朝、妹とまんじゅうを焼いていると焦げ付いてなかなか思うようにいかず、妹が「今日は焼くなってことやろか…」とぽつり


寝ている父に行ってきますと声をかけ会社に向かい仕事をしていると9時前に娘から電話があり「お父さん、帰ってこられる?」


部下と上司に危篤を伝え車を飛ばして帰ると主治医の先生から現状を聞き痛み止めを打ちますか?少し眠くなりますが


家族と話し合い楽にさせてあげようということになりお願いしますと伝えました


先生が「⚪⚪さん痛み止めの注射を打ちますね」


父は眉間にしわを寄せながら軽く頷きました


先生が準備をしていると


父がほぼ自力で起き上がったので


「お父さん!何してると?」


「痛み止めのクスリを作らんといかんやろ」


起き上がるだけでも信じられないのに、最後の最後まで冗談を言ってみんなを笑わせました


痛み止めの注射が効いたのか表情がすこし和らいできました


12時過ぎくらいにまた痛みが出たらしく眉間にしわを寄せ始めました

娘がまた注射を打つか、それとも胸に持続的に痛み止めを流す装置を付けるか決めてと

でも、それをすると、もしかしたら受け答えは出来ないかもしれないと


妹達と話し合い、楽にしてあげたいけど装置を付けずに注射じゃだめなのかを娘に聞いたら、泣きじゃくりながら


「そんなに何回も針を刺したくない、じいちゃんを傷つけたくない」


ツラいことさせてごめんねと謝り、2本目の注射まで打つことにして装置をつけてもらうことにしました


2本目の注射を打ち終え、先生に電話をしていると呼吸が乱れてきて何度も最後の時が来たと感じ、母親、兄妹、孫たち全員で何度も何度も呼び掛けました

ただ県外に行っている孫娘には全国大会が12月11日に控えていたため帰省できず、授業中で連絡が取れていなかったけど、学校に連絡して一言でもいいから声を聞かせたいのでと事務局へお願いしました


程なくして電話が繋がり


「じいちゃん、いままでありがとう、ありがとう」と涙声で何回も言ってました


切る前にみんなで「ももちゃん!全国大会がんばって!」と激励し電話を切りました


まるで、ももちゃんの声を待ってたかのように呼吸が小さくなり静かに眠るように息を引き取りました


母と兄妹とたくさんの孫に看取られて77歳の天寿をまっとうしました


ありがとうお父さん

ほんとうにおつかれさま

がんばったね

あなたの息子に生まれてほんとうによかった

また来世でも家族になろうね。