『アリー/スター誕生』☆☆☆☆
☆レビュー☆
名作『スタア誕生』の3度目のリメイク。
原作の映画業界という設定ではなく、バーブラ・ストライサンド主演の2度目のリメイク版の音楽業界での設定を引き継いでいる。
当初の企画では、クリントイースト・ウッド監督、ビヨンセ主演で製作される予定がビヨンセの妊娠などスケジュールの問題によって、ブラッドリー・クーパー初監督作品、レディー・ガガ初主演映画として全く異色のものとなった。ビヨンセ主演版も観てみたかった気はするけど...
レディ・ガガは映画としては初主演ではあるが、過去にはテレビドラマシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル』ではゴールデングローブ賞も受賞しているほか、映画にも小さい役ではあるが出演しているだけに演技するのは初めてではない。歌手なんだから、まして歌唱力を心配する必要もないが、今までの役と言えばミステリアスなキャラクターやメイクでいかにも「レディー・ガガ」というような役ばかりだったのに対して、今回は女優として演技しているだけに、なんだか素のレディー・ガガを見ている気がして、逆にそれが新鮮で今までに見たことがないレディー・ガガの演技でありながら、これが彼女の本質だと言ってもいいぐらい役になりきっている。映画の役がレディー・ガガのもつコンプレックスだったりマイノリティに寄せていいる部分があるのも、そう感じさせる
個人的には今回はレディー・ガガではなく、本名のステファニー・ジョアン~にしてもよかったと思うけど...長いからやめたのかな?
個人的にこの映画で一番気になっていた点はブラッドリー・クーパーって歌えるの?監督できるの?ってこと。
邦題からしてアリーが主人公ですと言ってるだけに、みんなレディー・ガガに気がいってしまっているんだけど、一番注目すべきはブラッドリー・クーパーだということ。
予告編でもレディー・ガガの歌声は確認できるものの、ブラッドリー・クーパーの歌声が確認できない...宣伝に使うとまずい歌声なのか...そんな不安が過るなか、オープニングで彼の歌を聴いて全然そんなことないことが判明!だったらもっと宣伝してもいい気がするんだけど、サプライズにしたかったのかな??
ロック歌手とうよりかはカントリーっぽい感じはするけれども、今まで歌う映画がなかったのかが不思議なくらいの歌唱力!!監督としても初めてとは思えない。
この映画の一番の名曲「シャロウ」はレディー・ガガの歌唱力だけでは成り立たたない。
ブラッドリー・クーパー演じるジャクソンも主人公として描かれている。
ブラッドリー・クーパーの昔からのファンは気づいたと思うけど、サプライズがある。それはグレッグ・グランバーグとロン・リフキンが出演している。
この2人と言えば、テレビドラマ『エイリアス』でまだ若手俳優だった頃にブラッドリー・クーパーと共演した仲だということは、ブラッドリー・クーパーを昔から好きな人にとっては言うまでもないことなんだけど、何故かこの2人が出てきたときは感動してしまった。グレッグは運転手役で少しだけなんだけど。
ブラッドリー・クーパーはやっぱり自分の原点は『エイリアス』にあると思っているのだろう。この謙虚さが素晴らしい!最初はジェニファー・ガーナー演じるシドニーの大学の友達というチョイ役だったのがメインキャラクターになっていく様子で彼のファンになった人も多いのでは?
色々と描くのに少し尺が足らない部分もある気はしたけど、前半はアリー目線、後半はジャクソン目線とコントラストがはっきりしていて、またこのコントラストの具合が丁度良い。
立場が逆転していく様子は芸術を扱った作品ではよくありがちなんだけど、ジャクソンは嫉妬ではなく、アリーは成功してが、今風のダンスミュージック・ポップにシフトチェンジしてく部分で彼の思っていた音楽性とは違ってきたことからの反発だったと個人的には分析した。ただ、レディー・ガガ自身の音楽自体が正にそうだから、それが間違ってるとも否定するわけにもいかない部分がどうしても演じている人の事情が出てきてしまって、その部分は少々消化不良な感じがしてならないが、その独特のもやもや感とアリーを想うがあまり自分がスターの道を邪魔しているというジャクソンの感情が上手く絡み合って、ジャクソンの結末に重圧を残す。
リメイクと言ってもプロット自体は実に王道のシンデレラ・ストーリーなだけに、時代に合わせた設定で別ものとして製作しても何の問題もない気がするんだけど、あえてリメイクと言うのは原作へのリスペクトからなのだろうか。