それは2日前、中秋の名月の晩のことでした。
風呂からでたとき、窓辺でスズムシの声を聞いたのです。
我が家の近くでは、里山そのものの屋敷林が近所に残っていた頃にさえ、クツワムシはいても、スズムシの澄みきった声を、聞くことができなかったのです。
何度も聞きなおしましたが、地面から聞こえてくるその声は、間違いなくスズムシでした。
帰化昆虫で樹上生活をするアオマツムシの大合唱が、80年代にはかしましかったものですが、近年は落ち着いてきています。
少年時代、秋鳴く虫の声を特集したソノシートを、擦り切れるまで聞いていた私ですが、スズムシの声を聞き分けようとしたとたん、数十年前の記憶の数々が、鮮やかに立ち戻り、若返ったような気持ちになりました。
それから2晩、聞き耳を立てていますが、もうスズムシは鳴いていません。
あの晩のスズムシは、名月が連れてきてくれたのでしょうか?それとも籠抜けだったのでしょうか?
いずれにしろ、私にとっては、大きな自然からの贈り物でした