歴史・SFの巨匠田中芳樹原作の読み切り長編。背景が現実の1905年ヨーロッパ、架空の国アップフェルラント(最後の蛇足に記してあったが、歴史に疎いぼくは、実在かと思いネットで調べた。wikiではすっかりあらすじが書いてある)。そこを舞台にしたアクション活劇である。
技術的に、ライト兄弟の飛行機が空を飛んで二年。機関車、乗用車……近世の『科学の時代』、二十世紀の幕開けとなる、とにかくロマンの夢と希望と冒険心、挑戦心、好奇心に世界が活気に満ちていた時代だ。両世界大戦前だし。
ここまでならよくある三文小説で終わるだろうが、原作者はさすがに巨匠だけあり、目が離せない丁々発止の展開が踊る。設定が世界も文化も科学も人物も物語も……とにかく洗練されているのだ。
ネタバラシしたらつまらないので止めるが、大抵の小説は読み切らないとほとんどつまらないのに、途中の場面切り取っても絵になる筆力はさすがに、若年にしてミリオンセラーの銀英伝書かれた著者だけある。読後感も良いし文句なしにお薦めできる良書だ。かなり古いが。湾岸戦争前か。
これも最近ハードカバー版を80円で手に入れた。銀英伝は全巻定価で購読したので、見逃してください。