これもハインラインの古典名作、一大SF宇宙戦記。以下ネタバラシになるので、興味のある方は見ないで原作を。これもネットではすっかりあらすじ暴露されていた。
個人的には『宇宙の戦士』より好きな小説である。この作品の社会体制に賛同するかどうかはともかく、拙作の共通テーマ『ジェイルバード』とは、ここから引用した。学生時代に読んだ懐かしい一冊だ。
月に住む万能エンジニア? の青年が主人公で、彼が知性を有するコンピュータ、マイクの故障を直しに行くシーンから始まる。
月面の国が舞台で、地球側が敵となる。しかし決定的に劣勢で、月は戦闘艦もミサイルも持っていない……! マイクにシミュレートさせたところ、月が地球に勝利する確率はたったの1:7……しかしこの計算結果に、月側の仲間は涙を流して喜んだ! 何故なら……それは原作を。
これは軍事力を背景にのさばる大国のエゴへの警鐘作品と言えるだろう、故に評価が高いのだ。
さて、この月の一妻多夫制の家族体制に驚いた記憶がある。しかし、この小説によると地上では、一夫一妻制の国がむしろ少ないとか。母権社会だ。(正確には、男も複数の妻と交わるのだが)
おまけに、逆のよくある一夫多妻制は、傲慢な金持ちの男が大勢の若い妻をめとって亭主関白している感があるが。この作品の一妻多夫制とは、一人の妻を大勢の夫が大事にするのである。もし妻に暴力侮辱するような夫がいたら、かれは他の夫からリンチに掛けられ殺される。
戦艦もミサイルもない月がどうやって戦い抜いたかは、リニアレールガンなのだが……要するにマス・ドライバーだ。これが月の弱い重力から打ち上げられ、地球の強い重力で落下し、熱核兵器並みの威力を発揮するが。決して虐殺は行わないで月側は戦い抜く。(しかし愚かな地上の民衆は勝手に大勢犠牲となるが)
ちなみに学生時代、宇宙戦闘ものTRPGで機関銃をマス・ドライバーと称して、馬鹿にされた記憶がある。そいつらマス・ドライバーとは質量兵器のことで、レーザーガンと比べたら、実弾ばらまく機関銃だって質量兵器になることを理解しないのだ。
これまでハインラインの著作を列挙したが、購入して手元にあるのだけだ。その中で、『栄光の道』だけは読めなかったのだが……ヒロイック・ファンタジーなのか? なにか気に食わなくて読了できなかった。単なる嫉妬だろう。主人公が、戦闘機乗りになるには大きすぎ、バスケット選手になるには小さすぎる、なんて設定では。
ハインラインの作品、他に面白いのあるかな?