今日はこれ。『走れ!●校バスケット部』。なかなかのベストセラー。
ぼくの自宅近所の出版社の作品なのだよな……ぼくが病気でなければ、軽く自転車で行ける場所にある。だから、いままで敢えてブログには載せるのを止めようか迷ったが……いいや、本音ぶつけよう。
そこを応援したいから買ったのだ。青春ものとしてすきっと読める。ほんとうに軽快に短時間で読了してしまった。展開テンポ良くサクサク、乗りは良い。この筆致、実に読みやすい。それに筋書きにトリックや伏線など(ぼくの思い過ごしでなければ)皆無だから余計な神経使わない。
ラノベとするなら好いだろうな、内容がスポ根とは旗色違う学園ものだから。リアルさを追求したら、レビューの大半は的外れな非難だ。ドラえもんを見て、「こんなこと現実にありえるわけがないだろ!」と侮蔑するようなことだから。
だからレビューを見て、マンガアニメのスラムダンクと比べる方が筋違い、と言ってやりたい。キャラ立ちにしたって、なかなかのものだ。リアルさをそこでなぜ批評家は強調するか。小説は架空が前提なのに。
軽快に痛快な進撃劇を楽しみたいのならこの本は面白いが、あいにくとぼくはスポーツが嫌いだ。読むとしたら、ハードでシリアスなSFか、荒唐無稽路線バリバリのファンタジーラノベとかを選ぶから、ぼくの視点としてからの評価は残念ながら低い。まあ小中高生が読む分には好いな。
これもレベルでいうと、よくあるプロの駄作程度のBランク作だろう。しかし、過去バスケ部のでかいやつらからいじめられていたチビなぼくは個人的に、もっと低くしか映らなかった。単なる私怨だから、貴方はB級と受けて善いだろう。それに、いじめを糾弾する胸のすくシーンもあるのは特筆! これは賞賛したい。
昔人気少年漫画雑誌で許せなかったのは、編集部に「いじめっこを(漫画のヒーローに)殺してください」とか来る手紙を(その漫画のヒーローが)馬鹿にしていたことだ! そして、漫画で「いじめられっこの気持など解らない。いじめっこの気持ちなら解るがな!」と軽薄に捨て台詞していたことだ!
世界にいじめが原因で自殺も人殺しも悩んでいる子供がたくさんいるのに、それより圧倒的多数の卑劣ないじめ加害者に迎合する姿勢。これは許せない!
話を戻して、この小説を非現実的だ、マンガチックだとは否定しきれないのだ。ぼくの母校の野球部が甲子園に出場したことがあるからだ。あまりに弱小なのに甲子園初戦突破、二回戦で敗退したものの、奇跡と地元では派手にニュースとなった。
これを同級生に話すと、「弱くなんかねえ、毎年県内ベスト16に入っている!」と言われたが。おまえ、指数計算知らないだろ。単純計算でベスト16から甲子園二回戦まで勝ち進むには、五回は勝利が必要で、確率的には2の5乗、1/32である。
これは、偏差値50の生徒がいきなり偏差値70の成績をマークしたみたいな確率だぞ!
まったく、甲子園出場だけを目的に、スポーツ推薦でしかも地方から生徒を採る強豪私立も多いのに、そんな枠の無い一般県立高校が一回でも負けたら終りの夏の甲子園なのだから……
現実の方がすごい体験だったと思うと、ますますこの作品の存在意義は変わる。さらに版を重ね再販した発行元が前回のリア鬼と同じ出版社であることを鑑みると、文壇は混沌としているな。