昔、その子は親にたくさん迷惑かけた。

友達と家出をして、学校をサボって、髪も染めて、ピアスも開けて、
たばこという煙を試してみて、わざとテストを白紙で提出し、親を困らせる問題児。
上の姉たちは立派に立派に育ったのに、どうして?と嘆く母。
高校入学をきっかけに、まじめに学校にも行くようになり、
先生から親が呼び出されることもなくなった。
問題児は、大学主催の小論文コンテストで全国2位となり、
地元新聞にも取り上げられて、変化をとげた。

大学入学、それからアメリカ留学、体調不良の強制帰国、大学中退、編入。
ある意味、10代は試練というか、自ら問題を引き寄せて、泥沼にはまっていた。
でも、いろいろ問題はあったものの、
数々の壁を乗り越えたその子は、働きながら大学も無事に卒業。


そして、夢を掴むためにまた海を飛んだ。
目指すはあの国へ。




ということで、今の私がここにいる。

あたしは姉たち以上に親に感謝しなくちゃいけないし、
それがあたしのこれからの役目だとも思ってる。
ただし、親が末っ子に甘いというのは、申し訳ないけど、避けられない事実でもある。


先日、電話をして、1時間くらい親と話した。
こっちに来てから、あたしはよく親に電話する。
何でもないのに、話をしたくなって、電話を握り締めてしまう。


父と娘のやり取り:

「今スペイン語勉強してるんだ」と言うと、

「なんだ、お前。今度はスペインに行くのか?」と投げ返してきた。

「ううん。南米に行くの。だからスペイン語勉強するの」

「そうか、じゃあ、アンデス山脈に登ってコンドルにでもなるのか」

「・・・・・・」


自慢じゃないですが、うちのお父さん、本当にウケないんです。
親父ギャグにもならないくらい、おもしろくなさすぎて、失笑なんです。


ただ、かっこいいんです。
めちゃくちゃクールな親父。


「いいぞいいぞ。好きなことたくさんしろー。人生1回きり。
お父さんとお母さんが出来ないこと、代わりにたくさんして楽しませてくれ。
お前がどこにいようと、幸せだったらそれでいい」


ちょっとコンサバで、行動範囲があたしの10分の1くらいの親だけど、
この親の元に生まれたことを誇りに思う。
そして、ありがたくその言葉を一生大事にして、このあたしの物語を続けたいと思う。