以下に、拙作のファンタジー世界ほぼ共通の、特別な装備品の説明を数点記します。

 

 

『賢者の歯車』 神話文明の遺産で、数学に長ける主要な登場人物操る、手動機械式計算機です。いまでいうPCです。性能は現代二十一世紀冒頭の光回線電子式に比べ一億分の一以下とはいえ、数学を扱うものには恐るべきアイテムとなります。事実上文化の礎となる極上の逸品です。

 それぞれの物語通して、決してまったく同じものが使われているはずはないですが、ここでは基準として一例を示します。

 直方体の筆入れほどの大きさ(縦8cm、横16cm、厚さ4cm)で、内部はぎっしりと数mmの歯車やカム、ピストン、バネなどの部品が詰まって構成されています。素材はセラミックやタングステン、炭素樹脂繊維です。耐圧耐熱防水性で、極めて頑丈で故障しにくい作りです。

 表面には数値を示す円い目盛りが16個(16ケタ)、それが四つ(四行)並びます。手元には入り・切り(1・0)式の入力端子が8個、その他の入力端子が8個あります。それぞれの目盛りは、0~9とA~Fの計16種の数値を示します。つまり16進数ですが、表示を10進数か2進数にするのも可能です。

 基本演算は否定・論理和・論理積の三つの論理演算ですが、すでに土台から四則演算と、指数対数演算程度は組めるようになっています。扱える数は整数なら2の32乗(43億弱)です。小数も誤差は出るものの、扱えます。

 数値格納部(記憶回路)は、幅0.3mm、長さ1mmもない入り・切り式のスイッチが、何列にも並行して1024000個並んでいます。現代のPCに直すと、128kバイトということです。

 この言わばメインメモリは取りかえ式で、使用者の組む関数で多々の演算に用いられます。完全な機械語プログラミングとなりますが。

 射撃武器の弾道計算くらいは組めます。他には航路の距離計算や、経緯儀として座標計算も。商売用の損益計算に金利計算など楽なものです。

 別機能としては筒となり、両端と上部にレンズが埋め込まれ望遠鏡となっていますし、直射太陽光を収束して精密正確な方向に放てる光の矢が連絡用として放てます。(着火にも使えますが)。銃や弩の偏差照準器に使えます。

 時計にカレンダー機能も備わっています。加えて単調ですが、オルゴールのような任意の周波数の音を奏でることもできます。逆に、特定方向の音を増大して聴くこともできます。

 原始的に思えて超精密機器なので、現代並みの科学水準がなければ、技術的に作るのは不可能です。

 これを劣ると取るかどうかは、使い手しだいですね。出力こそ画像映像はありませんが、計算能力だけなら現実のPCの1990年に準じる程度の性能がありますし、当時はそのレベルでオフィス用にも科学用にも通用していたのですから。

 

 

『耳』 電波通信通話機です。先の計算機『賢者の歯車』にはなかった入出力装置です。これは電力駆動ですが、電源は太陽光充電でほとんど半永久的に支障なく作動します。大きさはイヤリング程度、主に耳たぶに取りつけて使用します。例外もありますが。防水性です。

 遮蔽物のない数km半径内なら、他の耳と鮮明に感度良く声を応対できます。デジタル機器なので、余計なノイズはまず入りません。

 これも現代二十一世紀初頭並みの科学水準がなければ、技術的に作るのは不可能です。

 竜騎兵が装備することの多いアイテムです。これを情報端末として使った連携機動戦術は、戦局を一変できるものとなります。

 

 

『魔剣』 重要なアイテムと位置付けられているのがこの魔剣です。正確には真の魔剣は二振りあり、片方は魔剣フレイムタン(炎舌)と、聖剣アイシクル(氷柱)に別れています。

 フレイムタンは隕鉄鉱(セラミック合金)、アイシクルは炭素クリスタル(元素配列を変えたダイヤモンド)からできています。双方、神話の時代の宇宙船の素材です。これらは解除力場の外では通常斥力を発します。

 これらの魔剣は、使い手を選びます。真の所有者ならば、まるで質量を感じさせず振るうことができますが、さもなければ非常に重いです。

 魔剣は極めて鋭く、他の魔剣と打ち合う以外では決して壊れません。さらに真の所有者が操るなら、爆発的な衝撃波か鋭利な切断光線を発します。

 実は真実の魔剣とはとある秘宝の『鍵』なのですが、それは拙作中で説明されているのでここでは伏せます。オーバーテクノロジーの産物です。

 

 

 別素材の例外武器としては以下があります。これらもオーバーテクノロジーです。

 まず、『冷凍光子剣』FFS(フリーズ・フォトン・ソード)。光子(フォトン)をエーテルごと虚の熱量で凍結させた武器で、極めて破壊力あります。これは珍しいですが、普通の剣士に操れます。

 それから『単一結晶鋼』。単なる鋼鉄ですが、現在の技術でも不可能な、内部にまったくヒビの無い結晶として構成され、十倍以上の硬度を誇ります。これの刃物なら刃毀れや錆びはほとんどありえません。

 さらに『竜骨器』。ドラゴンの骨、牙、鱗、皮革を使った品で、鋼並みの強度があり、しかも極めて軽いです。武器や鎧、宝飾品の素材となります。

 

 

『呼び笛』 竜を呼ぶのに使う笛です。ドラゴンは高周波の人間には聴こえない音に反応して乗り手に近付きます。その際の音色は、ドラゴンと盟約して決めるならわしです。これは別に普通の笛でも構わないのですが、特製の専用の笛なら、有効半径が数倍に広まります。

 普通の笛で半径十~二十km、専用なら五十km以内のドラゴンを呼べます。もしはぐれてしまったら、事前に待ち合わせ地点を決めておかない限り、接触は難しいのですが。

 ちなみに先の『耳』でもドラゴンは呼べるのですが、それは有効半径が数kmと狭いのです。

 

 

『眼』 視覚映像探知機です。これは脳内視野に働くナノマシンで、オーバーテクノロジーの逸品です。ただし、並みの人間には使いこなせません。たいへんな感性、感受性、意志、自然科学知識などの素養が必要です。

 魔法の目、千里眼として作動します。はるかかなたの光景を、たとえ遮蔽物があれ覗けます。また、見た映像から、その場の音を聞き取ることもできます。音を光に、光を音に変換できるのです。

 事実上、無敵な力を寄与するアイテムです。これがあれば並みの人間は、盲目同然ですから。

 

 

 これらの他にも特殊なアイテムはありますが、それは作中にて。