"タクヤ・スポーツセダン"ロングインタビュー | タクヤ・スポーツセダンのブログ 2nd

"タクヤ・スポーツセダン"ロングインタビュー

「今まで主役ってあんまりやったことないんですよ。ちっちゃい頃から生徒会とかもやってきましたけど、絶対委員長みたいのはやらなかった。いつも平(ひら)か副会長的なポジションだったんです。目立ちたいけど、目立ちすぎるとなんか嫌らしい感じがあるからって思ってたのかもしれませんね。だから今度の"マツミマツリ"は今までの僕の人生からは考えられないことなんで、未だにどうしたら良いか考えもつきません。まあ、泣けばキレイに収まると思ってますけどね。(笑)」


 タクヤ・スポーツセダンはいつだっていい加減だ。こういうインタビューのときくらい真面目に答えてかっこよさをアピールすればいいと思うのに、最後に何かしらのオチをつけてくる。でもそれが"彼らしさ"と言えばそうなのかもしれない。昔からそうなのかと問えば、苦笑いをしながらこう答える。

「だって恥ずかしいじゃないですか―。」




 幼少期は児童会や生徒会で活躍するいわゆる"エリート"だった。友達も多く、先生からの評判もよかった。いつでも笑って、争いごとは大嫌い。今の人格はこの時形成されたのかも―と本人は言う。

「昔から作り笑いばっかりしてきたんで、真面目な話になっても真面目な顔ができないんですよ。おちゃらけないと落ち着かない。何でかはわかんないんですけどね、真面目な雰囲気って言うのが恥ずかしいって思っちゃうんです。そりゃ社会的なルールで真面目にしなきゃならないときはとことん良い子ぶって真面目にしますけど、普段話してる時とかに真剣そうな顔をするのはめったにないです。真面目にして自分が嫌な気持ちになったり、相手が嫌な気持ちになったりしないようにあたりさわりないラインで接するんです。」



 "マツミマツリ"(詳細は本人のブログで要確認)は自身の最後のライブとなる。普通の人だったらシリアスに、心から真剣になる部分があるはずだ。しかし、そこでもとことん自信がないらしい。

「まあ、泣きます!泣かないと収まらない!なんて言ってますけど、いざ本番になって泣けるかっていうと、正直自信ないですけどね。僕自身が耐えられないんですよ。例え大泣きして、真面目に挨拶とかしちゃったとしても、必ずどこかで『うわぁ、こいつ泣いてる』って思う自分がいると思います。お客さんが泣いてくれたとしたら、それは本当にありがたいことなんですけども、いざそれが自分の立場になると一気に自分が気持ち悪くなっちゃいますね。今まで感情をおおっぴらに表現した事なんて、数えるほどしかないんで、そういうのが恥ずかしくてしょうがないんですね。でもまあ、それは本番のテンション次第ってことだと思います。お客さんが泣かせに入ってくれれば、そういうのには弱いんでイチコロですけどね。(笑)」



 中学時代から触れ合ってきた音楽というものに一旦の区切りを付ける、そこで泣けるかどうかは置いておいて(笑)、スポーツセダンはこのイベントに何を思うのだろうか。

「やっぱり集大成的なモノにしたいっていうのはあります。地元に帰ってからの想像がつかない、音楽をやるのかどうかもわからない、だから、音楽をやっている今の時点での自分は全部出し切りたいとは思っていますね。一番はやっぱり僕自身が楽しむ事。やっぱりバンドって楽しかったんだなあって思えるイベントにしたいです。音楽をまったくやらなくなったときのために、『バンドって楽しかったんだなあ』って後々でも思い出せるようなものにしたいですね。」


 楽しむことが何より大事だと言う。

「何事も楽しくないとだめなんです。一時期、バンドで夢を見てた頃は、真剣にバンドっていうものに立ち向かったりしたんですけど、それは楽しさを犠牲にした真剣さだったんですよ。それが耐えられなかったんです。いつかはそういうことが必要になる、それが今なだけだって思って頑張ってたんですけど、完全にパンクしちゃいました。それと同時期に楽しさ優先のバンドも組んでたりしたんで、その楽しさっていうのが勝っちゃったんですね。『ああ、俺は楽しくないとダメなんだな』って。だから今は何よりも楽しむ事を前提にいろいろやってます。楽しいと思う事ばかりやってきましたからね。おかげですごい楽な気持ちでバンドなり、付き合いなりが出来るようになりました。」


 果たして"マツミマツリ"は"楽しい"のだろうか。

「楽しいはずです。楽しくしたいと思ってます。僕が楽しむのが一番大事ですけど(笑)、一緒に出演してくれる人、見に来てくれたお客さん、関わってくれるスタッフが全部『楽しかった』って言ってくれるようなイベントにしたいんです。そこのバランス感覚ってすごい難しいんですけどね。自分たちが楽しくてもお客さんはさっぱりなことだってあるし。そこラインの見極めをちゃんとしたいと思ってます。今まで、僕が関わってきたライブなり何なりっていうものは、わりと身内に受ける内容ばっかりだった気がするんです。そこをちょっとでも打破したい。『最後だから』って初めて来るお客さんもいると思うんです。現時点でもプログラムを見れば『やっぱり身内重視かなあ』と思うんですけど、そこに少しでも全員が楽しめる内容を提供出来ればいいなと思ってます。僕自身も司会とかするでしょうから、とまどってる人たちに全力でフォローを入れるようなしゃべりをしたいですね。」



 タクヤ・スポーツセダンはバンドだけにとどまらない。"アサシン"、"パーカッションアンサンブル楓"など、音楽とはかけ離れた分野のユニットも結成している。これが"マツミマツリ"でどういうステージを見せてくれるのか。まったく見えて来ない。見えて来ないから楽しみだという意見もあるだろうが。

「僕自身もまったく見えてません(笑)。いや、一応、案は出てます。でもまだ実行には移ってないだけです。楓の方はなんとでもなるんですよね。それなりに案も出てますし、メンバーのスキルがそれ相応ですから、最悪本番一発でもなんとかする自信はあります。問題はアサシンの方。撮影だってまだしてないんですよ(笑)?撮影して編集してDVDにして増刷してっていう作業まであるのに、まだ何にも動いてない。メンバーが避けてる、言い出したら負け、みたいな雰囲気があることは確かなんですけど…。まあなんとなると思います。企画は一応出てますし、きっと楽しめる内容にはなると思います。前回(アサシン初の映像作品『鮪』はニコニコ動画でランキング1位を獲得し、現在も再生6万以上、コメント1万以上を記録している)を超えるのは相当難しいと思ってますけどね。」



 タクヤ・スポーツセダンが所属すべてのユニットが出演する"マツミマツリ"。自身の総まとめともなるこのイベント、これまで、これからに何を思うのか。

「高校生の頃、初めてギターを触った時はこんなことになるなんて夢にも思ってませんでした。これが自分の望んだ未来なのかって言われればどうなのかわからないですけど、いずれにせよ、まったく後悔はしてません。東京に出てバンドをやって、プロを目指して、諦めて、それでも音楽をやることの楽しさをわからせて貰えただけでも、僕は満足してます。地元に帰った後、音楽をやるのかはまだ全然検討もついてないですけど、やりたくなったらやればいいし、やる気が起きなかったらカラオケにでも行ってればいい、そんなふうに思ってます。お世話になった人たちと、お世話になったライブハウスで、『東京に来てよかったな』って最後に思いたいですね。とにかく今回のイベントは自分に対する一区切り。最後くらい責任ある主役を張って、今まで僕に関わってくれたすべての人に感謝して、すべての人に楽しんでもらえればいいなって思ってます。」




―編集後記―
すべてにおいて楽しさを追求する。ギターを手にした若かりし頃の楽しさ、初めてバンドを組んだ時の楽しさ、東京に出てきて初めてライブをしたときの楽しさ。東京を去る日、きっとその楽しさをまた味わえるに違いない。しかし、ラストシングルとなる「東京」にはその楽しさと同居する寂しさが見え隠れする。「東京」を歌って寂しい顔でさよならするのか、それともやっぱり最後はおちゃらけてさよならするのか。マツミマツリは9月7日、タクヤ・スポーツセダンがめったに見せない、真面目な顔っていうのを見たくありませんか?