさがすまでであるのに、とりあえず注文してみましょうな業界にあって、どの場所に本があるか分かるだけでも大きな進歩になるだろうという構想は間違ってない。

しかるに15年近くたった今、どうなっているのか。

出版VANは稼動している。(新出版ネットワークhttp://www.torikyo.jp/topics/021107.html に移行)

大手出版社だけではなく、小出版社も含め参加出版社は増えている。(手元の資料では270社ほど参加しているようだ)

各書店店頭の端末で取次倉庫の在庫状況、出版社での在庫状況、重版情報などが手に入るようになったのは事実だ。パソコンの進化と大衆化で誰しもがEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)を手軽にできる状況にもなっている。欲しい本を注文してもこないとか遅いといった批判には応えてきているようには思う。

けれど、いまだに根強く残る不信感は何なのか。

書店には本がないと嘆く人たち。書店員が本を知らないと嘆く人たち。速くなったといっても明日に来るわけではないので注文しても遅いという人たち。

書店によっての違いもある。都心と地方では物流事情の違いもある。大きな視点としては、やはり出版点数の増大による弊害もある。

これらのマイナス要因を感じさせないインターネット書店という小売店の出現も大きい。ネット書店ではこの本が品切れなのといった不満もないではないが、いま入手可能な日数が明確にされていることは実はとても大きいのだろう。


先日ネットで調べものをしていたらこんな文章に出会った。

◎書店への注文・不満

根本的な問題は出版流通にあるという前提でいうと、どこの書店も似たような棚づくりになりすぎていることが気になる。あと、書店人の本への知識が不足していることが、「本探し」や「棚づくり」の面で露呈しつつあるのが気になる。
◎書店に対する提案など
以上であげた書店の問題点は、いくら書店人が気持ちを切り替えても、そう簡単には変えられないものだと思う。出版社と取次、書店とがスクラムを組んで、出版流通の諸問題を改善しなければ、いくら書店人がが
んばっても無駄な努力になりかねない。


ちょっとひっかかった。

「根本的な問題は出版流通にあるという前提」

「出版流通の諸問題を改善しなければ、いくら書店人ががんばっても無駄な努力になりかねない」


この業界、そもそもの問題は流通にありきと言われてばかりいる。

業界三者が手を組んでというフレーズも頻発される。


出版流通が悪いというのはわかりました。

では、どう変えたら幸せですか。

欲しい商品が明日手に入れば幸せですか。


といった前振りで本論。

前回に引き続き『消える本屋』を読み進める。

今回は第2章「流通の改善」


導入部、客注の遅さについて論じられる。

実証するために著者が実際に町の小さな書店で注文してみる。

10年前では普通だった「客注短冊を取次会社に郵送」とある。

郵送では最も近いはずの取次倉庫にただ届くだけで3日くらい経過する。そして幸いに倉庫にある場合はピッキングが行なわれ、伝票が作成され、書店店頭に届く。だいたいここまでで1週間が経過。取次倉庫にあっても1週間かかる。

取次倉庫にない場合は、さらにそこから旅をして、出版社でのピッキングを待てば、プラス5日ほどはかかる。

町の小さな本屋さんの場合、ここに「経済重量になるまで注文のダンボールは発送されない」とか「出版社によっては、ピッキングした商品を取次倉庫に届けるのが週1回」とかの条件が重なるとさらに1週間くらい加算される。

この辺りの表記は丁寧に書いてあり分かりやすい。

いまでも注文方法が変化した以外はあまり変わってない。

なので、ちょっと大きな書店においても、在庫が出版社にしかないような商品の場合は2週間ほどかかりますと言われたりする。


こんな状況の中、1986年にブックサービスが登場してくる。クロネコヤマトである。

届けが遅いことに対して、宅配便業者の手を借りてのスピードアップ作戦である。

この本の執筆時の1994年には大型書店や出版社の共同事業が数社立ち上がっており、4Pに渡って表組みで紹介されている。これを見ると、送料は400円から500円。1万5千円以上購入で無料といったところが多い。ユーザーが送料負担すれば早くなりますよといった解決策ではある。

まだアマゾン上陸前夜の時代である。


そして、話はそれ以外の業界の流通改善努力へと繋がる。

古い話として客注スピードアップ作戦の解決策で業界三者の取り決めで「客注専用伝票制度」が1980年から開始とある。通常の補充短冊と違い、クリーム色の少し大きめな短冊を使用。先の部分には黒地に白抜きの文字で「客注専用」と書かれているものだ。ひとめで識別できるということで、どの場所でも優先的に処理されるように取り決めたらしい。(客注専用短冊は有料)

ところが、この短冊を使用して補充注文をする書店が多数でてきてしまったため、スピードアップの実効が薄れてしまったとある。


ちょっと疲れてきたので、今日はここまで。

もう少し流通の改善話は続きます。



出版クラッシュ本ブームの再検証を始めようと思うのだが、時系列的にまずはこれから


==『消える本屋』 山田淳夫著 アルメディア発行==


手持ちの本は1996年の7月6日発行初版だ。ちょうど9年前か。

最初の章でコンビニエンスストアの影響を語っている。92年度にセブンイレブンが紀伊國屋を抜いて出版物小売業のトップに躍り出た衝撃から、書店への影響について語り始めている。92年当時セブンイレブンは5300店舗だという表記があるが、いまちょいとセブンイレブンのHPに行って確かめたところ、2004年度では10826店舗。倍になっとるがな。10年たてば倍にもなるか。

CVS全体を見ると、94年時点で出版物全体の15.1%を占めていたものが、2004年では20%を占めるまでになっている。

この本では書籍のバーコード印刷の経緯にも触れている。「セブンイレブンは87年バーコードを印刷したシールを提供してもよいとまで迫って取り扱うすべての雑誌に直接バーコード印刷してもらうことに成功。同年取り扱いの文庫本にも付けられるようになった」

しかし、あらゆる書籍にバーコードをという流れには、一部の出版社の抵抗や装幀家の団体から裏表紙も書籍の一部であり、本の美観を損ねると反対したとある。そうだったねえ。その昔はISBNですら総背番号制だとの反対の時代もあったのだよ。

それからCVSの週刊誌早売り問題。「94年になって首都圏での発売時間を午前5時にすることで決着」とある。ジャンプの黄金時代でもあったから大変な大問題だったのだ。


10年前、CVSが町の本屋の脅威だということはわかっていながら、出版社はCVS迎合体制に突入し、雑誌をそれ仕様に変更し、CVS専用の商品を作り、やがて飽きられるものをつくりはじめたのだ。

この後、同書では書店の大型化チェーン店化にも触れ、町の小さな本屋が追い詰められていくと語り、この章の最後は「CVSの目先のおいしさに目がくらむと出版社も取次会社もとんでもないことになる危険性をはらんでいる」と結ぶ。

そんなことはわかっていたのだ。けれど時代の趨勢だとか、チャネルの変化だとか、生き残りだとか、勝ち組負け組だとか言っている間に引き戻れないところまで来てしまったわけなのである。


明日は第2章「流通の改善」について論考。


いやまあどうでもいいことなんですけど、このアメブロが2日に渡ってシステム改変を行なったところ、激重になって皆さん怒っていらっしゃる。

出版業界の近いところではbk1の件などが思いおこされますです。最近では新潮社の倉庫も激重な時がありましたです。

書いた記事が消えるなんていうこともあったようなので、試験的にこんな戯言を書いてみたりする。

5年ほど前、出版クラッシュ本ブームのようなものがあった。

2001年刊行の『だれが「本」を殺すのか』 がきっかけのように思われているかも知れないが、僕の記憶では1999年の『出版社と書店はいかにして消えていくか』 だったように思う。

その前1996年に『消える本屋』 が刊行されているものの、あまり話題とはならず、99年の『出版社と書店~』とほぼ同時期の超激辛爆笑鼎談・「出版」に未来はあるか? の2冊が評判となり、2000年にはその名もずばりな『出版クラッシュ』 が刊行、これは増刷されるまでとなり、そして2001年の「本コロ」へと繋がっていったのである。

今日初めて知ったんだけど、このアメブロの中に「流通の裏ブログ」なんてのがあるのね。

ただ、悲しいことに裏でもなんでもない。もうちょっと刺激的なことを書いてくれなくちゃ。

『だれが「本」を殺すのか』刊行時、あれほどたくさん出た出版クラッシュ本も一時のブームだったのかと思える。騒ぐだけ騒いだ後、何も変わらない業界慣習が山のようにある。昨年かろうじて「ハリーポッター」のおかげで書籍売り上げは前年を上回ったものの、雑誌は落ち続けている。雑誌の売り上げが落ちているのに、コンビニへの流通占有は増えているということは、どれほど一般の書店の台所を苦しめていることか。

ネット上でもいろいろ問題点を挙げているサイトも散見するが、いま一度すぐそこにある出版の危機について論考したいと思う。